マツダ ロードスター パワーリトラクダブルハードトップ 試乗レポート

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あくまでも“クーペではなくロードスター”

“ユーノス”のブランドを名乗った1989年にデビューのモデルから数えればすでに3代目。そんな最新のマツダ・ロードスターに追加設定されたのが、流行のリトラクタブル式ハードトップを備えたニューモデルだ。敢えて“パワー”の文字を加えた長い名前を名乗る理由は「単なる“リトラクタブルハードトップ”がすでに登録をされていたため」でもあるという。ちなみに、より一般的に用いられる“CC”(クーペ・カブリオレ“という名称は、「どうにも見た目がアンバランスでカッコの悪いクルマが多かったので、絶対に使いたくなかった」と開発担当の貴島孝雄主査は述べている。

ところで、軽量こそがその車両キャラクターの大きな特徴であり、それゆえこれまではソフトトップに拘ってきたマツダ・ロードスターに何故今リトラクタブル式のハードトップなのか? そこには、今や欧米でのオープンカーのルーフは折り畳み式のハードトップが人気の主流であり、今後ユーザーの間口を広げ、より多くの人からの支持を受け続けるためには、「このタイミングでこうしたモデルを加える事は不可欠」という判断が働いた事が考えられる。それでも「ハードトップがあってもオープン時が本来の姿」と貴島主査は語る。あくまでも“クーペではなくロードスター”であるのがこのクルマというわけだ。

開発に課せられた“5つのチャレンジ”

ソフトトップに比べればどうしても重量増の避けられないリトラクタブル式ルーフを備えるモデルの開発に当たっては、開発陣は自らに“5つのチャレンジ”を課したという。それは、当然のごとく可能な限りの軽量設計を行うというタスクに加え、ロードスターとしてのバランスを決して崩さないスタイリング、トランクスペースに犠牲を強いないルーフ収納法、さらには世界最速のルーフ開閉時間の実現などであったという。そして、それらがひとつでもクリア出来ないのであれば「このプロジェクトは中止にしよう」という決意までを制定。「それらを満足させるための開発に時間が掛かり、結果としてソフトトップ・モデルの一年後の発売となった」のが真相という。

なるほど、そうした拘りの甲斐あり、そのルックスはソフトトップ仕様に決して見劣りしない魅力的なものに仕上がっている。ルーフ格納のためにリアデッキ部分は40mmほど高くなったものの、トランクリッドやリアフェンダー部分にも専用のリファインを施して、流れるようなベルトラインが特徴の“ロードスターらしさ”はしっかり踏襲。クローズ時のキャビン部分も極めてコンパクトで、むしろソフトトップ仕様に対して「また新たな種類のデザイン」を加えているのも、このモデルの大きな存在意義と言えそうだ。

公道での走行はソフトトップモデルとの差は感じられない

前述“5つのチャレンジ”のひとつとして「ソフトトップ仕様と変わる事なき人馬一体感の実現」という項目を加えた事もあり、ハードトップ仕様の走りのテイストは端的に言って、「ソフトトップ仕様と同様!」とまずはそう表現しても過言ではないものだった。

ルーフシステムの変更で重心高が数mmアップし、そうした重量や前後バランスの微妙な変化を補填する目的でサスペンションにもわずかなリファインを加え…と、詳しく見れば走りのテイストにも影響を及ぼしそうないくつかのニュースも見つける事は出来る。一方で、ルーフ収納のために拡大されたデッキ開口部に補強ブラケットを設け、リアデッキ前面の板厚を増すなどの補強策で、「ボディ剛性はソフトトップ仕様と同等を確保」というのもこのモデルだ。サーキット・コースを限界まで追い込む、とそんな走りをしてみれば、そこではより軽量な“オリジナル版”であるソフトトップ仕様に多少の分を見い出す事が出来るかも知れない。が、公道上を「ちょっとスポーティに気分良く飛ばす」とそうしたペースで走る限りは、両ボディには大差ナシ! とこんなコメントで紹介を出来るのが3代目ロードスターなのである。

多くの人に乗って貰うためのロードスター

今後の販売台数の比率は、「ソフトトップ仕様65%に対してハードトップ仕様は35%」と、そうした見方を採っているとマツダでは語る。が、「それはいずれ逆転する」とぼくは考える。何故ならば、快適性、耐候性、防盗性……と、様々な角度からの実用性を考慮してみれば、多くの人々はハードトップ仕様の方に軍配を上げるに違いないから。本来の開発コンセプトをより色濃く具現させているのはソフトトップ仕様の方、といくら声高に叫んでみたところで、今という時代はきっとそうした結論を出すはずだ。

確かに、ストイックなロードスター・ファンの中には、折り畳み式の、それも電動パワーで作動をするルーフとは何と邪道な、と眉をひそめる向きもあるだろう。が、そんな意見を述べる人が満足出来るモデルを提供し続けてもらうためには、マツダ・ロードスター全般を出来るだけ多くの人に購入して貰う必要があるというのも真理であるはずだ。

「実はハードトップ仕様は3代目開発の当初から考えていたもの。が、だからと言って全てのモデルをハードトップで統一しようと思った事は一度もなかった」と貴島主査は語る。そう、開発陣の思いとしても、ソフトトップ仕様がこれからも存在するために必要だったのがこのハードトップ仕様であるという事。時代の要請に応え、間口を広げてより多くの人に乗って貰うためのロードスターこそが、こちらの仕様であるというわけなのだ。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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