BMW、ワシントンに炭素繊維製造工場を新設

BMW

BMWグループとSGLグループは、両社の合弁会社SGLオートモーティブ・カーボン・ファイバー(Automotive Carbon Fibers)社が米国ワシントン州モーゼスレイクにて、最先端技術を採用した炭素繊維製造工場を建設すると共同発表した。初期投資額を1億USドルとし、現地において80人の雇用を創出する。

この新工場は、将来導入する車両を構成する際に不可欠となる、超軽量炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の量産を目指し、両社の戦略上、もっとも重要な工場となる。モーゼスレイクで生産される炭素繊維は、BMWグループが掲げる車両コンセプト「メガシティ・ビークル」実現のために主に使用される。BMWグループは本年2月、BMWのサブ・ブランドとして、アーバン・モビリティ向けのニューモデルを2015年までに市場投入する計画を示し、ドイツのライプツィヒ工場で組み立てを行うことを発表した。そして今回、車両コンセプト実現のために欠かせない構成部品の製造拠点が米国に開設されることになった。

サステイナブルな事業活動を重視するBMWとSGLの両社が炭素繊維工場の建設地としてモーゼスレイクを選んだ最大の理由は、環境に配慮した再生可能な水力と、ワシントン州における競争力のあるエネルギー・コストの活用にある。産業や社会基盤が整備され、利便性が良く、熟練労働力の確保が容易な上、地元州政府との調整が容易な立地条件も、モーゼスレイクの選定につながった。

「モーゼスレイクの新工場は、自動車向け炭素繊維の大規模生産に向けてのマイルストーンです。」SGLグループのCEO、ロバート・ケーラー氏はこのように述べ、さらに、「最新技術により、世界で最もコスト効率の高い炭素繊維工場を目指します。今回の投資は、すでに炭素繊維と複合材工場を運営している米国への私たちの関与をさらに深めるものです。炭素繊維の製造はSGLグループの中核事業であり、パートナーのBMWグループと共に、炭素繊維が軽量の自動車構造実現に画期的な役割りを果たしうることを実証したいと考えています。」と語った。

「炭素繊維は時代の先端を行く素材です。私たちのパートナーシップが都市環境における持続性のあるモビリティを可能にします。サステイナビリティは私たちの経営戦略の一部であり、これをバリュー・チェーン全体にわたって注視しています。だからこそ、炭素繊維の製造について、環境にやさしい水力エネルギーを使用する道を選んだのです。」BMW AG財務担当取締役、フリードリッヒ・アイヒナーはこのように述べ、さらに、「軽量化構造は、私たちのEfficientDynamics戦略の重要な要素である、燃料低減とCO2排出削減に寄与し、持続性のあるモビリティの実現に重要な意味を持っています。メガシティ・ビークルにCFRPコンポーネントを採用することで、サステイナブルなモビリティの実現に一歩近づくことになるのです。SGLグループのノウハウとBMWのCFRPコンポーネント製造における専門知識を統合し、CFRPコンポーネントを初めて競争力ある価格で大量生産できるようにします。メガシティ・ビークルが目指す電気自動車にとって、これは特に重要な意味を持っています。」と続けた。

CFRPの製造は複数の工程に分かれる。炭素繊維製造に必要な原料であるポリアクリロニトリル(PAN)ベースの半製品は、SGLグループと三菱レイヨン(MRC)の合弁会社が日本の広島県大竹市で製造する。次の工程で、このポリアクリル繊維をモーゼスレイクで実際の炭素繊維に加工される。続いてこの繊維は、ドイツのヴァカースドルフにある別の合弁会社において炭素繊維織布へと加工される。さらにドイツのランツフートにあるBMWグループの工場で、この織布からCFRP部品やコンポーネントが製造される。メガシティ・ビークルの車両モデルは、現在BMW 1シリーズとBMW X1シリーズが生産されているBMW グループのライプツィヒ工場で組立てられ、完成を迎える。

SGLグループとBMWグループは、炭素繊維複合材分野で長年にわたり協力してきた。炭素繊維を自動車に本格使用するために、両社の持つ中核的な専門知識を統合し、2009年10月に合弁会社を設立した。

SGLグループは、高機能素材と炭素繊維ベースの素材に関するノウハウにより合弁事業に貢献する。欧州唯一の炭素繊維および複合材メーカーである同社は、バリュー・チェーン全体をカバーしている。他方、BMWグループには軽量化構造自動車の設計と製造のノウハウに加え、BMW Mブランドとレース車両を通じて培った、CFRP使用の経験を活用する。

この合弁事業は2つの会社、米国のSGLオートモーティブ・カーボン・ファイバー(Automotive Carbon Fibers)社とドイツのSGLオートモーティブ・ファイバーズ(Automotive Fibers)社により推進され、SGLグループが51%、BMWグループが49%を出資する。

サステイナビリティとリサイクル

サプライ・チェーン全体を通じて、環境、社会、経済各側面に一貫した配慮が行われる。炭素繊維と炭素繊維コンポーネントは、環境リソースへの慎重な配慮のもとに製造、加工される。モーゼスレイクでは環境にやさしいエネルギーとして水力を利用するほか、炭素繊維とその複合材をリサイクルするためのプロセスの開発に取り組むことになっている。

SGLグループについて

SGLグループは世界を代表するカーボン・ベース製品メーカーのひとつである。製品ポートフォリオはカーボンおよびグラファイト製品から、炭素繊維と複合材にいたるまで、多岐にわたる。SGLグループの中核技術は、高温技術とその応用および長年の経験で培ったエンジニアリングのノウハウである。これらの専門知識により、広範な素材の様々な用途への展開が可能である。SGLグループのカーボン・ベース素材は、電気/熱の伝達、耐熱/耐食性、機械的強度、軽量などの面で、他の素材にない一連の特性を備えている。世界的なエネルギーおよび原料不足を背景に素材転換の動きが進む中、ますます多くの産業分野からSGLの高機能な素材と製品に対する需要が増大している。カーボンおよびグラファイト製品は、鋼やアルミニウム、銅、プラスチック、木材など他の素材ではその特性上所期の成果が得られない場合に必ず使用される。SGLの製品は主に、鉄鋼、アルミニウム、自動車、化学、ガラス/窯業などの産業で使用されている。そのほか、半導体、バッテリー、太陽光/風力エネルギー、環境保護、航空宇宙および防衛産業、原子力機器などのメーカーもSGLの顧客となっている。 SGLグループは世界規模で事業を展開し、生産拠点は欧州(23)、アメリカ(11)、アジア(8)など43を数え、サービス・ネットワークで100以上の国をカバーしている。2009年のグループ従業員数は約6,000名、売上高は12億ユーロだった。本社はドイツのヴィースバーデン、北米事業本部はノースカロライナ州シャーロットにある。

BMWグループについて

BMWグループは、BMW、MINI、ロールス・ロイスの3つのプレミアム・ブランドを擁する、自動車およびモーターサイクルのトップ・メーカーのひとつである。グローバルな企業として、現在、世界13ヵ国に24の製造工場を有し、140ヵ国以上に販売網を構築している。 2009年度における自動車総販売台数は129万台、モーターサイクルは8万7,000台で、 税引前利益は4億1,300万ユーロ(1ユーロ135円換算で約557億5,500万円)、売上高は506億8,000万ユーロ(同、約6兆8,418億円)を計上した。また、2009年12月末時点における従業員数は約9万6,000名となっている。 BMWグループは常に長期的な視野と責任ある行動を企業の指針とすることで成功をおさめてきた。その結果、すべてのバリュー・チェーンにおける環境的および社会的持続性、責任のある製品作り、さらには資源保護に対する明確なコミットメントを企業戦略の不可分な要素として確立した。このような努力が実を結び、BMWグループはダウ・ジョーンズ・サスティナビリティ・インデックスの自動車部門においてトップに5年連続で選定されている。

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筆者
樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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