マリオ二等兵が行く!! 日産 GT-R エンジン 工場見学レポート(2/3)
- 筆者: マリオ 二等兵
- カメラマン:吉澤憲治(編集部)
「機械を超えた高精度を実現する職人たち」
「匠」とは、日産が世界に誇るスーパーカー・GT-Rの心臓部「VR38」エンジンを組み立てている熟練作業者集団のことで、「量産内燃機関組立1級」という、国家検定取得者の中から選りすぐられて認定された、クルマづくりのエリート中のエリートたちであります。
彼らがVR38の組み立てを行うのはクリーンルームと呼ばれる特殊な作業室。チリやホコリが室内に混入することを避けるために気圧まで高められており、入室の際には特製のジャンパーや靴カバーを着用させられたほどでした。病院の集中治療室並みの清潔さが保たれた室内は、温度も湿度も一定に保たれ、自動車を生産する工場としては史上最高の環境が用意されております。
開発主査の水野氏は「GT-Rには“規格を超えた性能と品質”を与えた」と熱く語ってくださったが、生産現場の環境はまさに「これまでの工場の規格を超えた」ものであり、タメ息が出るばかりでありました。
匠たちは「たとえ機械がOKを出したものでも、自分の感性や判断で納得しなければOKを出さない!」という並外れた自信をもちながら、人類の英知の結晶ともいうべき緻密な造りのVR38エンジンを、一基ずつ手作業で組み立てています。VR38の大きな特徴のひとつである「ライナーレス構造」のシリンダーブロックに、摂氏1,000度の高温に耐える鍛造ピストンが組み込まれる様子を見ていると、呼吸をするのを忘れるほどの緊張感が伝わってきました。自動車生産に携わる人にとって、「匠」は憧れのスターに他なりません!
この2億倍は単純な作業なのに、取り付ける部品をしょっちゅう間違えては「ブブーッ」と警告されるなど、機械からダメ出しされまくっていた自分。「匠」とは、学徒出陣によって駆り出された明日をも知れぬ素人兵と、ケネディ大統領も賞賛した誇り高き特殊部隊・グリーンベレーぐらいの格差があります。
組み上がったVR38は、一基ずつ全てがベンチテストにかけられ、性能と品質をチェックされます。オール機械化されたラインで組まれたエンジンの場合は、まれに要修正のエンジンが出るようでありますが、匠が組んだVR38は、2007年の9月にラインオフされて以来、NGは一基たりとも出ておらず、性能誤差はプラス1%程度であるとのこと!
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