MAZDA3 スカイアクティブ X 遂にお出まし! MAZDA 3(欧州仕様)海外試乗

自動車研究家が一足お先にスカイアクティブ X搭載車に試乗してきた!

日本でも発売が開始されたアクセラ改め「マツダ3」。筆者はクローズドコースで行われた国内試乗会には参加できていないが、今年の1月にアメリカ・ロサンゼルス近郊での海外向けモデル(欧州仕様2.0L+Mハイブリッド、北米仕様2.5L-NA)試乗済みである。

その時の記事を振り返ると、速度域や走るステージを問わず、滑らかな挙動、そして違和感のない走りを高いレベルで実現したシャシーに対して、パワートレインは「よく言えば“必要十分”だが、本命のスカイアクティブ Xに期待したい」と書いていた。

日本ではマツダ3本命のスカイアクティブ X発売予定は2019年10月となっているが、今回欧州への導入に合わせてドイツで開催された国際試乗会に参加し、一足お先に試乗を行なってきた。なお試乗車はパイロット生産車両と呼ばれる量産同等のプロトタイプである。

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スカイアクティブ Xは内燃機関の究極の姿

改めて、スカイアクティブ Xは何物なのか?

簡単に説明すると、ガソリンと空気の混合気をディーゼルのようにピストンの圧縮により自己着火させて燃焼させる「圧縮着火エンジン」である。

燃費・トルク・応答性の良さはディーゼル並み、出力、伸びの良さ、排気浄化性はガソリン並み…とガソリン/ディーゼルの良い所取りの性能を持つことから「内燃機関の究極の姿」と言われる。

世界の自動車メーカーで開発が行なわれてきたが、圧縮着火エンジンを実用化させる大きなハードル「燃焼可能な回転・負荷が限られている事」と、「圧縮着火と火花着火の切り替えの難しさ」は実用化の大きな壁となった。しかし、マツダは独自の燃焼方式「SPCCI(火花点火制御圧縮着火)」を用いて、この課題を克服。世界で初めて実用化に成功したのだ。

根本は至ってシンプル

そんなスカイアクティブ Xだが、その根本は「点火」と「噴射」と言うガソリンエンジン本来の機能を研ぎ澄まし機能を統廃合して生まれた技術。ハードに関しては、大ざっぱに言うとガソリンエンジンの延長戦上…と言った感じで非常にシンプルである。

基本部分はスカイアクティブ Gをベースに、「新形状ピストン」や圧縮着火をサポートする「超高圧燃料噴射システム」、より多くの空気を取り入れる「高応答エアサプライ」、高応答ISGを採用した「24Vマイルドハイブリッドシステム(Mハイブリッド)」、異常燃焼を制御するリアルタイム補正や「筒内圧センサー」などがプラスされる。

欧州仕様のスペックは直列4気筒で排気量は1998cc、圧縮比はガソリン車最高の16.3、最高出力は132kW(180ps)/6000rpm、最大トルクは224Nmを発揮。トランスミッションは6速MT/6速AT、駆動方式はFF/AWDと豊富なラインナップ。気になる燃費はWLTPモードで5.8L(MT)<6.3L(AT)>/100km(およそ17.2km/L<15.9km/L>)、CO2排出量は122(MT)<136(AT)>g/kmとなっている。

欧州の“リアルワールド”で実力を試す!

今回試乗したマツダ3 スカイアクティブ Xは、ファストバックの6速MT/6速AT(共にFFモデル)。試乗ステージは、ドイツの古き良き町並みが残る田舎町であるタウヌスの市街地とアウトバーンを組み合わせた、欧州の“リアルワールド”だ。

まず試乗前にクルマをチェック。スカイアクティブ Xである証は、リアの「SKYACTIV X」のエンブレム、インテリアのセンターディスプレイに表示されるSPCCIのインフォメーションの2点くらいで、ガソリン/ディーゼルとの視覚的な違いは間違い探しレベルだ(笑)。個人的には、世界初の圧縮着火エンジン搭載車を所有する喜びを視覚的にも感じられるような「プラスα」が欲しい…。

第一印象は…割と普通!?

スタータースイッチを押すとわずかなクランキングと共にエンジンが始動、静かにアイドリングを始めた。圧縮着火エンジンの第一印象は“普通”だった(笑)。

走り始めると、やや低音を聞かせた雑味のないサウンド、メカニカルサウンドが少なめで抵抗感が少なそうな摺動部、そして滑らかに吹け上がる回転フィールに、高度にバランス取りされた“高精度エンジン”のような繊細さを感じながらも、ガソリン/ディーゼルと似て非なる不思議な感覚に気が付いた。

走って感じたマツダの出した“答え”

具体的に言うと、ゼロ発進時にアクセル操作に対して素直にスッと前に出る応答性の良さは「ディーゼル」、市街地などではドーピング感が少ないフラットなトルク感が過給が控えめの「ライトプレッシャーターボ」、アウトバーンの無制限区間でのレッドゾーンの6500rpmまでスッキリと綺麗に吹け上がるレスポンスの良さは「ガソリンNA」と、様々なエンジンの長所が融合しているのだ。まさに「違和感のない違和感」である。

ちなみにSPCCI燃焼時はセンターディスプレイに表示されるSPCCIロゴがグリーンに点灯する。乗る前に高回転時や高負荷時は火花点火に切り替わると説明されたが、今回の走行パターンでは点灯率はほぼ100%でSPCCIの圧縮着火領域の広さを実感できた。

口の悪い人はエンジンの実力がないので「高応答エアサプライ」や「Mハイブリッド」を併用して補っていると言うが、どちらも出力のアシストではなく、滑らかなフィーリングを実現させるために活用する。

ちなみに高応答エアサプライは理想の燃焼のための空気量のコントロール、Mハイブリッドはアイドルストップからの復帰やシフトアップ時のトルク変動を抑えるため(アシスト量はkW以下)だ。

このようにスカイアクティブ Xの全域でドーピング感のない力強さとフラットな特性は、マツダが目指す「滑らかな走り」に対する答えの一つと言っていい。

しかし決定打に欠けるのもまた事実

しかし厳しい事を言えば、ライバルとなる小排気量ターボやハイブリッドに対する優位性は? と問われた際、現状では「決定打に欠ける」となるのも事実である。

例えば、180ps/224Nmのスペックに対してもう少し力強さが欲しいと感じたし、燃費はアウトバーンを元気に走らせたペースでMT/AT共に6.5~7.0km/100km(およそ15.4~14.3km/L)と走りと燃費のトレードオフが少ない点は評価できるが、絶対的な数値として見てしまうと…。

これらはエンジンの問題と言うよりもトランスミッションの影響が大きい。MTは自分でシフトを選択できるので、スカイアクティブ Xの旨みを活かし小気味よく走らせることが可能だが、6速ATはステップ比が広い上にビジーなシフト制御なのでスムーズさに欠け、「滑らかな走り」の実現に対してはやや足を引っ張ってしまっている。マツダは「多段化の必要はない」と言うが、筆者は多段化で動力性能やドライバビリティ、さらに燃費も大きく化けるのではないか…と思っている。

ちなみに今回はパワートレインの話に注力したが、走る・曲がる・止まる全ての領域で「滑らかな走り」を目指す上でのパワートレイン/シャシーのバランスと言う意味では、スカイアクティブ Xモデルはマツダ3ベストと言っていいと思う。

スカイアクティブ Xはマツダが目指す“夢”の始まり

結論、スカイアクティブ Xは扱いやすく、程よいパフォーマンス、高い動的質感、そして官能性をバランス良く備えた「究極の実用エンジン」と呼ぶのが最もふさわしい。

スカイアクティブ Xを「夢のエンジン」と言う人もいるが、筆者は「夢の扉を開けたエンジン」だと認識している。そういう意味でも、かつてロータリーエンジンがそうだったように今後の進化・熟成にも期待したい所である。

[筆者:山本 シンヤ/撮影:マツダ]

MAZDA 3(ファストバック/欧州仕様) 主要スペック
車種名MAZDA 3(欧州仕様)

グレード

スカイアクティブ X

全長×全幅×全高

4,460mm×1,795mm×1,435mm

ホイールベース

2,725mm

駆動方式

2WD

エンジン種類

直列4気筒

総排気量

1,998cc

エンジン最高出力

132kW(180PS)/6,000rpm

エンジン最大トルク

224Nm/2,000rpm

トランスミッション

6速MT/6速AT

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山本 シンヤ
筆者山本 シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し。「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“解りやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。西部警察は子供時代にリアルでTV放送を見て以来大ファンに。現在も暇があれば再放送を入念にチェックしており、当時の番組事情の分析も行なう。プラモデルやミニカー、資料の収集はもちろん、すでにコンプリートBOXも入手済み。現在は木暮課長が着るような派手な裏地のスーツとベストの購入を検討中。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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