「自動運転」って本当に実現出来るの?~清水和夫氏に聞く~【前編】(1/2)
- 筆者: 清水 和夫
そもそも、自動運転って本当に実現出来るの?
近年、自動車業界で大きな話題となっている「自動運転」。車が自動で勝手に目的地へ着くことができて、運転が苦手な人でも安心して自由に行きたいところに行けるなんて、まさに夢のようですね。
そこで、政府委員として自動運転の推進委員会に参画している清水和夫氏に、自動運転における世界の動向や日本の現状などをお伺いしました。
編集部:このところ、自動車業界は自動運転の話題で持ち切りですね。清水さんは自動運転の推進委員会に参画されているそうですが、どんな感じでしょうか。
清水:ずいぶん前から事故をなくす技術としてASV(アドバンスセイフティビークル)というロードマップの元で、産官連携で安全技術を進めてきました。たとえばプリクラッシュセイフティやアダプティブクルーズコントロールなどがその代表例です。ですから、急に浮上した技術ではなく、世界の自動車メーカーは事故抑止に資する技術として安全性を高めるための研究開発をずっと進めてきたのです。ドライバーアシストとかインテリジェントドライブという名前も海外では使われています。
編集部:なるほど。今回の自動運転はその技術の延長線にあるわけですね。
清水:はい、そうです。各種センサーを使う、コンピューターで運転をアシストする技術進歩は目覚ましいものがあります。ただし、自動運転ということについてはいくつかの考え方があるものまた事実です。
編集部:といいますと?
清水:実は自動車の定義は、国際的に「最終的な責任はドライバーにある」と明確に定義されています。
編集部:それじゃ無人車で自動的にどこでも行けるようになるわけじゃないんですね。
内閣府SIP(戦略的イノベーションプログラム)
編集部:ところで今回、メディア向けに内閣府の「SIP」というプログラムが発表されましたが、SIPとは一体どのような取り組みなのでしょうか?
清水:「SIP」は自動運転を含む“総合科学戦略”の司令塔として内閣府に設立されました。本年度の予算は500億円。しかし自動運転に限らず、新しい社会システムとか技術を普及させるには、今までの政府の縦割り行政では無理なんですね。
例えば交通事故を激減させるには、警察庁と国土交通省・道路局と同省の自動車局、通信を使うので総務省、新技術への後押しという意味では経済産業省など各省庁の連携が必要です。そして、それを束ねるのが内閣府。
今回のSIPは10項目(※)の先進技術に予算を割り振り、新しい技術を実現するというものです。自動車に関係する領域では自動運転と内燃エンジンの二つの領域があります。私はそのうちの自動運転の推進委員として参加してます。
編集部:具体的にはどんなことを議論しているのですか?
清水:コンセプトは2020年の東京オリンピック・パラリンピックを一里塚とした自動運転の普及シナリオです。ロードマップを作成し、様々な技術領域や社会システムを実施する企業や団体を公募し、予算を付けることがSIPの実務的な目的です。
編集部:どんなロードマップでしょうか?お台場が中心になりそうですね。
清水:はい、でもそれがゴールではないのでむしろ2020年から本格的に始まると考えるべきです。
編集部:壮大な国家事業のように思えますね。
(※)26年度のSIP対象課題は、以下の10項目
自動走行(自動運転)システム/革新的燃焼技術/次世代パワーエレクトロニクス/革新的構造材料/エネルギーキャリア(水素社会)/次世代海洋資源調査技術/インフラ維持管理・更新・マネジメント技術/レジリエントな防災・減災機能の強化/次世代農林水産業想像技術/革新的設計生産技術
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