ついにクルマ用タイヤも空気充填不要に!東洋ゴムが新タイヤ「ノアイア」開発
東洋ゴム工業は、空気充填不要の近未来型エアレスコンセプトタイヤ「noair(ノアイア)」を開発したことを発表した。
同社は、空気を内部に充填することで荷重を支え、路面からの衝撃を和らげる、いわゆる現在の「空気入りタイヤの基本構造」を根本から見直し、空気充填を不要としながらもタイヤの基本性能を担保するという新しい概念をテーマに、2006年よりエアレスタイヤの研究に取り組んできた。2012年5月には、それまで蓄積した技術開発の一端を披露する目的で、自動車技術の専門展示会に試作モデルを参考出品している。
今回、過去の試作モデルから抜本的にタイヤ構造を変革し、課題の改善を進めることによって、複数の性能指標を飛躍的に向上させるとともに、実用可能なレベルでの走行が可能となった。東洋ゴムは、これをコンセプトタイヤとして「ノアイア」とネーミングし、引き続き、実用化を展望した研究と技術開発の進化に取り組んでいく。
noairの特徴
内芯側では高剛性の特殊な樹脂のスポークによってタイヤの基本構造を構成し、荷重を支持する力を確保するとともに、外側の路面に接するトレッド部分にはゴム部材を用いて、「走る、曲がる、止まる」というタイヤの基本性能を成立させている。
また、スポークとトレッドゴムの間には樹脂で構成する外径リングの内部にCFRP(カーボン繊維強化プラスチック)を配して補強する工夫により、スポークにかかる荷重を低減している。
過去の試作モデルでは「楕円形のスポーク構造」によって、荷重を支持していたが、ノアイアではタイヤ幅の奥側と手前側を交互に交差させる「X字型スポーク構造」に革新。他に例を見ない独自の支持構造形態を実現し、耐久力を向上させた。
また、スポーク本数を過去モデルより倍増(100ピッチ)したことで接地圧を分散させ、接地時に発生するスポークによる打撃音を緩和させ、これまで以上の静粛性を実現した。
特性値の評価
耐久力については、東洋ゴムの市販製品(空気入りタイヤ)での法規相当条件を大幅にクリアするとともに、過去の試作モデルから8倍以上の向上を実現した。
また、タイヤの転がりやすさを表す「転がり抵抗値」については、過去の試作モデル比で2分の1以下に低減し、同市販製品に比べても25%の良化を実現した。
一方、濡れた路面でのブレーキ性能を示す「ウェット制動距離」は同市販製品と比べて4%短縮した数値となるなど、優れた環境性能と安全性能を得ることもできた。これは、同社が低燃費タイヤの製品化に際して駆使している、独自の材料設計基盤技術「Nano Balance Technology(ナノバランステクノロジー)」によって配合した、低燃費トレッドゴムを採用したことによる成果でもある。
車外騒音については、過去の試作モデルから大幅に改善し、現行空気入りタイヤに遜色のないレベルに近づけている。
実車フィーリング
東洋ゴムのタイヤ評価開発部に在籍する実車評価ドライバーがパネラーとなって評価を行なう実車走行フィーリングテストでは、車内音と乗り心地において課題が残るものの、操縦安定性や車外騒音に飛躍的な改善を確認するとともに、過半の指標において、同社市販製品(空気入りタイヤ)に近づく進化がなされたという結果を得た。
今後の展望
同社は、採用した素材や特有の構造設計、各種技術の底上げと統合、トータルバランスの最適化という技術的ブレークスルーにより、タイヤとしての可能性に照らして、前世代までの試作モデルから飛躍的な進化を実現した。
また、実車に装着して走行できるレベルに到達しつつあることも踏まえ、今回開発したコンセプトタイヤにネーミングを行なうとともに、スポークのカラー化も実現していくなど、ラボレベルからマーケット視点の加味も始めている。
EVやコンパクトカーなどの未来型モビリティが市場の一角を形成し始める社会を想定した場合、現時点で、メンテナンスフリー性のニーズがより高まることが予想される。また、安全性の面からパンク故障のない移動車両も有効性が高まることが考えられることから、空気充填不要のエアレスタイヤはそのポテンシャルを秘めていると認識している。
実用化に向けて解決すべき課題はあるものの、現時点の技術レベルを公開することによって、多方面より知見を獲得するとともに、さらなる研究と技術開発を進めていくとしている。
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