THE NEXTALK ~次の世界へ~ マツダ 執行役員 パワートレイン開発本部長 人見光夫インタビュー(3/5)

THE NEXTALK ~次の世界へ~ マツダ 執行役員 パワートレイン開発本部長 人見光夫インタビュー
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なぜ、マツダだけが高圧縮比を実現できたのか

では、なぜ、世界の自動車メーカーはこれまで高圧縮比エンジンに取り組まなかったのか。

それは、高圧縮比には負の要素が立ちはだかっていたからだ。ある限度(圧縮比10.0前後)を超えて高い圧縮比にすると、ノッキングという異常燃焼を起こし、エンジンの力が出にくくなってしまうのである。その難問解決に、これまで世界の自動車メーカーの腰が引けていたと言える。

なぜノッキングは起こるのか?

ガソリンは、石油燃料の中でもっとも揮発性が高く、燃えやすい。燃えやすいから、瞬間的に燃え広がり大きな力を出せる。しかし燃えやすいために、圧縮比を高め、空気との混合気の温度が上がると、エンジン内でまだ燃えて欲しくない段階で早く火が点いてしまう。キンキンというノッキング音は、勝手に燃え上がった火の手の音だ。その点、ディーゼルエンジンで使う軽油はガソリンより燃えにくいので、高い圧縮比にしても勝手に燃えださず、ピストンがちょうどシリンダーの頂点に達したとき、いよいよ燃えて、適切なタイミングでエンジンに力を与える。

ディーゼルエンジンの燃費が良いのは、ガソリンエンジンより圧縮比が2倍近くも高いからだ。

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【人見光夫】損失を減らすための7つの因子という考え方は、私のエンジン技術者人生の集大成といえるものです。

入社以来、私は永年にわたりエンジンの先行開発に関わってきました。先行開発では、市販車のエンジン開発のように新車が出れば一つの成果が出るというわけではなく、研究していてもきりがないので、達成感が薄いというか、どこかむなしい気分だったのですね。エンジン技術が実際いくつあるのか、千なのか万なのかはわかりませんが…そのうちのたとえば十個くらいしか自分は携われないかもしれない。それで私の技術者人生は終わってしまうのか?と。

世界には、技術者の数だけ技術提案があると言ってもいいでしょう。そこで、自分がやってきたことを含め、世界の技術者の仕事はどういうことであるのか、一度整理してみようと思い分類してみたのが、この7つの因子です。それぞれのエンジン改善技術が何を目指したものであるかを区分けしてみると、世の中のあらゆるエンジン技術が、この7つの因子に集約されることがわかりました。こうして、エンジンの効率改善とは、「損失の低減である」という結論に達したのです。

以後、世界でどのような新技術が開発されようと、気にならなくなりました。自分は「ひたすら損失の低減に邁進すればいいのだ」という自信を持てたのです。それが、究極への道であると。

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圧縮比を高めていくと、ノッキング(異常燃焼)によってトルク(エンジンの力:筆者注)が下がっていくと考えられていました。もちろん実験をしてみればその通りの結果が出ます。ところが、圧縮比13.0の段階で下げ止まるのです。低温酸化反応(点火プラグで着火する前に、ガソリンの分子結合が切れて生じる熱:筆者注)によって、圧縮比が13.0以上に高くなると、トルクの落ち込みがおさまり、ほぼ横ばいになることがわかりました。下げ止まるならば、そこからトルクを取り戻す手は施せると私は考えたのです。

下がったトルクを補えると考えた裏付けとして、私は、入社以来、エンジンの吸気系と排気系の研究を永くしてきましたので、吸・排気管の長さや径を変えると、トルクが変動し、トルクカーブ(エンジン回転数の上下に対しトルクが増減する様子:筆者注)をコントロールすることに自信がありました。これを高圧縮比に組み合わせれば、トルクの回復に見通しが立つ。

それから、コンピュータ制御です。これまでのエンジンで使ってきたコンピュータ制御ではなく、ストラテジーをすべて一からやり直し、従来にない高圧縮比を実現する新しいアルゴリズム(解決の手順:筆者注)にしました。 ただし、本当に新しいアルゴリズムができるのかどうか?当初それはすごく不安でした。けれども、やらなければ高圧縮比エンジンとしながら、ドライバーの意思を精度よく正確に駆動力(アクセル操作に応じた加速:筆者注)とすることができません。

制御の基本機能に立ち返って取り組みました。高圧縮比の実現と、制御ストラテジーの一からの開発という二つの柱があれば、燃費改善と性能向上の両立は可能だという思いは、常に私の頭にあったのです。

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御堀 直嗣
筆者御堀 直嗣

1955年東京出身。自動車ジャーナリスト。玉川大学工学部機械工学科卒業。1978年から1981年にかけてFL500、FJ1600へのレース参戦経験を持つ。現在ではウェブサイトや雑誌を中心に自動車関連の記事を寄稿中。特に技術面のわかりやすい解説には定評がある。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。また現在では電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副会長を務める。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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