プジョー 3008 ハイブリッド4 海外試乗レポート/河村康彦(3/3)
- 筆者: 河村 康彦
- カメラマン:プジョー・シトロエン・ジャポン
朗報!ディーゼルハイブリッドが日本に導入されるかも!?
ところで、NEDC測定モードでのCO2排出量が99g/kmといかにクリーンで燃費に優れていても、「ディーゼルエンジンが頻繁に、しかも“勝手”に始動したり止まったりするのでは、振動や騒音が酷いのではないか?」と推測する人も居るかも知れない。
しかし、実は最新ディーゼル乗用車の殆どが「乗ってしまえばエンジンノイズやバイブレーションは全く気にならない」という実力を備える事からも察しが付くように、このハイブリッド・モデルでもエンジンのON/OFFに伴う不快感というのは「全くなかった」と言って過言ではなかった。
それどころか、モーターがリア・アクスルという”遠隔地”にマウントされるためか、大先輩格であるトヨタのハイブリッド車などではまだかすかに耳に付く回生減速時のモーターが発する”電車音”すら、少なくともフロントシートからは聞き取れないほど。
従って、静粛性全般に関してもこのモデルには高い得点が与えられる。実際、走行中で最も耳についたのは、55km/h程度の速度でピークに達する、タイヤが発する空洞音であったりしたほどだ。
もう一点、快適性という項目に関して加えれば、シングルクラッチ方式の2ペダルMTを採用するため、構造上これまでは不可避であった加速シフト時の駆動力の途切れ感が、このモデルでは大幅に緩和されていた事にも注目したい。
実は、このモデルの場合、加速中にシフト動作が行われてエンジン駆動力が途切れた瞬間に、その”穴埋め”をモーターの駆動力が行う制御が採用されているのだ。
そんな巧みな制御はシステムディスプレイを目にしていると、シフトのたびに駆動用バッテリからモーターへと”ちょんちょん”と電気が流れる表示によっても確認出来た。
そもそも、トルコンATやデュアルクラッチ式MTを用いれば、そんな駆動力の途絶は無くす事も出来るわけだが、「既存のメカニズムを最大限に利用する」というのが今回のハイブリッド・システムの大きな特徴でもあるだけに、電気モーターのパワーをこうして快適性の向上にも活用出来た事も大きなニュースであるのは間違いない。
ここまではハイブリッドシステムがもたらす印象について集中的に記す事になったが、3008ハイブリッド4というのは「それだけ」のモデルではない。
このモデルの美点は、ストローク感がたっぷりと採られた3008というモデルが元来持つ、好ましいフットワークのテイストが何ひとつ失われていなかった点にもある。
実はここ数年、なぜか硬めの足回りの持ち主が連続し「こんなの、全然“ねこ脚”なんかじゃない・・・」と個人的にはややガッカリさせられる事が続いていたプジョー車の乗り味。
しかし、3008や508など、このところの最新プジョー車は、再びためらいなく“ねこ脚”と表現出来るテイストが復活しているのだ。そして、そんな好ましい印象というのは、このモデルでもしっかり再現されていたという事。
「ハイブリッドシステムをリアアクスル周りにレイアウト」などと聞くとちょっとばかり心配だったが、実際の走り味は見事に期待に沿ってくれたという事だ。
一方で、「ここはまだ、もう少し改善の余地があるかな」と思える部分も皆無ではなかった。
例えばそれは、エンジン回転に依存してコンプレッサーを駆動するエアコンが、やや大きな吹き出し口温度の変動を感じさせた事や、エンジン、モーター、双方のコンバインと走行モードが切り替わると、それによって同じアクセル操作を行った場合でも加速の能力やレスポンスに、微妙な変化が感じられたりした事などだ。
ところで、読者の皆さんにここまで読み進めて貰えても「だけど“ディーゼル”なんだから日本には来ないんでしょ!?」と一蹴されてしまうかも知れない。
しかし、プジョー・シトロエン・ジャポンでは「何とか日本にも導入を実現させるべく、現在鋭意努力中」というから楽しみだ。
実は、現状では搭載するディーゼルエンジンから放たれる排気ガスのレベルが日本の基準を満たして居なかったりと、確かにまだハードルはそれなりに高いと言わなければならない。
けれども、それでもこうして日本のゲストが遠路遥々の国際試乗会に招かれたという事は、間違いなく“芽”はあるのだと解釈したい。
本国フランス市場では圧倒的な人気を誇るディーゼルモデルと最新ハイブリッドシステムとの組み合わせが、日本で味わえるかも知れない――そう考えると、その期待度は一層高まるというものだ!
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