フェアレディZ34 Version NISMO/Fun to Drive×岡本幸一郎(2/2)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:オートックワン編集部
意のままに反応する軽快なフットワークで、本当にどこでも楽しく走れる
Z34のVQ37VHRは、ややガサツな回転フィールではあるものの、もともと非常にトルクフル&パワフルなユニット。それが吸排気系の効率向上により、さらに全域にわたって「抜けた」感じになっていて好印象だ。
自然吸気エンジンで19馬力も上げたというのは相当な上がり幅だと思うが、実際、回すほどに元気さを増していく。ちなみに、前作ではMTのみの設定だったが、今回は7速ATもラインアップされたので、ATがないため断念していた人にとっても朗報だろう。
フットワークについて、普通に走っていると、ノーマルよりも乗り心地がよく感じられる部分があるのも前作と同じ。このあたり、不要な振動を瞬時に減衰させる効果を持つパフォーマンスダンパーの装着も効いているはずだ。
また、ノーマルよりもサスペンションのフリクション感がなく、しなやかさが増している。ただし、その先の領域はしっかり強化されているので、速い入力時には、路面の凹凸には比較的ダイレクトに反応し、それなりに固さを感じる。そう味付けされている理由が、ワインディングを攻めるとよくわかる。
いまどき1.5トンという車重は、当たり前になってきたとはいえ、けっして軽いわけではない。それでも、意外なほど軽快なフットワークが楽しめる。強化された足まわりが、クルマの運動神経を高めるとともに、挙動を大きく乱すことを許さない。
ただし、ロールさせない中でも、リアはほとんどロールさせないもの、リニアさを損なわず、キレイに曲がらせるために、フロントは必要なだけのわずかなロールを、あえてさせているという印象。このあたりの味付けのバランスが絶妙だ。
Zやスカイライン、フーガなどに採用されている日産のFR-Lプラットフォームは、もともとの素性として、全体的にサスペンションストロークが不足気味であることと、深くストロークしたときに限界付近でリアが唐突にブレイクする傾向があると感じていた。ところがバージョンニスモは、それら悪しき印象がだいぶ薄れている。
フロントが意のままに反応し、リアがしっかり安定していると、本当にどこでも楽しく走れる。
また、クルマというのは高性能であるほどタイヤの使い方が重要になってくるわけだが、それをより好ましい形で実現すべく、このクルマは、サスペンション自体を磨き上げ、それを支えるボディを調達し、さらに空気を味方につけるという、非常に手の込んだ仕事を経て仕上げられている。その成果が、このクルマの走りに見事に表現されているのだ。
世界をみわたしても、屈指のドライビングプレジャーを持つ1台に違いない。
いまやスポーティモデル自体がめっきり少なくなった日本車のラインアップの中で、こうしたクルマが存在してくれること、また開発の手間を考えると、この価格でこのクルマが手に入れられることを心からうれしく思う。
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