日産 フーガ 試乗レポート

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日産車に相応しい躍動感を巧みに演出

ひと昔前の日産車はと言えば、それは出るクルマ出るクルマが“てんでバラバラ”のデザインを備えていた。中には「結構良いかな」と思えるものも存在はしたが、一方で店頭に並ぶ前から「これじゃいくら何でも…」と目を瞑ってしまいたくなるようなものも少なくなかったものだ。要するに、そこでは“ニッサン車らしさ”などという統一感はまるで感じられなかった。そうした状況がしばらく続いた後、日産は未曾有の窮地へ突入する事になった……というのはご存知の通りのヒストリーである。

そんな当時からすると、現在の“ニッサン・デザイン”は見違えるようにテーマが明快になっている。日産車が得意とするのはやはり『走り』であるはず。そしてこのフーガのエクステリアも、そんな日産車に相応しい躍動感というものを中々巧みに演じていると思う。ことさらに新しいという印象ではない。が、フロントマスクやCピラーの造形に「日産らしさ」を感じる事が出来る。大きな車輪が思い切り外側に張り出して位置決めされているのも力強さを演じるための重要なポイント。セダンなのにいかにも「走りそう」なイメージが強い。それがフーガの外観だ。

インテリアも「スポーティさの演出」がメイン・テーマ

フーガはやはりインテリアも「スポーティさの演出」がメイン・テーマ。いわゆるツインコクピット・タイプの前席は、高いセンターコンソールで左右のポジションが明確に分離されているのがFR車らしいポイント。丸型4連式のメーターもやはり“走り”をイメージさせるデザインだが、オレンジ色の透過照明は高級感という点では今ひとつの感も…。

木目調やメタル調、ピアノ調などと、グレードによっていくつかの内装の仕様を選択出来るのが特徴ではあるものの、どうも前述の“調”の部分が目立ち気味となって、どこか本物感が物足りないのはこのクルマのインテリアのウイークポイント。端的に言うと、クラウンやレジェンドのインテリアと比べるとちょっとばかり安っぽい雰囲気が抜けないのだ。特に、ダッシュボードなど大物樹脂の部分にそんな印象が強い。

最高グレードの『350XV VIP』を除きサイドエアバッグやリア中央席の3点式シートベルトがオプション扱いというのもこのクラスの最新モデルとしてはちょっと寂しい。この御時世、価格の手頃さもフーガの大きな売りという狙いも理解は出来るのだが…。

「真のスポーツセダン」と呼ぶに相応しい走りの実力

フーガの骨格は、すでにスカイラインやフェアレディZなどにも用いられたいわゆる“FM(フロント・ミッドシップ)パッケージ”がその基本。ただし、フロントサスペンションに新開発のダブルウィッシュボーン式を採用するなど、そうした既存モデルに対しては大幅に手が加えられている。大径19インチ・シューズを履く『スポーツ・パッケージ』仕様車では、かつてはハイキャスと呼ばれていたリアのアクティブステア機構が“復活”した事もニュースになる。

搭載エンジンは2・5、もしくは3・5リッターのV型6気筒ユニットに限定。スカイラインに採用された直噴方式を用いなかったのは、やはりコスト的な要因からか。組み合わされるトランスミッションは5速ATのみ。クラウンが6速ATを用いるのをはじめすでにこのクラスでは世界的にもより多段化の傾向が見受けられる。ただし、フーガが5速仕様に“甘んじた”のはコスト的要因よりも「まだ6速仕様の準備が整わないため」という雰囲気。トロイダル方式はその高価さ故に、さすがに時間が経っても採用例が増えてこない。

優れた前後重量配分を実現させる、全長の短いV6エンジンを可能な限りカウル側(後ろ側)に寄せて搭載する“FMパッケージング”。新開発のフロントサスペンションに、世界的にもまだまだ稀有な19インチ・シューズの大胆採用。さらには久々に復活させたリアのアクティブステアリング……と、こうしていくつかのスペックを拾い上げるだけでもこのクルマの運動性能に掛ける意気込みのほどは伺い知る事が出来る。そして実際にアクセルペダルを踏み込むと、そうしたスペックが決してカタログを飾るためのものではない事が実感出来るのがフーガの走りだ。

運動性能の高さを最も端的に感じさせるのが3・5リッター・エンジンを搭載した『GTスポーツ・パッケージ』車の走り。薄く太いシューズを履くにも拘わらず、乗り心地はそれが信じられないほどにしなやか。路面凹凸を滑らかに舐めるので当然接地性にも優れる。自在なハンドリング感覚はまるで生粋のスポーツカー風ですらある。反対に惜しいのは、ATが5速に留まるため変速時のエンジン回転数の変動が大きめである事とそのエンジンの回転フィールが今ひとつ滑らかさに欠ける事。

それにしても、「真のスポーツセダン」と呼ぶに相応しいのがフーガの走りの実力だ。

いよいよ日産が日本国内に本腰を入れる

経営再建に取り組む日産は、これまで数年間は世界最大の自動車需要国であるアメリカで受ける商品を集中的にリリースしてきた。現在伝えられるこのメーカーの復活は、それらがシナリオ通りに好調なセールスを記録した事を意味するわけだ。そして、そんなアメリカの好調で得たリソースを使っていよいよ日本市場を活性化させる番がやってきた。「日本と北米市場で50%ずつの台数を販売したい」というフーガもそんな一台と言える。

フーガの走りは「セドリック/グロリアの後継車でしょ…」とタカを括っていたぼくの予想を超えるものだった。特にフットワークの仕上がりの秀逸さは、“FR車の両巨頭”と名を馳せるメルセデス・ベンツとBMWの各車に一泡吹かせるに十分なものだ。

一方で、日本の道路状況を考えると、「そんな上質な走りのテイストを、もうひと回り小さいサイズで実現して欲しい」という思いも拭い去れない。いずれにしても日産が日本国内に本腰を入れるのはいよいよこれから。このメーカーにはもう一度“安定巨人”のトヨタを脅かす存在となって、日本の自動車界を活性化させて欲しい。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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