BMW Z4 Mロードスター 試乗レポート

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BMW車の『駆けぬける歓び』をさらに集大成と化したモデル

BMWが、いわゆる“ライトウエイト・オープン2シーター”というカテゴリーにブランニュー・モデル『Z3』を投入したのが1995年の事。その後もバリエーションの拡大が行われてきたZ3シリーズだが、1998年になってその頂点に置かれたのが初代の『Mロードスター』だ。あのM3から珠玉のような 3.2リッターの直6エンジンを移植されたこのモデルは、こうしてそのネーミング上でも「特別なモデル」として扱われる存在。1.4トンほどの車両重量にオーバー320psの心臓を組み合わせただけにその動力性能は素晴らしく、0→100km/h加速は5.4秒と発表された。

その後Z3は、車格全体を1ランク引き上げるカタチで2002年にデビューの『Z4』へとバトンタッチ。そして、2006年に再びそのシリーズの頂点に投入されたのがここに紹介の新型のMロードスターとなる。やはり最新のM3用を移植した心臓は、排気量は3.2リッターのままに343psとさらなる高出力を発生。それゆえに、車両重量は1485kgと“初代モデル”よりもやや増えたもののウエイト/パワー・レシオでは従来型をも凌ぐ優れた値。トランスミッションが5速MTから6速MTへと進化した事もあり、0→100km/h加速のタイムも5.0秒とやはり大きく凌ぐ結果が発表されている。

通好みの『M』専用デザインが与えられている

既存のZ4シリーズのマイナーチェンジとタイミングを共にしたデビューとなった新型Mロードスターのルックスは、当然この“新型Z4シリーズ”をベースとしたもの。ウインカー部分をクリア化したヘッドライト・ユニットや新しいリア・コンビネーション・ランプなどは、この新しいZ4シリーズと共通のアイテムだ。そんなMロードスターを“普通のZ4”と見分けるのは、クルマ好きにとってはそれほど難しい事ではないはず。エンジンの高さをクリアするために専用のバルジ・ラインが加えられたボンネットフードや下部の開口部を大きく採ったフロントバンパー、4本出しテールパイプの採用など、Mロードスターにはなかなか通好みの専用デザインがいくつかの部分に与えられているからだ。

一方、『M』のロゴ入りドア・シルプレートを跨いで乗り込んだドライバーズ・シートからまず目に入る専用のアイテムは、イグニッション・キーONと共に照明の入るホワイト目盛りのメーター類。フルスケール300km/hのスピードメーターがこのクルマのスピード性能の高さを無言のうちに物語り、エンジン暖気の進行と共にイエローゾーンが徐々に上方へと移行するフルスケール9000rpmのタコメーターは、温間時には8000rpmがレッドラインという設定とされている。

上質な走りを生むM社の拘り

マイナーチェンジを機にそのエンジンがマグネシウム・テクノロジー採用の最新ユニットへと換装された3リッター・モデルの力強い走りにも感心をさせられたものの、Mロードスターはそんな『3.0si』の動力性能すら霞んでしまうほどに鮮烈な走りのテイストの持ち主だった。総走行距離がまだ2000kmほどというテスト車はエンジンの回転フィールにもシフトフィールにも多少の「渋さ」が残っていたが、それでもアクセルの踏み込みに対するレスポンスのシャープさと加速の強力さはやはり250ccという排気量の差以上に別格の印象。重低音が効いた迫力のサウンドと共にぐんぐんと速度を増して行くさまは、「さすがは800万円を超す大枚を支払っただけの事はある」と多くの人を魅了するに違いない。

と同時に、強化型のサスペンションを採用したこのモデルのフットワークが生み出す快適性が、“標準車”のそれを凌ぐレベルにある事にも気が付いた。その要因のひとつはこちらが他のZ4シリーズには標準装備となるサイドウォールの硬いランフラット・タイヤは使用せず、パンクに対してはトランクルーム内に修理剤を積むという対応とした事にありそう。M5やM6など最新モデルも含め『M』の記号を与えられたモデルは、開発を行うM社が「ランフラット・タイヤや電動パワーステ、アクティブステアが生み出す性能は、まだ当社の基準に合わないから」と実は頑なにその採用を拒んでいる。このあたりの拘りもまた、より上質な走りを生む要因となっている可能性が強いというわけなのだ。

高価さも納得させる実力の持ち主

そんなMロードスターでも、実は気になる部分が皆無というわけではなかった。第一点は“Mスポーツ"のステアリング・ホイールのグリップ部分が(巨大なドイツ人の手を基準にデザインされたためか?)どうにも太過ぎ、終始理想的な握り感が得られなかった事。そして、専用デザインのフロントバンパー左右端がオリジナルのZ4用よりもさらに下方へとフラップ状に延長され、バンパー全体が樹脂の一体成型品という事もあって常に路面との接触の可能性に気をつかわされた事などだ。特に後者は、ちょっとした車止め用の縁石程度の高さでも接触の可能性は高そう。ドライバーの位置が「後輪直前」というZ4ならではのパッケージングもありボディ前端の感覚が掴みづらいので、このクルマの場合は「前向き駐車は禁物」という心構えで乗った方が良いかも知れない。

一方、M3 CSLと同様の“フローティング・コンパウンド・ブレーキ"の採用は嬉しいニュース。率直なところ、それでもポルシェ各車ほどの剛性感に富んだペダルタッチには及ばない印象は残るものの、全般に「動力性能に対してブレーキのキャパシティが不足がち」と思わせるモデルが少なくないBMW車の中にあっては、最も信頼感に足る効き味を提供してくれた一台であった事は間違いない。

Mロードスターは確かに高価な存在だ。が、そんな高価さが納得出来る実力をたっぷりとドライバーに“還元"してくれるのも、またこのモデルなりの特徴と言える。このところ業績絶好調が伝えられるBMWの美点は、『駆けぬける歓び』という例のキャッチフレーズが、実際のBMW車で分かりやすく演じられているという点にもあるはず。そんなBMW車の特長をさらに集大成と化したのが、このMロードスターというモデルでもあるのだ。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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