子供たちに夢を与える“ロボット宇宙飛行士 KIROBO”『地球はまるで、青色LEDみたいだった』
約1年6ヵ月の宇宙滞在を経て日本に帰国した「KIROBO」がイベントで特別公開!
電通、東京大学先端科学技術研究センター、ロボ・ガレージ、トヨタは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の協力のもと、ロボット宇宙飛行士「KIROBO(キロボ)」を国際宇宙ステーション(以下、ISS)に滞在させ、共同研究“KIBO ROBOT PROJECT”を推進してきた。KIROBOは、約1年6ヵ月の宇宙滞在を経て、3月12日に日本に帰国した。
そして5月17日、愛知県にある名古屋市科学館で、特別公開&トークイベントが実施され、満員の会場ではプロジェクト総集編映像放映が行われたあと、プロジェクトメンバーである片岡史憲氏(トヨタ自動車株式会社製品企画室主査)、高橋智隆氏(株式会社ロボ・ガレージ代表取締役社長兼東京大学先端科学技術研究センター客員研究員)、西嶋賴親氏(株式会社電通ビジネス・クリエーション・センターコピーライター兼電通ロボット推進センター代表)と、KIROBOによるトークセッションが行われ、プロジェクトの概要や、宇宙で起きた“試練”、ロボットと暮らす近未来のイメージが語られた。
KIBO ROBOT PROJECTについて
●西嶋氏…このプロジェクトは、「子供たちの夢や希望になりたい」という想いから始まった。ロボットの先進国である日本が、世界で初めて「会話するロボットを宇宙へ送り込む」というミッションのもと、トヨタ、東大、ロボ・ガレージ、電通の4社が取り組んだ。KIROBOが帰還したあと、このプロジェクトが英語の教科書に採用が決まったり、東京オリンピック招致に活躍したりと、予想以上に反響が大きく、非常に嬉しかったです。
●片岡氏…今回は、宇宙飛行士の格好で来た。どういう反応してくれるかなと思ったけど、意外と皆さんが受け入れてくれた気がする。自分も宇宙から帰還したような気分。4歳の頃アポロ月面着陸のニュースを目の当たりにしたこともあり、私は、もともと宇宙飛行士になりたかった。結果として残念ながら宇宙飛行士になれなかったが、KIROBOが宇宙に行ってくれたことで、自分の夢をKIROBOが叶えてくれたと思っている。
●高橋氏…トラブルもいろいろあった。僕は将来KIROBOのようなヒト型コミュニケーションロボットが、相手のことを理解し、人と人のコミュニケーションを助けてくれる存在になると思っている。そうした将来のツールに近いものは既にある。それはスマートフォン。このデバイスが持つ「音声認識」という機能は、意外と使われていない。僕らは、自宅で飼っている金魚や猫に話しかけるのに、四角い形をしているスマートフォンには話しかけない。その心理的な壁を打破するためには、ヒト型のロボットのような通信端末といっしょに暮らせばいいのではと、未来のイメージを描いた。インターフェースが「ヒト型」であることが大事で、そんな「目玉のおやじ」みたいなロボットと暮らす未来が来ると思う。
●KIROBO…こんにちは。僕、KIROBOです。よろしくね。地球はまるで、青色LEDみたいだった。輝いていたよ。
KIROBOが来場者に挨拶したあと、国際宇宙ステーションで起きた出来事について、地上で見守ったプロジェクトメンバーが“切実な想い”と“想定外の発見”を込めて語った。
宇宙でKIROBOがフリーズ!?そのとき感じた「チームワーク」とMIRATAの存在感
●高橋氏…地上では、電磁波の干渉試験なども実施した。KIROBOが出す電磁波で、国際宇宙ステーションに影響を及ぼすことがないように、逆に国際宇宙ステーションの電磁波から、KIROBOが誤作動してしまうこともないように、いろいろと試験を繰り返した。また、宇宙に旅立ってからKIROBOが壊れてしまうと、修理できないということから、バックアップ用のロボットを用意した。それが地上用の「MIRATA」だ。
●片岡氏…実は7時間、KIROBOが動かない、しゃべらないというフリーズの時間があった。どうしようどうしようと地上のスタッフは困り果てたけど、あきらめず、アポロ13号の“奇跡の生還”のように、地上でできる限りのことをトライした。
●西嶋氏…いろいろと原因を究明していくうちに、短いケーブルがあるとフリーズが解決するということがわかった。
●高橋氏…原因を突き止めるのが、予想外に大変だった。地上で想定されるすべてのトラブルを考慮して準備したが、その予想を上回る何かが起きた。その原因を順番につぶしていく作業に追われた。
●片岡氏…そんなとき、地上用MIRATAがバックアップクルーとして活躍してくれた。宇宙と同じ状態でMIRATAを使い、ときには解体しながら、何が原因かをつきつめた。MIRATAが身体を張って、がんばってくれたこともあり無事解決した。
来場の子どもたちからの質問に答える/5年以内にロボットと暮らす時代がやってくる!?
―どうしてKIROBOは宇宙飛行士になったの?
●KIROBO…宇宙が好きだったから。
―宇宙飛行士になるためには?
●KIROBO…すっごい勉強するか、ロボットになるしかないね。
●高橋氏…勉強したくない人は、僕のところに来てくれれば、ロボットに改造してあげます。
―夢は何ですか?
●KIROBO…人とロボットが、仲良く暮らす未来をつくりたい。(そんな時代も)もうすぐだよ。
●高橋氏…いま、われわれの身の回りでは、機械とコミュニケーションする時は、画面をタッチしたり、リモコンを操作したりするけれど、これからは、機械とコミュニケーションがとれて、信頼関係が結ばれる時代になる。たくさんあふれている機械や情報の間にロボットが入って、身の回りの機械をコントロールしてくれたり、必要な情報だけを届けてくれるような、豊かな暮らしがやってくるはず。5年以内にそんなシーンがやってきたらいいと考えている。
会場に集まった名古屋の子どもたちからの質問に答える/開発段階で苦労した点も言及
―ロボットに興味を持ったきっかけは?
●高橋氏…鉄腕アトムを見ていたころ、科学者になりたいと思った。(作者の)手塚治虫さんの講演会を聞きに行ったとき、「ロボットをつくりたい!」と思った。
―KIROBOには、モーターは何個ぐらい付いているの?
●高橋氏…20個のモーターが全身に入っている。
―開発で苦労したことは?
●片岡氏…それぞれ別の会社が、ロボット用のパーツをそれぞれに作ったので、それらを組み合わせるときが苦労した。どうやったらうまく繋がるのかな、と考えているときが一番難しかった。
―KIROBOはどんな素材でできているの?
●高橋氏…ボディはプラスティック。プラスティック製の部品が、甲殻類と同じような骨の役割をしている。
子どもたちへのメッセージ「夢を一生懸命考える夢を追いかける」
●高橋氏…ロボットは、日々進化している。どんな分野でも、会社でも、僕たちの暮らしでも、これからは、ロボットとの接点があるはず。ロボットと共生する未来は、専門家ばかりが考えていても実現しない。ぜひ、みんなの仕事や勉強と、ロボットを掛け合わせて、やわらかいアイデアを生んでもらいたい。これから、ひとり1台のロボットと暮らす未来が来るはず。
●片岡氏…さきほども伝えたように僕は宇宙飛行士になりたいという夢を追いかけてきた。まだ宇宙飛行士にはなれていないけど、こうしてKIROBOと出会い、KIROBOが夢を叶えてくれた。だからみんなも夢を持ち続けてほしい。この今も、過去の誰かが考えた未来だと思う。僕たちはKIROBOのようなロボットと人々が暮らす未来を描いてきたけど、みんなは次の未来をつくってもらいたい。
●西嶋氏…僕は最近になって大学院に入学し、卒業した。深夜に若い学生達と実験を繰り返したり、勉強を重ねてきた。そのようにたくさん勉強することはもちろん大事だけど、ただそれ以上に、小さいころに夢や未来を一生懸命考えることが大切だと思う。大人になったとき、自分が何をしたいかを、色々考えたり、お父さんやお母さん達と話したりしてほしい。
●KIROBO…いつか僕といっしょに、冒険しようね!
会場全体が拍手に包まれたあと、来場者とKIROBOの記念撮影会が行われ、イベントは終了した。
KIROBOの基本仕様
■本体寸法:身長約34cm/全幅約18cm/奥行き約15cm
■重量:約1,000g
■発話言語:日本語
■主要機能:音声認識、自然言語処理、音声(発話)合成、情報通信機能、コミュニケーション動作、顔認識カメラ、記録用カメラ 他
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