マツダ MPV 試乗レポート

国内専用に開発、ミニバンの本来の機能を充実

マツダの主力モデルとなる上級ミニバンのMPVは比較的長めのサイクルでモデルチェンジされており、今回のモデルが3代目。従来のモデルはミニバンに初めて乗るユーザーが主なターゲットだったが、今回のモデルではミニバンからミニバンに代替するユーザーを意識して開発したという。それだけに単に室内が広くて多人数乗車が可能というミニバン本来の機能を備えるだけでなく、走りの性能にも優れたミニバン目指したとのこと。

ボディサイズは全長と全幅を拡大しながらも低床プラットホームによって全高をやや下げるとともに、従来に比べて100mmも長いロングホイールベースを採用することよって新しいパッケージングが実現した。

今回のモデルは国内専用に開発されたこともあって、搭載エンジンは直列4気筒2.3LのMZRエンジンだけに絞られ、自然吸気仕様とターボの2機種が搭載される。自然吸気エンジンのFF車には電子制御4速ATが、またターボ仕様車と4WD車には電子制御6速ATが組み合わされる。

外観も内装も様変わり

基本的にはミニバンのデザインながら、全高を抑えてホイールベースを延長した新しいパッケージングによって、外観デザインもこれまでとは違ったイメージを与えるようになった。全高の下げたことでバランスの良さを感じさせるようになり、ホイールベースの延長はタイヤを四隅に配置した新鮮なデザインイメージが表現されている。

インテリアでは室内空間の広さがまず特筆される。ホイールベースの延長が大きく効いたのがこの部分だ。2列目のシートは基本的には独立したキャプテンシートの形状ながら、前後左右にスライドさせることができ、左右にスライドさせて密着させた状態では3人が座れるため乗車定員は8名となる。ただ、2～3列目のシートの中央には3点式のシートベルトが用意されない。

3列目のシートは6：4分割可倒式で、簡単な操作でフラットなラゲッジスペースを作ることができる。また大容量のアンダートランクも用意される。

運転席回りの雰囲気は、立体的にデザインされた青いメーターパネルが斬新な印象を与えるが、四角いデザイン処理がなされたインストのセンタークラスターは、ちょっと古い印象もある。

さすが“ズーム・ズーム”のマツダ・カー

新型MPVは取り敢えず2WD車だけが発売され、ターボ仕様車や4WD車は3月に発売になるとのこと。今回試乗できたのも自然吸気エンジンを搭載した2WD車だけだ。

MPVに乗って走り出すとすぐに「おっ、これは違うな」という印象を受けた。フラットな乗り味を感じさせるしっかりした感じの足回りが、従来のモデルとは明確に違っているからだ。床面を下げて全高を下げたことなどが影響して重心高が下がっているので、コーナーでの姿勢も安定していてミニバンらしからぬ乗り味を感じさせる。

マツダのキャッチフレーズである“ズーム・ズーム”に基づいてスポーツカーの発想でミニバンを作ったというCMコピーも、あながちオーバーではないように思えた。

搭載される直列4気筒2.3Lエンジンは、カタログデータなどを見ると従来のモデルと大した違いはないようだが、実際に乗ってみると走りのフィールに大きな違いがある。レスポンスの良さ、吹き上がりの軽快さ、静粛性の高さなど、いずれも従来のモデルに比べて大きく進化しているからだ。

強いて難点を上げるなら、2WD車にも6速ATを設定して欲しかった。マニュアル操作が可能なタイプだけに、余計に4速ATでは不満を感じる部分がある。

さらに楽しみなターボ車

まだターボ車に試乗していないのて単純に判断できないが、自然吸気エンジンの2WD車であってもMPVの走りが大きく進化しているのは確か。安定感に優れた走りは十分に評価できるものだ。一般のユーザーには実用性能やリーズナブルな価格から、2WD車の23Cがお勧めモデルになる。

外観にこだわるユーザーなら23Cスポーティパッケージを選べば良いが、主に外観の違いによって12万円ほどの価格差があるのをどう見るかで判断が分かれるだろう。

残念なのは、横滑り防止装置のDSCがターボ車には標準で装備されるのに、自然吸気エンジンの搭載車には設定もされていないこと。当然ながら早期に全車標準にすることが望まれるし、それがすぐにできないならオプション設定でも良いから選択できるようにすべき。ついでにいえば、もうひとつの重要な安全装備であるSRSカーテンエアバッグも全車標準にするのが良いと思う。