ゴーン氏三菱自会長就任で国内販売どうなる?世界販売はTOP3でも日本は日産5位、三菱最下位…(2/2)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
ゴーン氏、国内の打開策に軽自動車開発
メーカーの経営/ブランド/マーケティングは、三菱と日産では完全に区分するという。プラットフォームの共通化といった協業はあるものの、三菱の店舗で日産車を売ったり、その逆をすることは考えていない。そうなれば現時点で国内に約620店舗を展開する三菱ディーラーは、独自性を維持できる代わりに、海外で稼げる三菱自動車以上に厳しい状況に立たされるからだ。
そしてカルロス・ゴーン氏は「国内市場はもっと上手にやっていかなければならない。商品のラインナップをそろえることがまずは重要で、それがすべてではなくスタートになる」と語った。これは日産についてのコメントだったが、三菱も同じだろう。当たり前の話だが、自動車メーカーでは優れた商品(クルマ)を投入することが、業績を好転させる原動力になる。
日産は以前から「国内販売でトヨタに次ぐ確固たる2位をめざす」と言っていた。しかしいまだに実現できず、トヨタ/ホンダ/スズキ/ダイハツに次ぐ5位の座が定着した。三菱は乗用車メーカーの最下位だ。
国内の打開策を尋ねると、カルロス・ゴーン氏は三菱と日産の提携による軽自動車開発を挙げた。両社が合弁で立ち上げたNMKVを存続させ、三菱が持つ軽自動車開発のノウハウを活用し、三菱の工場も稼働させる。日産車ではセレナ、今後発売が予定されるノートe-POWERと併せて国内販売の2位をめざすという。
これはきわめて楽観的な見方だと思う。軽自動車は小さなボディに最先端技術を結集させ、機能や装備の割に価格がきわめて安い。プレミアムブランドを手掛ける欧州メーカーが、束になっても造れないのが日本の軽自動車だ。これを甘く見られては困る。
先般の燃費偽装問題も、三菱の軽自動車を開発する能力がスズキとダイハツに劣っていたことに端を発している。日産が確固たる2位を確立させ、三菱が再生するには、国内においても軽自動車に過度に依存しない商品開発が不可欠だ。
日本国内をみると三菱だけでなく日産も再生すべき時にきている
カルロス・ゴーン氏は「燃費偽装問題は三菱が解決すべき課題」としている。日産のチーフ・パフォーマンス・オフィサーのトレバー・マン氏が三菱の最高執行責任者に就任するなど商品開発まで含めて日産の人材が三菱を幅広く支援するが、結局のところ三菱の今後は同社の商品開発力に掛かっている。
日産は2001年にカルロス・ゴーン氏が最高経営責任者に就任した後、2003年にティアナと2代目プレサージュ、2004年にティーダ/ラフェスタ/ムラーノ、2005年にはノート/ウイングロード/ブルーバードシルフィという具合に、国内市場でも新型車を続々と発売して元気の良さを見せつけた。売れ行きも伸びた。
ところがその後は次第に国内の新型車投入が滞り、2016年8月に発売された新型セレナは2年半ぶりの新型車であった。
カルロス・ゴーン氏が社長に就任した日産再生の成功体験は、果たして三菱でも活かされるのか。そこが話題の焦点だが、日本国内のユーザーにしてみれば、三菱だけでなく日産も再生すべき時にきているように思う。リラックスしてはいられない。
[Text:渡辺陽一郎]
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