フォルクスワーゲン初の完全自動運転可能なEVコンセプト「I.D.」を公開
フォルクスワーゲンは、パリモーターショーでコンセプトカーの「I.D.」を初公開した。
採用されている 「I.D.パイロット」モードでは、完全な自動運転が可能。このテクノロジーが生産モデルに搭載されるのは2025年になる予定である。
さらに、フォルクスワーゲンでは、2025年までに年間100万台の電気自動車を販売する目標を立てており、「I.D.」の量産モデルの発売がこの目標実現に大きなカギを握ることになる。
具体的な価格は未定となるものの、同等の動力性能、装備を備えた「ゴルフ」と大差ないレベルになる見込みである。
新時代に向けての車両コンセプト
「I.D.」は、新しい「MEB」車両アーキテクチャーに基づいたフォルクスワーゲン初のコンパクトコンセプトカーとなる。
MEBは「Modularer Elektrifizierungsbaukasten(英語:Modular Electric Drive Kit 日本語:モジュラー エレクトリック ドライブキット)」の略称で、純粋な電気自動車のために新たに考案されたものである。
「I.D.」のゼロエミッションドライブシステムは、パワーエレクトロニクスとトランスミッションを含む、リアアクスルと一体化した電気モーター、車両の床下に収納されたスペース効率のいいフラットな高電圧バッテリー、クルマのフロント部分に収納された補器類などから構成されている。
電気モーターの最高出力は125kW(170PS)。0~100km/hを8秒以内で加速し、最高速度は160km/hに達する。将来登場する量産モデルは、それを上回る、または下回る性能のバリエーションも考えられるが、複数のタイプのバッテリーを搭載することが想定されている。航続距離は、400~600kmとなる。
「I.D.」に使われている高電圧バッテリーは、シャシーと一体化した設計になっている。
パワーエレクトロニクスが仲介役として、電気モーターとバッテリー間の高圧電流の流れを制御。パワーエレクトロニクスモジュールの働きで、バッテリーに蓄えられた直流電流(DC)が交流電流(AC)に変換され、またDC/DCコンバーターを介して車載電子機器に12V電流が提供される。
電気モーターの駆動力は、シングルギヤトランスミッションを介してリアアクスルに伝達される。電気モーター、パワーエレクトロニクス、トランスミッションで、ひとつのコンパクトなユニットを形成している。
床に敷かれたバッテリーにより、レーシングカー並みに低くなった車両の重心はニュートラルなハンドリング特性の実現に貢献。また前後の重量配分も48:52と理想的な値が得られている。
バッテリーの充電はケーブルを使うほか、クルマの前部に設置された非接触充電インターフェイスを使って行うこともできる。
ケーブルを使う場合、クルマを電源ソケットに接続するために、別個の充電プラグが必要になるが非接触充電では、クルマを「充電プレート」の上に停車させるだけで充電が可能に。
急速充電システムでは、30分でバッ テリー容量の80%まで充電することができる。
「I.D.パイロット」モードで完全な自動運転が可能
「I.D.」は、フォルクスワーゲンとして初めての完全自動運転を可能にした。
ステアリングホイールにあるフォルクスワーゲンロゴを3秒以上押し続けることで、マニュアルから完全自動モードへの切り替えが行われる。
その時、電動調整式&折り畳み式のステアリングホイールは、ダッシュパッドに収納されてダッシュボードの表面は完全に平らになり、インテリアはまるでラウンジにいるようなくつろいだ雰囲気が演出される。
完全な自動運転モードにすると、レーザースキャナーが作動を開始。ルーフから4つのレーザースキャナーが姿を現すと同時に、ルーフセンサーもブルーの間接光で照らし出されるようになり、自動運転モードで走行中であることが、周囲の道路ユーザーにもわかるようになっている。
「I.D.」は走行時に、このレーザースキ ャナーのほか、超音波センサー、レーダーセンサー、サイドビューカメラやフロントカメラを使って他の道路ユーザーを認識。さらにクラウドを介して交通データも常に収集し、車両が集めたデータと比較して、安全に走行できるようにしている。
ドライバーがブレーキもしくはアクセルペダルを踏むと、完全な自動運転モードを解除することができる。
「I.D.」のキャビンには4つの独立したシートが設置され、それぞれのバックレストには、ヘッドレストとシートベルトが一体化している。
穏やかなライトグレーのサテン地を採用された縫い目の少ないシートは、まるで宙に浮かんでいるかのようなデザインとした。
リアシートは、映画館のシートのように座面を折りたためる設計になっており、例えば、折り畳み式の自転車や絵画の額縁などの大きな荷物も運ぶことができる。
またこのリアシートをフロアレベルまで下げることで、キャビン後部とトランクルームで一体のフラットな積載エリアを生み出すことが可能。ラゲージスペースは、シートの設定によって、最大960リッター確保することができる。
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