プジョー 307style 試乗レポート
- 筆者: 西沢 ひろみ
- カメラマン:森山俊一
02年ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した、307のエントリーモデルがラインアップに加わった。
01年春のジュネーブショーでデビューを飾った307は、同年10月に国内上陸。約7カ月で3000台強を販売した206に次ぐプジョーの中核モデルだ。昨年末には、02年ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞。激戦区における商品力の高さを見せつけている。当初、国内におけるバリエーションは3ドアが2タイプ、5ドアが3タイプ用意していたが、この夏からエントリーグレードのstyleが加わった。
306総数の60%を占める大ヒット商品となったのが先代の306style。つまり307styleは、プジョー全体の約1/3を担う307の販売をさらに加速させるために自信タップリに投入したモデルというわけだ。最大の魅力は5速MTで207万円、4速ATで217万円というリーズナブルな価格設定。XSと同一の内装トリムレベルが奢られ、206の上級グレードと同じ1.6Lエンジンが搭載される。ボディは5ドアの右ハンドルのみとなる。
プジョーらしい元気の良さやキビキビ感が影を潜めた、タウン派の仕上がりだ。
206の1.6Lエンジンは、気持ちのいい吹き上がりと軽快な加速感が身上。当然、307styleでもそのフィーリングが味わえると信じていた。ところが、3000rpmまでは加速にもたつきが残り、3500rpmからようやく車速が思うように伸びる。だがレッドゾーンの手前6000rpmまで引っ張っても、トルクがついてこない上にパワー感も得られない。おそらくMTで200kgも車重が重くなっていることとが影響しているのだろう。ギア比も見直されたが、マッチングは決していいとはいえず、プジョーらしい元気の良さが影を潜めてしまっている。AT仕様はティプトロニック付にもかかわらず、非力感を伴い、完全なタウン派の印象だった。
乗り味もプジョーらしいキビキビ感は味わえず、ノッペリした走行フィールだ。確かにフットワークは粘りがあり、しなやかな身のこなしはプジョーのもの。けれどもエンジンパワーに足が勝ちすぎているため、走る楽しさや面白味が感じられないのだ。ステアリングのグリップが太く、径が大きめなことも扱いづらさにつながっている。
ボディカラーのバリエーションは少ないが、クオリティはXSと同レベルだ。
一般的に内外装はグレードことに差別化が図られている。だが307はシリーズのイメージを大切にしたのか、アロイホイールとタイヤサイズ以外にXTやXS との目立った違いはフロントフォグランプが付かないだけだ。インテリアもXSと同一で、革巻きステアリング&シフトノブ、トリップコンピュータ、雨滴感知式オートワイパーが省かれた程度。安全装備も含め、307styleは2Lと同じ質感が与えられている。
ただボディカラーは4色と少なめ。内装色はシルバーとレッドのボディカラーがグレー系、2色のブルーのボディカラーがダッシュボードからドアトリム地、シート地とブルー系で統一されている。ファブリックのシートはやや硬めの座り心地だ。
ハッチバックの概念を超えた室内空間は、前後席ともに大人がちゃんと座れるスペースを確保。ラゲッジスペースも大きく、十分な実用性を持ち合わせている。
スポーツ派のプジョーファンではなく、新時代のヤングユーザーがターゲットだ。
昨年の販売実績は、主力のXSが70%を独占して、最上級モデルのXSiが20%、ベーシックなXTが10%だった。本年度の販売比率は、新投入のstyleが一番人気となり、40から50%程度を占めるとプジョーは考えているようだ。
確かに307styleはリーズナブルでコストパフォーマンスも高い。けれども、プジョーならではのゴキゲンな走りは手に入れられない。たとえMT仕様でも、このエントリーグレードは面白味に欠ける。せっかくプジョーに乗るならば、ちょっと無理をして上級グレードを手に入れるか、206シリーズを選んで欲しいと思う。だが巷の若いコたちは、クルマに対する興味が失せつつある。特にドライビングに関しては、皆無といっていいかもしれない。となると重要なのは、手頃な価格の超オシャレな輸入車。そういう意味で307styleは、時代にうってつけのクルマかもしれない。
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