日産 新型セレナで1200kmの実燃費テスト!“辛口評価”にならざるを得ないその理由とは(2/2)

日産 新型セレナで1200kmの実燃費テスト!“辛口評価”にならざるを得ないその理由とは
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日産 セレナ  高速道路燃費テスト/安定しているが速く走らない、走れない

日産 セレナ 高速道路における実燃費:15.1km/L

走行距離:340.0km

“モノより思い出”のセレナだけに、高速で出かける機会も多かろう。そこで300kmほど高速を走らせてみた。もちろんプロパイロットもテストしたが、それは別項を参照いただきたい。

料金所を出て、一気に加速するときに大きな違和感を覚えることになる。とにかくアクセルレスポンスと人間の感覚に差が生じるのだ。ここで一気にパワーが欲しいと感じた時に出ず、CVTの悪癖が顔を出し、スピードが乗らないのだ。そして、更に踏み込むと想定以上にパワーが出て来るので、少々煩わしい。

また、高速巡行時、ロードノイズ、エンジンノイズがうるさく、久々にラジオのボリュームに手を伸ばしてしまった。これらの要因はボディ剛性の足りなさに尽きる。剛性を高め、かつ遮音材を適宜使うことでかなりの音を消すことが出来るだろう。せっかく家族皆で楽しいドライブに出かけようとしても、ぶんぶんうなるエンジンとゴーゴーとうるさい室内では、楽しさも半減だ。

これらを差っ引いて純粋に乗り心地を見てみると、これが意外といいのだ。

街中では柔らかすぎるかと思われた乗り心地だが、高速ではしなやかで、フロントシートの座り心地も悪くはない。何よりも驚かされたのが、車線変更時などで感じる重心の位置だ。通常ミニバンでは、重心位置が高く、ふらつくような印象を得がちだが、それをこのセレナでは全く感じず、スムーズに車線変更を完了できる。この印象はワインディングでも変わらず、乗員に不安感を与えることなく、スムーズに走行することが可能だ。

高速での燃費は15.1km/Lを記録したが、実はこのセレナ、そこそこのペースで走らせると一気に燃費が悪化するので注意が必要だ。

プロパイロット/操作は簡単、でもクルマ任せはダメ

さて、セレナ最大の特徴であるプロパイロットについて触れたい。その操作は簡単で、ステアリング右側のスイッチをオンにし、その左側に位置する方向キーを下側に押すだけでセットできる。

あとは、その方向キーを上下に構成して好みの速度を設定すればよい。テスターは多くの輸入車でこの手の安全運転支援システムを経験しているが、このプロパイロットの出来は“普通”であり、日産がCMで騒ぎ立てるほど素晴らしい出来とはいいがたく、何よりも“自動運転”技術というワードに引っ掛かりを覚える。

高速でも少しきつめのコーナー、例えば東名の鮎沢近辺ではセンターラインをトレースできずに解除になる。その際は警告音で知らせてくれるが、気づくのが遅れると少々危険だ。そういった意味でも“自動運転”というワードは使ってほしくない。

プロパイロットをテストする際は、95km/hにセット(100km/h制限の場所)し、走行車線をキープして行った。

そこでは2つの気になる点があった。まず、常に修正舵が当たって、小刻みにステアリングが動くのだ。一説にはプロパイロットが作動しているということをドライバーに認識させるのが目的だと聞くが、それは本末転倒だ。この機能の目的は安全に、かつ快適に走行することにある。しかし、このような状態ではかえって気が抜けず、疲労を覚えた。

この動作に関してテスターはこうも考える。実はこのセレナ、それほど直進安定性が高くなく、一方で車線の中央を走らせようというプロパイロットの機能がかち合い、その結果微修正をするために常にステアリグが小刻みに動くというものだ。

プロパイロットなしで自らステアリングを握っていても、フロア剛性の低さもあり常に修正舵は必要なので、この要因が大きいと思われる。

もうひとつは、速度回復の遅さだ。前方のクルマが出口に向かうなどで視界が開けた時に、そこから設定速度までの回復がとてもゆっくりで、後続車をイラつかせないか気になるほどなのだ。そこでつい自らアクセルを踏み込んで、エンジン音を我慢しながら希望速度まで回復させてしまった。

使い勝手/ドライバーは残念だが、家族皆は笑顔になれそう

家族皆で出かけることが多いミニバンなので、使い勝手について見てみよう。

とにかく非常に多くの小物入れやフックはあらゆるところにある。

USBソケットは前席、2列目、3列目合わせて5カ所あり、カップホルダーも数えきれないほどで、とにかく使い勝手に全ての力を注ぎ込んだ印象だ。その一例がデュアルバックドアにも表れており、これも非常に使いやすく、良いアイディアだと思われる。

また、フロントシート背面のテーブルにあるカップホルダーはあの有名なフライドポテトのケースがすっぽり収まるなど、細かい配慮が行き届いている。

2nd、3rdシートの操作は簡単で軽く、3rdシートの跳ね上げも女性でも十分行うことが出来るだろう。

しかし、ドライバーは少々冷遇されているかもしれない。どうしてこの位置にセットしたのか理解不能だが、シートヒーターのスイッチが、センタークラスターの一番下、カップホルダーよりも更に下に位置するため、かがまなければスイッチを操作できず、しかも、カップホルダーを使用時には、操作は不可能だ。

大型化されたナビ画面は太陽光の反射で見えなくなることが頻発。以前はここに映し出されたバックモニターはメータークラスター内に移動され、かつ、画面が小さくなり見難いことおびただしい。あくまでも主役は運転手ではなくその家族という割り切りなのだろうか。

短時間ながら2ndと3rdシートも試してみた。

2ndシートの出来はもう少しサイドサポートが得られれば申し分なく、座り心地も上々だ。足元も広々としている。しかし、視界という面ではフロントシートが目の前に立ちはだかりあまりうれしくない。

ヘッドレストに小穴が開いており、開放感があると日産は説明するが、そこに人が座れば意味がなくなる(ドライバーは常に座っているし)。また、路面のざらつきは常に伝わってくる。これは3rdシートも同様だ。

目の前にあるテーブルを開いてみると、カップホルダーをはじめいくつかの機能が設けられているが、その見た目をもう少しきれいに出来なかったものか。ユーザーはそういうところにも目は行くのだ。

また、荷室を大きく使いたくても、2ndシートの座面はたためないので、その分スペースを取られてしまうのは、歴代セレナに共通した残念なポイントだ。

3rdシートでは、排気音が気になるのは致し方ないが、シート座面が前後方向にフラットか、あるいは少し前下がりの印象で、しばらく座っていると尻が前に滑り出し不快だった。せっかく厚手のクッションを備え、リクライニング機能も追加されているのだから、もっと座り心地に注力してもらいたい。また、ホイールハウスのでっぱりも気になった。

新型セレナは多くのユーザー調査により、使い勝手やユーティリティが大幅に向上しており、それがセレナのセレナたる所以だろう。しかし、1台のクルマとしてみた時に、あまりにも詰めが甘いと言わざるを得ない。例えばCVTの制御の甘さやAUTO HOLDなどが代表例だ。

実はテスターがサラリーマン時代、先々代のC25セレナを社用車として頻繁に乗っていた記憶がある。それと比較して、新型セレナは使い勝手やユーティリティ性能は大幅に向上したが、走りに関してはC25から大きく進化したとは言い難いのが残念だった。

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内田 俊一
筆者内田 俊一

1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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