【北京ショー2012】日産の中国専用ブランドに早くもEV「啓辰 e コンセプト」登場 ~日本にない日本車 特別編~

【北京ショー2012】日産の中国専用ブランドに早くもEV「啓辰 e コンセプト」登場 ~日本にない日本車 特別編~
[中国・北京モーターショー2012(オートチャイナ)]日産の中国向け新ブランド「啓辰(ヴェヌーシア)」ブースに現れた「日産 リーフ」ベースのオリジナル電気自動車コンセプト [中国・北京モーターショー2012(オートチャイナ)]電気自動車「啓辰e-コンセプト」[コンセプトカー] [中国・北京モーターショー2012(オートチャイナ)]日産の中国独自ブランド「啓辰」のオリジナル量販モデル「D50」(手前) [中国・北京モーターショー2012(オートチャイナ)] ヴェヌーシアブランドの浸透を図るべく、会場外にものぼりが。 [中国・北京モーターショー2012(オートチャイナ)]こちらは日産ブース。写真はNV200ベースの商用電気自動車コンセプト「e-NV200」 東風日産、自主ブランド「ヴェヌーシア」の量産車「D50」 日産の量産電気自動車「リーフ」[写真は日本仕様] 画像ギャラリーはこちら

中国では日産ブランドでEV「リーフ」を売らない!? その真意とは

[中国・北京モーターショー2012(オートチャイナ)]こちらは日産ブース。写真はNV200ベースの商用電気自動車コンセプト「e-NV200」

「中国でリーフは、日産ブランドで売らない」

以前から中国自動車業界で囁かれていた噂は本当だった!

4月23日プレスデーで開幕した「北京モーターショー(オートチャイナ)」。その日産ブースに隣接するように、大きな「啓辰(英語読み:ヴェヌーシア)」ブースが出現した。

日産ステージでは、世界戦略Cセグメントの「シルフィ」がワールドプレミア。また、同ブースのEV関連では、昨年の東京モーターショーと同様に、「PIVO3」、「エスフロー」、そして今年の米デトロイトショーデビューの「e-NV200」が展示された。だが、よく見ると・・・、「リーフ」がいない?

と思ったら、日産の記者会見の直後の「啓辰」ステージで、なんと「リーフ」が登場したのだ!(TOP画像)

日産の中国向け専用ブランド「啓辰(ヴェヌーシア)」

[中国・北京モーターショー2012(オートチャイナ)]電気自動車「啓辰e-コンセプト」[コンセプトカー]

派手なデザインのフロントバンパーには「啓辰e-コンセプト」と銘打たれた。

その顔つきは「リーフ」とはかなり違う。「リーフ」の場合、左右ヘッドライトの中間の部分はボディと同色。だが「啓辰e-コンセプト」では、派手な雰囲気のシルバーカラーのフロントグリルとなった。その中央には、星をあしらった「啓辰」のロゴが光る! 当然ながら、ここに急速充電と普通充電用の充電口がある。

またホイールも「啓辰」ロゴをイメージして、「リーフ」とは思えないような派手な雰囲気だ。

それにしても、どうして中国では「リーフ」を日産で売らないのか?

また、どうして中国では「啓辰」ブランドが必要なのか?

年間2000万台を超える販売台数を消費する国、中国

東風日産、自主ブランド「ヴェヌーシア」の量産車「D50」

今年は、年間販売総数2000万台を突破すると言われている中国市場。そのなかで、これから大きな伸びが期待されているのが、中国の内陸部、東北部、西部の三級都市、四級都市と呼ばれる街だ。

もともと近年の中国の経済発展は、北京、上海、広州など沿岸部や沿岸部に近い地域が中心だった。つまり、一級都市、二級都市を呼ばれる大都市圏が中心だった。そうした流れが徐々に地方都市に及んでいる

そうしたなかで、日系メーカーにとって重要になるのは、リーズナブルな価格で、しかも見た目も「そこそこ立派」なクルマだ。中国でのクルマは、まさにステータスシンボル。ご近所さんより、よりボディサイズが大きく、よりエンジンサイズが大きい方がステータスが高い、と庶民は考えている。

そんな中国では、クオリティが高く、アフターサービス体制がしっかりしている日本車の人気は高いしかも、セダンの人気が高い。だから、Cセグメントでは、トヨタ「カローラ」、ホンダ「シビック」、そして日産は中国など新興国向け専用車の「サニー」が人気だ。

だが三級、四級都市での販売を増やすには、さらに低価格なセダンが商品戦略上、必要になってきた。中国の地場メーカーと対抗するためには、さらには近年中国で大躍進している韓国・ヒュンダイなどに対抗するためには、日系メーカーは新しい商品が必要になった。

急進著しい中国における「日系」低価格車ブランド競争が激化の一途

[中国・北京モーターショー2012(オートチャイナ)]日産の中国独自ブランド「啓辰」のオリジナル量販モデル「D50」(手前)

そこでまず、ホンダが動いた。広州ホンダが中国専用ブランドの「理念」を発表した。それに続いて日産は2010年9月に「啓辰」ブランドを発表。「啓辰」とは、古代ローマ後の金星(ヴィーナス)を意味する。同ロゴには、未来を切り開く、お客様を尊重する、価値を創造する、最善を求めて実行する、世界に通用する品質を達成する、という5つの意味を込めた5つの星をあしらった。

そして2011年11月の広州モーターショーで、「啓辰」第一号となるセダン「D50」が登場した。

その後、今年に入ってから「どうやら、リーフが啓辰ブランドから出るのでは?」と、噂が立ち始めたのだ。しかし、そうした噂を信じない業界関係者が多かった。なぜなら、低価格車ブランドというイメージからすると、電気自動車の「リーフ」と「啓辰」ブランドはミスマッチに見えるからだ。

ではどうして、日産は「リーフ」を「啓辰」から販売することを決定したのか?

EV本格普及のための、日産のウルトラC!

日産の量産電気自動車「リーフ」[写真は日本仕様]

中国では2010年から、政府が主導する次世代車普及計画政策「十城千両」がある。これは中国25都市でEVやプラグインハイブリッド車を普及させるという大計画だ。こうした各都市では、独自の奨励金制度も行なっている。さらに先週、温家宝首相が新エネルギー車の普及計画を発表。それによると、2015年までにEVとプラグインハイブリッド車を50万台、2020年までになんと500万台普及させるという。

「十城千両」政策が若干伸び悩み状態だったいま、温家宝首相がさらなる援護射撃をしているように見える。

このような中国全体の流れのなかで、量産EVとして最も商品信頼性が高いのが「日産 リーフ」だ。また、日系メーカーのなかで、近年中国で最も販売を伸ばし、中国でのブランド認知度が急上昇しているのが日産だ。

ならば「リーフ」は、日米欧と同様に日産ブランドで販売するのが妥当なはず。

にもかかわらず、新ブランド「啓辰」ブランド向けとして「リーフ」のデザインまでも変えた。そこで見えてくる、日産の思惑とは?

1.ホンダとの差別化

広州ホンダ「理念」、東風ホンダ「CIIMO」という、低価格車路線とは違ったブランド戦略であることを、明確に打ち出したい。

2.EV普及の難しさを認識

政府主導型のEV普及政策があるといっても、初期需要は官公庁や企業向け。その先にある、個人向け需要を掘り起こすのは、たとえ中国であっても相当難しい。中国内で各種実証試験を行なってきた日産は、そうして中国での実情を認識している。

この情勢を打破するには、総合的な「ブランド戦略」のなかで「リーフ」を再生することが重要。「啓辰」をファッショナブルなイメージのブランドに育てたい。そうした雰囲気が今回の「啓辰」ブースで見て取れた。

世界の自動車界において、ますます影響力を高める中国市場

[中国・北京モーターショー2012(オートチャイナ)] ヴェヌーシアブランドの浸透を図るべく、会場外にものぼりが。

以上2点は、中国各地でEV関連取材をしている筆者の感想だ。

世界の全自動車メーカーがいま、巨大中国市場で激しいシェア争いを繰り広げている。そのなかで、中国専用車や、中国向けの専用デザインが必然となってきた。その流れは、ついにEVにまで及んだ。

今回の「啓辰 e-コンセプト」登場は、世界自動車市場にとって中国の影響力がいかに強大であるかを、証明しているのだ。

◎関連記事:

中国・北京モーターショー2012「Auto China」 コンテンツギャラリー[随時更新]

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桃田 健史
筆者桃田 健史

日米を拠点に、欧州、BRICs(新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤモンド社)。1962年東京生まれ。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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