車線が無くても前車を追従!メルセデス・ベンツ 新型Eクラスに搭載された「ドライブパイロット」【徹底解説】(3/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:メルセデス・ベンツ日本
Eクラスに搭載された先進機能の目的は、あくまで「安全性の向上」
なお新型Eクラスのシステムは、話題性では運転支援のドライブパイロットが先行するが、最大の目的は「安全性の向上」だ。
緊急自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)を中核とする衝突回避の支援機能を進化させた結果、同じシステムを使って先進的なドライブパイロットを実現できた。この主従を逆転させて考えるべきではないだろう。
まずは基本的な安全装備のアクティブブレーキアシストだが、作動する速度域が幅広い。前方を走る車両に対しては時速7~250kmで作動する。静止車両は時速70km以下、歩行者に対しては時速60km以下なら衝突を防げる可能性がある。
交差点などで、互いの進路が交わる車両や歩行者との出会い頭による事故を防ぐ「飛び出し検知機能」も採用した。警報と併せて緊急自動ブレーキが作動して、時速70km以下では衝突被害を軽減。時速60km以下では未然に防げる可能性がある。
このほか時速20~70kmで車道を横断する歩行者などを検知した時に、回避操作を円滑に行えるよう操舵力を支援する機能も設けた。
ドライブパイロット動作中も常に「運転しているという自覚」が重要
以上のように新型Eクラスは、事故の被害を軽減したり、未然に防ぐ安全機能を大幅に充実させた。このあたりも日産のシステムとは異なる。
話をドライブパイロットに戻すと、2016年6月10日に掲載した「まもなく普及する自動運転の実際は進化したスーパークルーズコントロール」でも述べたように、あくまでも運転支援として注意しながら使いたい。常に作動する自動運転ではないからだ。
ただしこれには困難も伴うだろう。緊急自動ブレーキに頼って自分でブレーキペダルを踏まないドライバーはいないと思うが、ドライブパイロットは、運転を部分的に肩代わりする機能だ。
現在でも車間距離を自動制御するクルーズコントロールでは、車両側が「アクセルとブレーキ操作は、クルマに任せてください」と積極的に制御している。これにハンドル操作が加わると、手を添えていることが前提とはいえ、運転している自覚が大幅に薄れる心配がある。
居眠り運転の研究結果などによると、ペダル操作は覚醒度が低下しても影響を受けにくいが、ハンドル操作はおろそかになりやすい。つまりハンドル操作はデリケートで神経も使う作業だから、そこに支援が行われると、運転中の緊張感も削がれやすいわけだ。
そして制御が高度化して支援操作の正確性が高まるほど、高速道路などでは睡魔に襲われやすくなると思う。運転支援を備えないクルマでは運転中には必然的に緊張を強いられるが、支援があれば弛緩しやすい。従ってドライブパイロットのスイッチを入れている時でも、背もたれを寝かせたりせず、通常の正しい運転姿勢を取りたい。
靴底はペダルに向けて、ハンドルは正しい位置で保持する。「自己責任に基づいてドライブパイロットを監督する」心積りで、快適なドライブを楽しみたい。
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