マツダのクルマ造りは高齢ドライバーの事故防止にも有効!?(1/2)

マツダのクルマ造りは高齢ドライバーの事故防止にも有効!?
「リア・クロス・トラフィック・アラート(バックで出庫時、後ろを車両が通るのを警告する機能)」/テスト車両:マツダ デミオ(画像中央の車両) 「ブラインド・スポット・モニタリング(サイドミラーの死角にいるクルマの存在を警告する機能)」/テスト車両:マツダ デミオ(画像右の車両) 「AT誤発進抑制制御(ブレーキとアクセルの踏み間違え防止機能)」/テスト車両:マツダ CX-5 カメラで前方の歩行者を認識して自動ブレーキ「アドバンスト・スマート・シティ・ブレーキ・サポート(アドバンストSCBS)」/テスト車両:マツダ CX-5 「リア・クロス・トラフィック・アラート(バックで出庫時、後ろを車両が通るのを警告する機能)」/テスト車両:マツダ デミオ(画像中央奥の車両) マツダ デミオに搭載されている「リア・クロス・トラフィック・アラート(バックで出庫時、後ろを車両が通るのを警告する機能)」 マツダ デミオに搭載されている「リア・クロス・トラフィック・アラート(バックで出庫時、後ろを車両が通るのを警告する機能)」 「ブラインド・スポット・モニタリング(サイドミラーの死角にいるクルマの存在を警告する機能)」/テスト車両:マツダ デミオ(画像右の車両) 「ブラインド・スポット・モニタリング(サイドミラーの死角にいるクルマの存在を警告する機能)」/テスト車両:マツダ デミオ(画像右の車両) 「ブラインド・スポット・モニタリング(サイドミラーの死角にいるクルマの存在を警告する機能)」/テスト車両:マツダ デミオ(画像右の車両) 「ブラインド・スポット・モニタリング(サイドミラーの死角にいるクルマの存在を警告する機能)」/テスト車両:マツダ デミオ 画像ギャラリーはこちら

マツダが考える安全で楽しいクルマ社会

最近は高齢のドライバーによる交通事故が頻繁に報道されているが、警察庁がまとめた交通事故統計によると、65歳以上の高齢者を含めて交通事故の死者数は減少傾向にある。1970年の1万6765人をピークに減少を続け、2016年は3904人であった。今は1970年の23%で、大幅に減っている。

ただし65~69歳の高齢ドライバーの死者数に限ると、2014年から増加傾向だ。高齢者が当事者になった事故が増えているのは、過剰に扱われているためではない。しかも今後は、高齢ドライバーの事故がさらに増える可能性が高い。

そうなる理由は、第一次ベビーブームで1947年~1949年頃に誕生した「団塊の世代」にある。人口が多く、なおかつ運転免許の保有率も高い。この世代は日本の乗用車の保有台数が時期に急増した1968年前後に成人になったからだ。

1966年にはトヨタ カローラと日産 サニーの初代モデルが発売され、1968年にはトヨタ コロナマークIIや日産 ローレルが登場。1969年になると日産 スカイライン2000GT-R、いすず ベレット1600GT-R、1970年にはトヨタ セリカ、三菱 ギャランGTOも投入され、短期間で商品力の優れた日本車が急増した。この時期に20歳前後になれば、新車の購入は無理でも、せめて運転免許は欲しいと考えるだろう。

つまり運転免許を当たり前に所有するようになった最初の人達が「団塊の世代」だ。この世代が今では70歳を迎えようとしている。

日本が経験したことのない「高齢ドライバー時代」

マツダ 安全技術体験レポート/渡辺陽一郎

運転免許統計を見ても、2016年末の時点で、65~69歳は運転免許保有者全体の9.6%を占める。それより高齢のユーザーを含めた65歳以上であれば21.5%だ。また60~64歳は8.3%、55~59歳は8.2%と続くので、今後は運転免許を持った高齢者が増える。それは、日本が経験したことのない「高齢ドライバー時代」を迎えるということだ。

そのために運転免許の返納が奨励される傾向も見られるようになった。「事故の加害者になる前に運転をやめる」というドライバーの判断は尊重すべきだが、自動車業界としては情けない話だろう。ユーザーの体力が下がり、いよいよ自動車の利便性、快適性が発揮される時になって、「運転をやめます」と言わせてしまうのだ。これでは高齢ドライバーに申し訳ができない。

自動運転になれば解決できる課題だが、市街地も含めた完全な自動運転が実現するのは遠い将来だ。当分の間は安全装備と、この機能を応用した運転支援の進化が続く。そこに高齢者への対応も組み込み、なるべく長期間にわたり、安全に自動車を使っていただきたい。

以上のような事情も踏まえて自動車メーカーは安全対策に取り組むが、ごく当たり前の基本に忠実なクルマ造りが、事故防止に役立つことも多い。その典型的な例が、マツダの安全取材会で明らかになった。

ペダル配置の最適化で、アクセル・ブレーキの踏み間違い防止を促す

マツダ 新世代商品群

ミドルサイズ以下の車種は、今は大半が前輪駆動を採用する。そのメリットのひとつに優れたスペース効率があり、室内を拡大させやすい。

特にエンジンを横置きにすると効果的で、前輪とペダルの間隔が近づく。右側に運転席のある日本車では、前輪を収めるホイールハウスを避けるため、ペダルを少し左寄りに配置する車種が多い。そうなるとドライバー/ハンドル/ペダルが直線的に並ばず、足を左側に捩る姿勢になる。

今のマツダはドライバーが車両と一体になった「人馬一体」の感覚、つまり運転の楽しさを重視するから、この体の捩れは避けたい。

「高齢者疑似体験セット」を装着し、旧世代モデルと新世代モデルの乗車・操作感覚を比較/テスト車両:アクセラ(現行モデル)

そこで空間効率では不利になるが、前輪を前に押し出し、なおかつペダルとドライバーは後ろ寄りに配置して、ペダルを右側に寄せるようにした。

例えば現行マツダ デミオは、先代型に比べるとペダルが20mm右側にあり、アクセルペダルは踵を支点に操作しやすいオルガンタイプとした。

この考え方は、スカイアクティブ技術をフルに使う先代マツダ CX-5以降のマツダ車(OEM車を除く)「新世代商品群」では共通化され、アクセルペダルの左端とブレーキペダルの右端の間隔も、おおむね70mmで統一された。コンパクトなデミオからLサイズのマツダ CX-5まで、ドライバー/ハンドル/ペダルが直線的に並ぶ配置と運転姿勢は基本的に共通だ。

「高齢者疑似体験セット」を装着し、旧世代モデルと新世代モデルの乗車・操作感覚を比較/テスト車両:先代アクセラ

ペダル配置の最適化は「人馬一体」の運転感覚を目的にするが、マツダによると、ペダルの踏み間違い事故も大幅に減ったという。マツダ アクセラやマツダ アテンザの新旧モデルについて事故の発生件数を調べたところ、新型は先代型に比べると、ペダルの踏み間違い事故が86%減少したとのことだ。

事故を抑制できた原因がすべてペダル配置の変更に基づくとはいえないが、86%となれば、相応の効果を上げたと考えて良い。

高齢者のペダル操作ミスによる交通事故が増えていることもあり、今回の安全取材会では、体を高齢者に近い状態にして新旧アクセラとデミオでペダルの操作性を比べた。

擬似高齢者装備で、ペダル操作を体験

「高齢者疑似体験セット」を装着し、旧世代モデルと新世代モデルの乗車・操作感覚を比較

右足にはギブスを付けて足の動きを妨げ、柔らかく厚底のサンダルを履く。ジャケットも着用して、1kgのウエイトを胸の左右と腰の左右に合計4個(4kg)収めた。胸にウエイトが入ることで前傾した姿勢になりやすい。さらに白内障を模した風景が黄色に見えて視野の狭まるゴーグルも着用する。

シミュレーションは車両を停止させた状態で行ったが、後退時を想定して後ろを振り返り、障害物を発見してアクセルからブレーキペダルに足を移す作業を行った。

「高齢者疑似体験セット」を装着し、旧世代モデルと新世代モデルの乗車・操作感覚を比較/テスト車両:先代アクセラ

ギブスの装着とサンダル履きで右足の動きと感覚が鈍くなり、旧型の軽い吊り下げ式アクセルペダルでは、踏んだ時点から操作が曖昧になりやすい。徐行時の細かな速度調節も新型に比べると難しい。

アクセルからブレーキペダルへの踏み換えは、床につけた右足の踵を支点にツマ先を左へ回転させて行うが、現行型の70mmの間隔は適度で滑らかに操作できた。旧型は少し引っ掛かる。

「高齢者疑似体験セット」を装着し、旧世代モデルと新世代モデルの乗車・操作感覚を比較/テスト車両:先代アクセラ

そして旧型はペダルが新型よりも左側に装着されるから、上半身を後ろに向けると、体の捩れ方がさらに大きくなる。新型はペダルの踏み換えも含めて操作全体にメリハリがあり、足の動きを抑制された状態では、誤操作の防止効果が高いと感じた。

しかしこれを技術の進歩と考えるのは早計だ。後輪駆動が中心だった時代には、ペダルが左寄りに装着されることはなかった。本来であれば、前輪駆動化する時点でペダル配置に注意を払うべきだったが、それを怠ったことで操作ミスを誘発しやすいペダル配置ができあがった。

「高齢者疑似体験セット」を装着し、旧世代モデルと新世代モデルの乗車・操作感覚を比較/テスト車両:アクセラ(現行モデル)「高齢者疑似体験セット」を装着し、旧世代モデルと新世代モデルの乗車・操作感覚を比較/テスト車両:アクセラ(現行モデル)「高齢者疑似体験セット」を装着し、旧世代モデルと新世代モデルの乗車・操作感覚を比較/テスト車両:アクセラ(現行モデル)「高齢者疑似体験セット」を装着し、旧世代モデルと新世代モデルの乗車・操作感覚を比較/テスト車両:アクセラ(現行モデル)「高齢者疑似体験セット」を装着し、旧世代モデルと新世代モデルの乗車・操作感覚を比較/テスト車両:先代アクセラ

ペダルの誤操作減少と同様に、後方視界の向上も切望

「高齢者疑似体験セット」を装着し、旧世代モデルと新世代モデルの乗車・操作感覚を比較/テスト車両:先代アクセラ

AT車の普及も一因だ。マニュアルトランスミッション(MT)車であれば、原因を問わず、ドライバーは異常を感じると即座に左足でクラッチペダルを踏んで駆動力の伝達をカットする。ペダルの操作ミスを防ぐためにマニュアルトランスミッション(MT)車に乗れとはいわないが、ATが原因のひとつになっていることは間違いない。1980年代にAT車が普及する段階でも、急発進事故が社会問題になった。

同様に近年の自動車では、日本車、輸入車を問わず後方の視界が悪化している。マツダがスカイアクティブ技術とセットで導入した「魂動デザイン」も、サイドウインドウの下端を後ろに向けて大きく持ち上げるボディ形状によって後方が見にくい。今回のテストでは後退時の操作性を比べる目的で、後ろを振り返りながらペダルを操作したが、ほとんど何も見えなかった。

今と昔の自動車を比べると、全般的には安全性が向上して交通事故の死者数も減ったが、危険性を高めた機能もあり、その代表がペダル配置と視界だ。マツダは悪化したペダル配置を元に戻して誤操作も減らしたのだから、視界も向上させて欲しい。

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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