ホンダ 新型N-BOX(NBOX)燃費レポート|ノンターボ(NA)モデルの実燃費を徹底チェック!新型N-BOXの価値は燃費のみに非ず!?(2/3)
- 筆者: 永田 恵一
- カメラマン:永田 恵一/島村 栄二
ホンダ N-BOXとは?
ホンダという自動車メーカーは「20年に一度くらい訪れるピンチの時に大魔神のような救世主が現れ、経営が持ち直す」という都市伝説めいた伝統がある、時おり“火事場のバカ力”のような強烈な爆発力を発揮する企業である。
そのピンチはこれまで3回あり、1度目は初代シビックが救った1970年代初頭、2回目は初代オデッセイが救った1990年代中盤、そして3回目は2011年。このときは東日本大震災によりホンダの四輪開発における中枢である栃木研究所が大きな被害を受けた挙げ句、重要な生産拠点となっているタイ国の工場が洪水で壊滅的な状況となった。
その3回目を救ったのが初代N-BOXだ。2011年11月に登場し、爆発的なヒットでホンダのピンチを救い、売れ行きが鈍るモデル末期まで安定した販売をキープし、ホンダの国内販売において多大な貢献を見せる。
初代N-BOXは見ての通りのダイハツ タントが先駆車となったスライドドアを持つ全高の高い「使い勝手が良くて、とにかく広い軽乗用車」だ。車の土台となるプラットホームやエンジンなどすべてが新設計であったが、コンセプトに初代シビックや初代オデッセイのような新しさはなかった。
加えて、東日本大震災の被害による開発の遅れで特に初期モデルは急ごしらえな面も否めず、「出来が良かったか」と言われると疑問が残るのも事実であった(初代シビックや初代オデッセイという救世主も、後になるとそれほど出来が良かった訳でもなく、これはホンダの救世主のDNAのようだ)。
「なぜ売れたか?」が一見分かりにくい初代N-BOXであるが、機能面に加え、「ダイハツやスズキと同じような車がホンダにもあるならホンダの方が」と考えがちな消費者心理や、ホンダのブランドイメージの高さなどを理由に、冒頭に書いたように大成功を収めた。
その後、N-BOX以降ホンダは、N-ONEやN-WGNといったNシリーズと名付けた軽乗用車をリリースし、ホンダにとって軽自動車は国内販売の大きな柱に成長した。
ホンダ 新型N-BOXの概要
その初代モデルから約6年を経てフルモデルチェンジされた新型N-BOXは、特に標準モデルは細部までよく見ないとどちらが新型か見分けられないくらいスタイルの変化は少ない。しかし、新型N-BOXは旧型以上の広さや最高の軽自動車を目指し、新設計のプラットホームに大改良されたエンジンを搭載するという環境下の中で開発された。
まず新設計のプラットホームで注目したいのは、骨格の見直しや「薄くて強いので軽くできるが、その分成形の難しい」と言われる超高張力鋼鈑の拡大採用により、ボディ剛性や衝突安全性を大幅に高めながら、旧型N-BOXに対し約80kgもの軽量化を実現した点だ。さらにエンジンルームのコンパクト化などにより室内空間を拡大した上、シートのバリエーションには前席左右が繋がっているベンチシートに加え、新型N-BOXでは前席左右を独立させた上で助手席を57cmスライド可能にし、後席に設置したチャイルドシートに座っている子供の世話をする際などに便利な助手席スーパースライドシートも追加された。
エンジンはS07型という形式や660ccの3気筒である点こそ旧型N-BOXと同じであるが、燃費向上のため低速域のトルクを向上させるべくストロークを延長。ストロークを延長し、ボアを小さくすると高回転域の出力は出しにくくなるが、その点はホンダエンジンの基幹技術の1つであるVTEC(可変バルブタイミング&リフト機構)を排気バルブ側に採用することでカバー。エンジンのバリエーションはベースとなるNAエンジン(最高出力58馬力&最大トルク6.6kgm)と、NAエンジンに盛り込まれた改良に加えアクセル操作に対するレスポンスや燃費を向上させるため電動ウェイストゲートを採用したターボエンジン(最高出力64馬力&最大トルク10.6kgm)の2つだ。
トランスミッションは、全グレードに燃費に代表される高効率化が施されたCVTが組み合わされ、アイドリングストップも全グレードに装備される。結果JC08モード燃費はFF車でNAエンジン搭載車が27.0km/L、ターボエンジン搭載車が25.0から25.4km/Lという数値をカタログに載せるが、NAエンジン搭載車、ターボエンジン搭載車ともにダイハツ タントやスズキ スペーシアといったライバル車には見劣りする。
なおエコカー減税はNAエンジンのFF車が取得税40%、重量税50%減税、NAエンジンの4WD、ターボエンジンのFF、4WDが所得税20%、重量税25%減税が適用となる。
昨今、車を選ぶ際の重要なチェックポイントとなっている自立自動ブレーキに関しては、全グレードにホンダセンシングが標準装備される。新型N-BOXに搭載されるホンダセンシングは、前方を監視するミリ波レーダーと単眼カメラ、真後ろの障害物を検知するソナーセンサーからの情報を基に、衝突軽減ブレーキ、コンビニに代表される店舗などにギアの選択を誤り突っ込むという事故を防ぐ誤発進抑制機能、後方誤発進抑制機能、歩行者との接触を避けるためのハンドル操作を支援する歩行者事故低減ステアリング、路外逸脱抑制機能、30km/h以上の速度域で作動する先行車追従型のアダプティブクルーズコントロール(以下ACC)、高速道路などで車線の中央を走行するようアシストするLKAS(読み方はエルキャス、車線維持支援システム)、夜間ハイビームを積極的に使い良好な視界確保に貢献するオートハイビーム、先行車発進お知らせ機能、制限速度や追い越し禁止、一時停止、進入禁止という道路標識をメーター内に表示する標識認識機能という10個もの多彩な機能から構成される。
新型N-BOXに搭載されるホンダセンシングの衝突軽減ブレーキの性能は、まだ国が行うJNCAPのテストは受けていないが、同じシステムを使う同社のフリードが対停止車両では時速50キロ、歩行者に対しても遮蔽物のない日中であれば時速40キロからの停止が確認されており、新型N-BOXに搭載されるホンダセンシングも軽自動車用としてはトップの衝突軽減ブレーキの性能を備えていると思われる。また、ホンダセンシングの機能の1つ、付帯機能であるが、新型N-BOXにはコンパクトカーでも採用例は多くないACCが全車標準装備になったのは、N-BOXが軽乗用車ということを考えれば画期的である。
安全性といえば軽乗用車は、側面衝突の際に大きな効果を発揮するサイド&カーテンエアバッグがオプションでも選べなかったり、選べても非常に高価なケースが多いが(それでもホンダの軽乗用車は比較的選びやすかったが)、新型N-BOXでは多くのグレードの標準装備、オプションとなるグレードでも最安で4万3200円、右側自動ドアとセットになるケースでも9万7200円という比較的安価に選べる点も高く評価できる。
グレード体系は他の軽ハイトワゴンやスーパーハイトワゴンと同様に、大きくは標準モデルとスポーティな内外装を持つカスタムに分かれ、その中でNAエンジンとターボエンジン、標準のベンチシートとスーパースライドシートが選べるという具合だ。
気になる新型N-BOXの価格は、ベーシックなGホンダセンシングのFF車で138万5640円と、ダイハツタントやスズキスペーシアのベーシックグレードが128万円程度なのに比べると高く見える。しかし装備内容を比べると新型N-BOXはベーシックグレードでもホンダセンシング、LEDヘッドライト、オートエアコン、プッシュボタンスタートを含むスマートキーといった「軽自動車でも欲しい装備」が標準装備となっており、装備を加味すればライバル車よりむしろリーズナブルな価格設定だ。
※ただし上級グレードになると相対的な見方は別として、太っ腹にオプションを付けてしまうとアッという間に200万円を超えてしまう価格は絶対的には安いとはいえないだろう。
なお旧型N-BOXには、N-BOXをベースに床を斜めにして後席からラゲッジスペースに掛け車いすを積みやすくし、介護やボードを使い車中泊をしやすくした、N-BOX+とN-BOXの全高を下げ電動パーキングブレーキなどを装備しオーディオにもこだわった、高級軽自動車的な存在のN-BOXスラッシュという派生車種もあったが、現在N-BOXスラッシュは継続販売、N-BOX+は車いす仕様のみが継続販売される(2018年春に新型N-BOXに車いすが積みやすいスロープ仕様が追加されるので、いずれはN-BOXに統合されるのかもしれない)。
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