マツダ『魂動』デザインのさらに一歩先の品格を目指した「越KOERU」とは(1/2)
- 筆者: 川端 由美
- カメラマン:川端由美/マツダ
マツダのデザインといえば、前田育男
魂動(こどう)”といえば、マツダと連想するほど、最近では定着してきた感がある。でも実は、マツダが新しいデザイン言語として”魂動”を発表したとき、世界からの視線は意外にも冷ややかだった。
2009年までマツダ・デザインを率いていたヴァン・デン・アッカーがルノーでさらに才能を開花させたこともあり、また久方ぶりに日本人デザイナーがトップになったこともあって、その後のマツダ・デザインがどうなるか? については、心配する声も少なくなかった。
しかし、新たにデザイン部門を率いた前田育男さんは、いい意味で期待を裏切ってくれた。2010年に”魂動”のデザインテーマを元に生み出された初のコンセプトカー「靭 SHINARI」は、固定観念を打ち破るだけの力強さがあった。
それ以降、前田さんのことを”ヴァン・デン・アッカーの後任の日本人デザイナー”と呼ぶ人がいなくなり、世界的にも「マツダのデザインといえば、前田育男」と言われるまでの存在になった。
既存のSUVやクロスオーバーとは異なる印象
その”魂動(こどう)”も、発表から5年が過ぎて、一つの区切りを迎えた感がある。プロダクトで見れば、ロードスターの発表を持って第六世代と呼ばれるラインナップがほぼ完成した段階に達した。
だから、「越 KOERU」を見た瞬間、前田さんはきっと自ら生み出した「魂動」を、このモデルで越えようと試みたんだろうなあ、と思った。
実際、「越 KOERU」のアピアランスから、これまでに「魂動」デザインとして表現されてきた遺伝子を踏襲しつつも、ひとつ先の時代を見つめた存在感を感じる。
人目でマツダとわかるシグネチャーウイングと切れ長のヘッドランプが組み合わされた顔立ちは、活き活きとした生命感にあふれる。LEDの光の輪が既視感のないフロントビューを生み出している。
全長4600☓全幅1900☓全高1500(mm)のボディサイズは、ミドルクラス・クロスオーバーに属するが、既存のSUVやクロスオーバーとは異なる印象を与える。
スリークなラインと抑揚のある面が融合して形作られる「越 KOERU」のスタイリングから、このクラスのクロスオーバーにありがちな威圧感や圧迫感といったものは、不思議と感じない。
むしろ、ボリューム感に軽重をつけることで生み出される動きのあるボディラインが、スピード感や存在感といったものを伝えてくる。
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