三菱自、特別調査委による燃費不正問題の調査報告書を公開

三菱自による燃費不正問題に関する特別調査委員会

三菱自動車工業株式会社は、先般の燃費不正問題に関して独立した外部の専門家により構成される特別調査委員会を本年4月25日付で設置、本日8月2日に調査結果の報告書を公開した。

以下は調査報告書の概要となる。

1 調査の概要

東京・田町の三菱自動車工業株式会社 本社

(1) 調査期間

2016年(平成28年)4月25日から同年7月31日までの間

(2) 調査の方法

関係資料の精査、ヒアリングの実施(合計154名、のべ236回)等

2 調査結果

特別調査委員会 委員長 渡辺恵一氏
三菱 eKワゴン・eKカスタム

(1) 法規で定められた惰行法によらない走行抵抗の測定

MMCは、遅くとも1991年(平成3年)12月ころから、約25年間にわたり、その間に製造・販売されたほぼすべての車種について、法規で定められた惰行法を用いて走行抵抗を測定せず、高速惰行法により測定した走行抵抗をもとに、惰行法により走行抵抗を測定したかのような体裁を有する負荷設定記録を作成できる逆算プログラムを使用し、さらに測定期日や測定場所などについて事実と異なる記載をした負荷設定記録を作成し、これを提出して型式指定審査を受けていた。

(2) 走行抵抗の恣意的な改ざん及び机上計算

MMCは、遅くとも2005年(平成17年)12月ころから、開発段階において測定した走行抵抗があるにもかかわらず、あるいは実車を用いて測定していないものの一応の合理的な根拠をもって計算した走行抵抗があるにもかかわらず、燃費目標を達成するために、それらの数値を用いることなく、恣意的に走行抵抗を引き下げて、型式指定審査の際の走行抵抗として使用していた。

また、MMCは、型式指定審査の際に使用する走行抵抗は実際に試験自動車を走行させて測定した数値を用いなければならないのに、それをせず、過去に測定した走行抵抗に、仕様の変更等に伴う走行抵抗の変化を机上計算した数値を補正し、これを型式指定審査の際の走行抵抗として使用していた。

(3) eKワゴン/eKスペースに関する走行抵抗の恣意的な算出と引下げ

2013年(平成25年)6月に販売された14年型eKワゴンと、その後に順次開発して販売された14年型eKスペース、15年型eKワゴン、15年型eKスペース、16年型eKワゴンは、いずれも燃費目標を達成するため、走行抵抗、特に転がり抵抗係数の恣意的な算出と引下げが行われていたが、その概要は、以下のとおりであり、数値の不正な作出と評価される程度に、次第にエスカレートしていったものである。

14年型eKワゴン(2WD)の転がり抵抗係数(0.0052)は、タイで実走実験を行い、そこで得られたデータのうち、下限のデータ群を選別して算出された(実際に型式指定審査の際に使用された数値は0.0055)。14年型eKワゴン(4WD)の転がり抵抗係数(0.0072)は、2WDの数値に0.0020を加えたものである。14年型eKスペース(4WD)の転がり抵抗係数(0.0060)は、日本で実走実験を行い、そこで得られたデータのうち、下限のデータ群を選別して算出された。

しかし、15年型eKワゴン以降は、このようにして算出した転がり抵抗係数を起点として、何ら根拠なく、転がり抵抗係数を更に恣意的に引き下げて、型式指定審査の際に使用した。

すなわち、15年型eKワゴン(2WD)の転がり抵抗係数(0.0049)は、14年型eKワゴン(2WD)の転がり抵抗係数(0.0052)のデータを、根拠なく、下方に描き直して導き出された。

15年型eKスペース(4WD)の転がり抵抗係数(0.0053)は、14年型eKスペース(4WD)の転がり抵抗係数(0.0060)を、根拠なく、下方に描き直した上で、タイヤ改良分を机上計算により更に低くして導き出された。また、15年型eKスペース(2WD)の転がり抵抗係数(0.0042)は、15年型eKワゴン(2WD)の転がり抵抗係数(0.0049)から、単に0.0007を差し引くことで導き出された。

16年型eKワゴン(2WD)の転がり抵抗係数(0.0042)は、当初は、15年型eKワゴン(2WD)の転がり抵抗係数(0.0049)から、根拠なく引き下げたり、タイヤ改良分を机上計算していたが、最後は、根拠なく、15年型eKスペース(2WD)の転がり抵抗係数をそのまま流用して導き出された。

3 本件の原因・背景

(左)三菱自動車工業株式会社 取締役会長 兼 取締役社長 CEO 益子修氏/(右)三菱自動車工業株式会社  取締役副社長 執行役員 山下光彦氏
東京・田町の三菱自動車工業株式会社 本社

本件の原因・背景には、下記1~6があったと考えるが、これらの原因・背景の根本まで掘り下げて分析してみると、MMCの経営陣及び開発本部の幹部による開発現場に対する関心が低く、また、開発本部の各部署も自分たちの業務にしか関心を持たず、結局のところ、下記7のとおり、MMC全体で自動車開発に対する理念の共有がなされず、全社一体となって自動車開発に取り組む姿勢が欠けていたことが本質的な原因であったと考える。

本件問題は、性能実験部及び認証試験グループ、更には開発本部だけの問題ではなく、経営陣をはじめとするMMC全体の問題である。

1 性能実験部及び認証試験グループが燃費目標達成に向けた事実上の責任を負っていたこと

2 開発における工数が慢性的に不足していたこと

3 性能実験部ができないことを「できない」と言うことが容易ではない部署になっていたこと

4 法規違反であることの意識が希薄であり、法規が軽んじられていること

5 不正行為が長年にわたり発覚せず、改められもしなかったこと

6 eKワゴン/eKスペースについて、技術的議論が不十分なまま燃費目標の設定がされたこと

7 会社が一体となって自動車を作り、売るという意識が欠如していること

4 再発防止策

(左)三菱自動車工業株式会社 取締役会長 兼 取締役社長 CEO 益子修氏/(右)三菱自動車工業株式会社  取締役副社長 執行役員 山下光彦氏

MMCにおいては、これまでの様々な再発防止策によっても本件問題を防げなかったという現実があることから、当委員会は、MMCの再生にとって真に重要なのは、経営陣や全役職員による徹底的な議論を経て、MMCとして、目指すべきクルマ作りについて共通理念を固め、MMCで働く人たちの思いを一致させることではないかと考えた。再発防止策についても、当委員会が提示する再発防止策にただ漫然と取り組むのではなく、全社一丸となって、必要な再発防止策を自ら考え、自ら実行していくことが求められる。そのため、当委員会としては、個別・具体的な再発防止策を提示するのではなく、MMCが自ら再発防止策を考えるにあたって骨格となるべき指針を示すこととした。

1 開発プロセスの見直し

2 屋上屋を重ねる制度、組織、取組の見直し

3 組織の閉鎖性やブラックボックス化を解消するための人事制度

4 法規の趣旨を理解すること

5 不正の発見と是正に向けた幅広い取組

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筆者
樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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