THE NEXTALK ~次の世界へ~ マツダ プログラム開発推進本部主査 猿渡健一郎 インタビュー(2/5)
- 筆者: 御堀 直嗣
- カメラマン:佐藤靖彦
SKYACTIV第2弾、アクセラに思いを込めて
2年を超えるアメリカ出向を挟みながら、猿渡健一郎は20年以上エンジン一筋に生きてきた。そのアメリカ出向では、マネージャーとして現地の開発を運営するはずであったのが、事業の合理化のため事務所閉鎖の後始末に費やされるという、赴任前の予定とは違う事態となった。
「英語もできなかったのに」と振り返るそのアメリカでの体験が、後のFordグループとして開発したマツダ/ボルボ/フォード3社共通エンジンMZRで役立った。
続いて、「i-stop」と名付けられたマツダのアイドリングストップ技術をアクセラに導入後、今度は予想外の新車開発主査に任命された。
【猿渡健一郎】2代目のアクセラは、2009年の6月11日に発売になったのですが、実は、その前の5月1日に主査の辞令がおりていました。その際に言われたのは、「マイナーチェンジでSKYACTIVのエンジンとトランスミッションを載せるだけでいい」ということでした。
しかし私の解釈は、エンジン屋の私に新車を開発しろと言う以上、SKYACTIVエンジンが活きるクルマにしてくれということだと考えました。そして、せっかく世界最高のエンジンとトランスミッションを与えられ、そのエンジンとトランスミッションはSKYACTIVによって駆動系まで無駄なくエネルギーを伝えてきているのに、車体で損失を出してしまったら意味がないじゃないかと思ったのです。
車両としての損失も限界まで無くしていくべきであり、そうすれば、SKYACTIVエンジンが活きる。車両の損失がないということは、使うエネルギーはミニマムになる。また、クルマに損失や無駄があると楽しめない、と思ったのです。
無駄がないということは、運転して疲れない。余計なことに気をとられて運転していて疲れるというのも、言わば損失でしょう?。疲れなければ、もっとクルマに乗りたいと思うし、そのうえクルマが消費するエネルギーがミニマムなら、もっとクルマを利用出来ると。
数百万円するクルマをお客様に買って頂いて、無駄が多くて使うことに罪悪感を覚えさせてしまうようでは、クルマを否定することになりかねません。お客様が買ってよかった!と思えるクルマを作りたい、そう思いました。
では、猿渡は、いかにしてそういうクルマを作り上げたのか?
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