三菱SUV雪上試乗レポート／今井優杏(2/3)

8種類それぞれ、特性を生かせるよう設計された四駆システム

ここでつらつら論文のように書き綴ってもアレなので、簡単にその8種類の四駆システムを表にしてみた。赤文字の部分が今回、試乗の叶ったクルマだ。

最初は「え、そんなにヨンクの種類なんて要らないでしょう」とも思ったのだが、こうして見てみるとちゃんとそれぞれの役割があって、特性が生かせるように設計されているのである。

フラッグシップモデル「パジェロ」

表のとおりに順序を追って試乗した感想を述べたい。

まずパジェロだが、もうこれは別次元に面白い。さすがフラッグシップモデルだけあって、内装は応接間と見まごうばかりのゴージャスさなのだが、走り出したら、一見温厚そうな見た目に隠された獰猛さ、ワイルドさが顔を出す。だいたい、車重2トンを軽く上回る超・マッスルボディなんである。そんなのが雪の中でガウガウと走り回るのだ。楽しくないワケがない。

操作は古き良き時代のクロカンそのままにステアリングもペダル類もかなり鷹揚なのだが、四輪の制御技術はさすがに緻密だ。オフロードに関してはセンターデフ直結機能や副変速機のHi-Lo切替によってさらに走破性を高められている。

走行モードは四種類から選択出来る。普段用の2H（後輪駆動）、チョイ悪路用の4H（センターデフ付前後不当配分）、直結4WDの4HLcは前に進む方向の制御で、旋回力に欠けるものの豪快な四輪ドリフトなどが楽しめるモード。そして最もスリップしやすい泥ねい路面で威力を発揮する4LLcだ。

さすが世界の悪路を走破してきたパジェロだけあって、日本のいわゆる圧雪路面では基本的に4Hで充分である。さらにミラー路面など、雪が氷に変わるようなシーンでも次の手が用意されているのは心強い。

しかし、クルマ的に遊びというか走りというか、クロカンとして楽しめる要素がかなり強く残されているため、あんまり運転に自信のないような人に向けて作られているクルマでは決してないのも面白い点だった。特に旋回面ではラクじゃない。やっぱりパジェロはドライバーズカーなんである。

基礎体力の高い「デリカ:D5」、軽やかなハンドリングの「RVR」

続いてデリカD:5とRVRだ。

ドライブモードは3種類あり、「2WD」「4WD AUTO」「4WD LOCK」となっていて、シンプルに路面状況に合わせてセレクトすればいい。

普段は燃費に効果的なセッティングのFFベースなのだが、フロントがスリップしたり、加速時のフロントへの荷重が抜けやすいときには電子制御カップリングにてリアへ駆動を伝えてくれる。

まずD:5だ。…デカい。背が高い。こんなに不安定なカタチで雪道なんか走って（しかもクローズドコースだからそこそこ速度域も高いのに）コロンと転げたらどうしようという不安が一瞬ココロをよぎりはする。

しかし実際に乗り出せば、そのサイズ感から考えられないくらいにビックリするほど挙動がまとまっていた。一般道なら当然のことなんだけど、改めて雪道で乗るとその基礎体力の高さに驚く。路面はところどころがミラー状になり、グリップとスリップを繰り返すタイトなコーナーが出現するシビアな感じだったのだが、途中ある領域でコントロールを失っても、すぐにまたクッと雪面を捉えて挙動を立て直すのだ。

そしてRVRだが、実は今回の試乗会中、個人的にかなりの好印象を感じた。他のラインナップに比べて車体もちいさく、車重が圧倒的に軽いのもあってハンドリングが軽やかなのだ。旋回性能も気持ちいい。

同システムは旋回方向に効果的な4WDなので、山間部やワインディングの雪道によく遭遇する人は、こちらを選択するのが快適だ。

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