THE NEXTALK ~次の世界へ~ 三菱自動車 MiEV販売推進室長 山田健二郎 インタビュー(3/5)
- 筆者: 御堀 直嗣
- カメラマン:佐藤康彦
中古車の相場が、新車販売に関わってくる
軽商用バンのMINICAB-MiEV(ミニキャブ・ミーブ)が誕生してからは、とくに法人向けの販売に力を注ぐ必要が出てきた。電気自動車に関するさまざまな知識を学ぶ教育とは別に、法人向けとしてのリース販売の拡充も求められる。
【山田健二郎】本社の営業スタッフの人数が限られますから、法人向けに関してはオートリース会社の方々の力添えが不可欠です。オートリース会社には何百人という営業スタッフが居ますから。ここで、オートリース会社にきちんと電気自動車を理解していただくことの重要性をあらためて認識しました。
というのも、従来のガソリンエンジンの軽自動車では、カタログを渡すだけで特に説明の必要もない商品だったのですね、なかでも商用バンというのは。あとは、月々のリース料がいくらということで決まってしまう。ところが電気自動車の場合、単純にクルマとしての用途だけで比較すれば、リース料金がガソリンエンジン車より高くなって、なかなか販売に結び付きません。
電気自動車であるからこそ得られる付加価値を、きちんとオートリース会社が法人のお客様へ説明できないと、高いからやめた、安いガソリンエンジン車でいいという話になってしまいます。
電気自動車ならではの付加価値とは、たとえば、CO2の排出量に関して、カーボンオフセット(CO2の排出量を抑え、抑えられない分は何らかの埋め合わせをすること:筆者注)の効果がある点など、企業活動の中での利点を法人のお客様にちゃんと説明し、納得してもらう必要があります。
時代に即した環境適合企業である姿勢を示すため、電気自動車の利用が一役果たすことを説明することで、クルマとしての実用性だけでない利点を、リース料という価値に見出してもらう営業の仕方が、オートリース会社に必要になってくるということだ。同時にまた、月々支払うリース料を確定する際に、3~5年後のリースアップ(リース契約終了)時の残存価格の設定も、リース料金の高低を左右する。
【山田健二郎】電気自動車の新車価格の大きな要素を占めるのが、大量に搭載するバッテリーのコストです。そして、リースアップした際に、その電気自動車の残存価格がいくらであるのかというのは、大きな課題です。
一般的に、5年後の電気自動車のリチウムイオンバッテリーの性能は、およそ80%の容量が残っていると想定しています。ではその中古バッテリーの価値をどう見るかですね。
たとえば、単にバッテリーとしてビルの非常用電源などにリユース(再利用)すると考えるのか、もしくは電気自動車としてそのまま存続させることにより、非常用電源の役目に加え、日常的にはまだクルマとして走れるという機能も残存価値に認めるのかどうか?
09年のi-MiEV発売から間もなく3年が経ち、最初の中古車が出たとき、その価値をどう意味付け、価格を決めるかで、以後の中古電気自動車に対する相場が定まっていく訳です。ここが課題と言えば課題ですし、面白いといえば面白い。新しいビジネスの考え方が生まれてもいいはずです。
中古車価格の問題は、いずれ考えなければという悠長な話ではなく、リース販売をするには、新車販売時に既に考慮しなければならないものである。そこに、オートリース会社の工夫が活かされることになると、山田健二郎室長は言うのだ。
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