日産 セレナe-POWER燃費レポート│待望のフルハイブリッドを搭載したセレナの実燃費を徹底検証(6/7)

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日産 セレナe-POWERとは

日産セレナは、トヨタ ヴォクシー&ノア&エスクァイア、ホンダ ステップワゴンとともに三強を形成する、現代の日本におけるファミリーカーの定番となっているミドルハイトミニバンだ。セレナは同クラスの単一車種としては、2017年でヴォクシーに続く僅差の2番手となる年間販売台数を記録したモデルでもある(日産の完成検査問題がなければ1位だった可能性も十分ある)。それだけにセレナは日産の国内販売において力が入ったモデルであり、完成度や使い勝手もよく煮詰められており、売れるのもよく分かる車であった。ただし、ライバル車に対し唯一足りないものが本格的なハイブリッドであった。

日産もその声に対応し、セレナの本格ハイブリッドの追加は現行モデルの開発当初から計画されており、今回加わったのがe-POWERである。

セレナe-POWERはその名が示す通り、2016年に「電気自動車の新しい形」というキャッチコピー(あくまでもハイブリッドカーなだけに紛らわしい言葉なのは表現なのは事実だが)で大ヒットとなった同社のコンパクトカー「ノート」と同じシリーズハイブリッドと呼ばれるシステムを使う。

シリーズハイブリッドとは発電用、駆動用の2つのモーターとエンジンを持つハイブリッドで、エンジンは発電専用に使うシステムだ。日本車ではノートとセレナのe-POWERの他に、ホンダ アコード、オデッセイ、ステップワゴンハイブリッド、三菱 アウトランダーPHEV(プラグインハイブリッドとなるが)で採用例がある。ホンダと三菱のシステムはスピードが上がってくると電気自動車の電費(エンジン車の燃費に相当)が低下しがちなのと同様に、電気自動車に近い部分があるシリーズハイブリッドの燃費も悪くなる傾向なのに着目し、クラッチを使いタイヤをエンジンで直接駆動するモードを持つのに対し、日産のe-POWERはそういったモードは持たないという違いがある。

セレナe-POWERのシリーズハイブリッドは、発売前は「エンジンがノートe-POWERと違うのではないか」という憶測も流れたが、市販車に搭載されたのは基本的にノートe-POWERと同じ1.2リッター3気筒エンジンを発電専用に使い、起きた電力により同社の電気自動車専用車リーフに搭載されるのと同じモーターでタイヤを駆動するというシステムだ。

しかし、車重1200kg程度のノートに対し、セレナは車重が1700kg台なだけでなく、フル乗車時には総重量が2トンを優に超えるため、発電専用エンジン(ノートの最高出力79馬力&最大トルク10.5kgmに対し、最高出力84馬力&最大トルク10.5kgm。高出力化に伴いオイルクーラーも装着される)と、モーター(ノートの109馬力&最大トルク25.9kgmに対し、最高出力136馬力&最大トルク32.6kgm)がそれぞれパワーアップされ、走行用バッテリー容量も大幅に拡大されている。

カタログに載るJC08モード燃費は26.2km/L(オプション装着により車重が1770kgを超えると24.8km/L)という、ハイブリッドのミドルハイトミニバンではトップの数値を誇り、4月から基準が厳しくなったエコカー減税においても取得税、重量の免税、登録翌年度の自動車税の75%減額が適応となる。

またセレナe-POWERは、ノートe-POWERと同様にノーマルモードに加えて、アクセルペダルを戻した際の回生制動を強くするのと同時に、アクセルを踏んだ際のパワーの出方を絞る方向にすることで燃費を向上させるエコモード、強い回生制動に加えパワーの出方がシャープになるSモード(Sはスポーツではなくスマートの意味/エコモードとSモードには強い回生制動によりアクセル操作だけで停止まででき、アクセル操作だけでの運転により疲労軽減などにつながるe-POWER Driveも含まれる)という走行モードを持つ。さらにセレナe-POWWRは強制的にEV走行を行うマナーモードと、バッテリー残量をエンジンによる発電で増やし深夜早朝の住宅地などでのEV走行を可能にするなどの用途に使えるチャージモードも備える。

なお、セレナe-POWERはハイブリッド化にあたり、走行用バッテリーを1列目シート下に置く関係で、従来セレナの大きな特徴であった2列目ベンチシートの中央部分の前後移動を可能とし、2列目シートを左右独立のキャプテンシート的に使えるものと、3人掛け(乗車定員8人)を両立する「スマートマルチセンターシート」ではなく、2列目シートは単純なキャプテンシート(乗車定員7人)のみの設定となる。

それ以外の使い勝手に関しては、大きなバックドアの上部だけを開閉できるデュアルバックドア、豊富なUSBソケット、2列目と3列目の乗員用の旅客機のようなテーブルなど、便利な機能が満載となっており、その点は従来のセレナを継承する。

また最近では、車を選ぶ際の重要なチェックポイントになることも多い自立自動ブレーキだが、単眼カメラから情報を基盤としたインテリジェントエマージェンシーブレーキ(単眼カメラというシンプルなハードウェアだけで自立自動ブレーキを完結しているのは、他社のもののハードウェアがステレオカメラなどと呼ばれる2つのカメラや、単眼カメラとレーザーセンサーやミリ波レーダーといった複数のハードウェアを使っていることを考えると凄いことだ)が全グレードに標準装備される。

現行セレナのインテリジェントエマージェンシーブレーキの性能は、国が行うJNCAPのテストの結果を見ると、対車両では時速50キロ、歩行者に対しても単純な飛び出しに対しては成人では時速60キロに対応。身長の低い子供に対しても時速40キロ、駐車車両のような遮蔽物からの飛び出しに対しても成人には時速45キロ、子供では時速40キロからの停止が確認されており、日本で販売される車の中でトップクラスの性能を誇り、e-POWERも同等の性能を持つことと思われる。

※インテリジェントエマージェンシーブレーキが作動する速度域は車両のような物体に対しては時速約10~80キロ、歩行者に対しては時速約10~60キロと公表されている。

さらに自立自動ブレーキとも関連がある運転支援システムも、単眼カメラから情報を基盤に日産が「ミニバンクラス世界初の高速道路同一車線自動運転技術」とアピールするプロパイロットがe-POWERにも上級グレードに設定される(ノートe-POWERの「電気自動車の新しい形」やリーフの「航続距離400km」と並んで、最近の日産の広告は誇大な感があるのも事実ではあるが)。プロパイロットには停止まで対応する先行車追従型のアダプティブクルーズコントロール(ACC)、車線の中央をキープし、コーナーでの操舵も行うステアリング制御などから構成され、運転による疲労軽減に貢献する。

セレナe-POWERのグレード体系は、大きくは標準ボディとミニバンでは人気のエアロボディのハイウェイスターに分かれ、それぞれ標準グレード(Xとハイウェイスター)と上級グレード(XVとハイウェイスターV)が設定される。またプレミアムなメーカーコンプリートカーとしてザックリとした言葉で言うならツーリング志向となるオーテックも設定されるが、実質的にガソリン車となるセレナに設定されるスポーツ志向のNISMOは今のところ設定されていない。

[Text:永田恵一]

セレナe-POWERの主要スペック

セレナe-POWERの主要スペック
ハイブリッド(e-POWER)

グレード

セレナe-POWER ハイウェイスターV

駆動方式

2WD(FF)

トランスミッション

価格(消費税込)

3,404,160円

JC08モード燃費

26.2km/L

全長

4,770mm

全幅(車幅)

1,740mm

全高(車高)

1,865mm

ホイールベース

2,860mm

乗車定員

7名

車両重量(車重)

1,760kg

エンジン

直列3気筒 DOHC ガソリンエンジン+ハイブリッドシステム(e-POWER)

排気量

1,198cc

エンジン最高出力

62kW(84PS)/6,000rpm

エンジン最大トルク

103N・m(10.5kgf・m)/3,200~5,200rpm

モーター最高出力

100kW(136PS)

モーター最大トルク

320N・m(32.6kgf・m)

動力用主電池

リチウムイオン電池

燃料

無鉛レギュラーガソリン

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永田 恵一
筆者永田 恵一

1979年生まれ。26歳の時に本サイトでも活躍する国沢光宏氏に弟子入り。3年間の修業期間後フリーランスのライターとして独立した。豊富なクルマの知識を武器に、自動車メディア業界には貴重な若手世代として活躍してきたが、気付けば中堅と呼ばれる年齢に突入中。愛車はGRヤリスと86、過去には日本自動車史上最初で最後と思われるV12エンジンを搭載した先代センチュリーを所有していたことも。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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