ロータス ヨーロッパS 試乗レポート

ロータス ヨーロッパS 試乗レポート
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実用性の高さを備えるロータス流ロードカー

ロータス ヨーロッパという名を耳にして思い浮かべるクルマの姿は、まだ“初代モデル”の方、という人が多いはずだ。かつてのスーパーカー・ブームを巻き起こした漫画に登場の主人公操る、何ともひょうきんで独創的なルックスを持つ小さなスポーツカー ―― それこそが、ロータス ヨーロッパの初代モデルだった。しかし、そんなこのモデルには実は2006年夏に、30余年の時空を超えた“2代目”が登場している。それがこのほど日本にも上陸となった『ヨーロッパS』だ。

「英国で最も成功を収めたレースチーム&スポーツカー・メーカー」とも言われるロータスが初代ヨーロッパをリリースしたのは、今を遡ること40年以上も前の1966年。バックボーン・フレーム+ファイバー製パネルから成るボディにルノー製のFWD車用パワーパックをミッドマウントしたそのモデルは、「安価なGTカー」というキャラクターを狙う当時としては何ともユニークなものだった。

そして今、「サーキットカーというよりロードカー」というフレーズと共に年間500台という限定で生産が行われる新時代のヨーロッパも、そんな初代モデルとある種フィロソフィを共にしているように思える。シンプルさが売り物の『エリーゼ』、熱い走りを追及する『エキシージ』に対し、それらよりも肩肘から力を抜いた実用性の高さまでを狙うのがこのロータス ヨーロッパSなのだ。

“ロータス車の常識”からすれば「随分豪華」といえる内外装

「ヨーロッパSはエリーゼやエキシージの“派生モデル”ではない。その証拠に、エリーゼ/エキシージは型式ナンバーがタイプ111と共通なのに対し、ヨーロッパSはタイプ121とそれらとは別もの」とロータス・カーズではそう語る。

ホイールベースもヨーロッパSが30mm長く、乗降性を高めるためにサイドシル高がより低い、といった違いもある。が、そうは言ってもこの両タイプが強い血縁関係の持ち主である事は、相変わらずすこぶる幅広(それゆえ「改良された」とはいえその乗降性は絶対的に優れているとは言えない・・・)のアルミタブ式シャシーのサイドシルを跨いでドライバーズシートへと乗り込み、エリーゼ/エキシージに比べれば“豪華”とは言え、それでもまだまだスパルタンそのもののキャビン内を見回してみればすぐに実感出来る事柄だ。

ちなみにこのモデルの場合、エアコンやパワーウインドウ、iPodコネクター付きのオーディオ・システムなどが標準装備。フロアにはカーペットが敷かれ、ダッシュボードやドアトリムもレザー張りとなるので、なるほどこれまでの“ロータス車の常識”からすれば、その内容は「随分豪華」と表現をしても良さそうなのだが。

誰もが「予想外」と感じるであろう乗り心地

4mに満たない全長や2シーターのパッケージングなどが生み出すいかにも「クルマを着る感じ」を全身に感じつつ、背後から大きめのボリュームで届くGM製2リッター・ターボエンジンのサウンドを耳にしながら小気味良く決まるシフトで1速を選択してクラッチペダルをゆっくりとミート。と、ヨーロッパSはいかにもピュアなスポーツカーらしいそのルックスから予想をするよりも遥かにイージーにスルスル走り出す。900kg台半ばという軽自動車ばりの重量が、やはりそんな身軽さには大いに効いている印象だ。

そうした軽量ぶりもあり、エンジン回転数を高めに保つまでもなく各ギアでそれなりの加速感を味わわせてくれる一方、早くも6000rpm付近から上でエンジン回転の伸びの頭打ち感を明確にするパワーフィールには不満の声も現れそう。実はこのエンジンが最高出力を発揮するのは「わずかに」5400rpmというポイント。ターボエンジンならではの太いトルクを感じながら、6速MTをポンポンポンと早めにアップシフトして行くのが、このクルマの“正しい乗り方”と言えそうだ。

ミッドシップ・レイアウトの持ち主ゆえに転舵時のノーズの動きは軽やか。が、切り始め時点でのシャープさはさほどではないのは、このモデルがパワーステアリングを持たず、相対的に現代のクルマの中では「ステリアングがかなり重め」である影響も多分にありそう。一方、誰もが「予想外」と感じるであろうはその乗り心地だ。さすがに“しなやか”という表現までは使いにくいが路面凹凸は覚悟をしたよりも遥かにマイルドに受け流してくれる。こうした点に、エリーゼ/エキシージとのキャラクターの違いをアピールしたいといロータスのクルマづくりの姿勢を強く感じる事になる。

魂はそのままに新しいキャラクターを持ったロータス

最も新しいロータス車だから最もスポーティなロータス車だろう、と、そう考える人には、ヨーロッパSは期待を裏切る存在になってしまいそうだ。一方で、ピュアなライトウエイト・スポーツカーには乗ってみたかったものの、日常の実用性を考えるとどうしても二の足を踏まざるを得なかった、という人には、願ってもないキャラクターの持ち主がこのモデルでもあるだろう。

それではそんなヨーロッパSが「BMW Z4クーペやポルシェ ケイマンにも匹敵する豪華さ、快適さの持ち主か?」と問われると、やはりそこでは答に窮するところがある。いくらレザー張りインテリアが用いられ、装備が充実しているとは言っても、その魂はあくまでもサーキットに宿っているというのが、現在のロータス車の特徴でもあるからだ。

正直なところ、ピュアなスポーツカー・ファンを狂喜乱舞させるキャラクターの持ち主であるエリーゼやエキシージに比べると、多少の「分かりにくさ」も残るのがこちらヨーロッパS。が、例えば今後、ステアリングにパワーアシストが付き、トランスミッションが2ペダル化をされる・・・というような進化を見せるとすれば、そこにはまた新たな世界が広がって行きそうだ。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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