日産 LV(ライフケアビークル)のふるさとで福祉車両を体感!~オーテックジャパン 工場見学ツアー~
- 筆者: トクダ トオル(MOTA)
- カメラマン:茂呂幸正/オーテックジャパン
オーテックジャパンの二大稼ぎ頭は「SV」と「LV」!
日産自動車の特装車を扱う「オーテックジャパン」の名は既にご存知だろう。人気のドレスアップモデル「ライダー」「アクシス」シリーズを初めとするSV(Speciality Vehicles:スペシャリティ・ビークル)は同社の稼ぎ頭へと成長した。例年秋に開催されるオーテックオーナーズミーティング(AOG)「湘南里帰りミーティング」も、そんなSVモデルに対する熱い情熱を持ったオーテック車ファンにより、年々その熱気を増しているところだ。
そのいっぽうで、オーテックジャパンのもうひとつの柱「LV」シリーズに今回はフォーカスする。え、LVってナニ?
LVとはLife Care Vehicles(ライフケアビークル)の略。日本語で端的に言うと「福祉車両」だ。自動車メーカーによって名称(愛称)が異なるためわかりにくい部分があるが、日産ではそのように呼称する。後部に電動式の車いすリフターが付いた1BOXカー「キャラバン」のハイルーフ車のような、日本テレビ系「24時間テレビ」で福祉施設へ寄付される車両をイメージすればまずはいいだろう。もちろんこのような福祉施設向けの業務用モデルのほか、障害者の一般ユーザーが自ら運転するための運転補助装置を付けた乗用車や、助手席や後部座席の乗降をサポートする補助装置付きのモデルまで、日産とオーテックジャパンでは様々なニーズに応える多彩なLV(ライフケアビークル)をラインナップし、年間約7000台を生産・販売している。そのバリエーションをご紹介するだけでも1記事になってしまうから、詳しくは下の画像をそれぞれクリックして見て欲しい。
今回はそんな日産 LVモデルのふるさと、神奈川県茅ヶ崎市のオーテックジャパン本社工場を訪ね、その生産工程を見学させて頂いた。これが、実に驚きの連続だったのだ!
職人技が光る! これぞニッポンのモノ造り
LV[Life Care Vehicles:ライフケアビークル]の生産現場、オーテックジャパン本社工場の生産ラインを見学させてもらった。自動車メーカーの「生産ライン」と言えば、先進的なロボットが動き回り、オートメーション化と高効率化を極めた、システマチックな工場を想像するだろう。
がしかし、その現場に足を踏み入れて驚いた。1から10まで、全てがハンドメイドで構成された職人技の世界だったからだ!
まず見せられたのは車両の最終架装ライン。と言っても、パッと見にはちょっと規模の大きな車検整備工場のようだ。ここでは、日産の各工場で生産されたベース車に対し、1台1台仕様の違う専用装備を順に装着していく。例えば、スライドドアの開閉に合わせ足元に出てくる電動ステップや、テールゲートから車いすを車載する電動式のリフターなどを作業員が手作業で装着していく姿が見られた。30分の作業を5回程度繰り返し完成、という流れになっていて、その都度自走で車を動かしていく。1日あたり50台程度が生産能力だという。
ちなみに、より多くの台数を量産する「ライダー」や「アクシス」モデルの特装パーツの多くは、日産の各工場内の生産ラインにオーテックの専用ラインを設置。オーテックジャパンの社員が出向して装着しているという。ただし一部のモデルはここに運ばれ専用のグリルやバンパーなどを装着する。この日は「ブルーバード シルフィ」のアクシスモデルが、背の高いLV車に混じって並んでいるのが確認できた。
また写真撮影はNGだったが、高級ミニバン「エルグランド」の特装車「VIP」の生産ラインも見ることが出来た。通常は3列シートレイアウトのエルグランドだが、VIPでは特注で大型のソファーのようなシートを2脚だけ装着した2列仕様とすることすら可能となっている。しかも、VIPの名に相応しい超高級モデルらしく、ユーザーの要望に基づき冷蔵庫や大型モニター、テーブルなど、1台毎にこと細かな装備・仕様に対応しているあたり、職人集団オーテックジャパンの本領発揮というところ。
そして、もっとも驚いたのが、そうしたLV・SVの各モデルに架装される部品のひとつひとつが、ユーザーのニーズにきめ細かく対応していった結果、ほぼ自社内で内製しているという点だ。
電装品のハーネス・ギボシ端子の類から、シート地の張替え、特装品を支える台座等の各金属・鉄板パーツ加工から鋳物の製造に至るまで、プレス加工を含まないものならば、ほとんどここで造られているのだからスゴイ。
[※詳細は各画像をクリック!(こちらには掲載仕切れなかった画像も見られます)]
もはや高齢化社会なんかではない。「超高齢社会」に突入しているのだ!
日本は、先進各国の中でも特に高齢化が進んだ国だというハナシを、一度は聞いた事があるだろう。ちなみに高齢化とは、人口の中で高齢者が占める割合が7~14%の状態を指すという。では、我が日本は・・・2010年9月の統計では、実に23.1%!
日本はもはや高齢化どころか、高齢社会(14~21%とされる)すら超え、「超高齢社会」の部類に突入していたのだ!
つまりそれだけ福祉車両「LV(ライフケアビークル)」の果たす役割は大きいということが数値の面でも改めて実感出来る。
そこで我々報道陣も、既に突入している超高齢社会を実感してみよう!・・・というワケで、高齢者疑似体験プログラムを実施してみることに。
手足の重り、関節のサポーター、耳栓や特殊な色付きメガネなどを装着して、80歳位になった時の身体的機能低下や心理的変化を擬似体感出来るという「エイジングスーツ」をまとって車いすに乗ってみたり、福祉車両を体感してみたりした。
高齢者が「介護」認定されるひとつの基準が、お風呂の段差を乗り越えられるか否か。動きづらくなった関節や足腰の重さは思った以上に難物で、それは車の乗り降りについても同様だった。いつもなら難なく乗り降り出来る低床の日産セレナのスライドドアでも、脚を上げて乗るのはかなり厳しい。手前にせり出してきた大型ステップが、これほどまでにありがたいことかが実感できた。
色がかかったメガネを通して見えるのは、80歳代の3人に1人がかかるという白内障の疑似体験。加齢によって眼球の瞳がにごる病気だが、まるでモヤがかかった状態の視覚は、特に暗い場所などで恐怖に変わる。オーテック製の福祉車両の多くが明るいベージュ内装としているのはまさにそんなユーザーのことを思ってのこと。黒内装の車との違いは歴然だった。そしてLVのオレンジ色の手すりも同様で、白内障の人でもこの色なら見やすいのだという。最近では鉄道の優先席エリアや、ノンステップの路線バス車両などにもオレンジ色の手すりの採用が広がっているのはそういう理由からなのだ。
この高齢者疑似体験プログラムを主催したオーテックジャパン LV商品・販促企画 島本 圭子 部長はプログラム体験後の我々に対し、「これからは、例えば買い物の支払いでもたついているお年寄りに対して、その気持ちを理解してあげることが出来るのではないでしょうか」と話していたが、まさにその通りだと感じた。
加齢は、誰にでもいつかはやってくる、避けては通れない道。LVの存在が高齢者を大きく助けているように、僕らにもまだまだ出来ることがあるのだと改めて実感させられたのだった。
[レポート:トクダ トオル(オートックワン編集部)/Photo:茂呂幸正/オーテックジャパン]
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