ジープ コンパス 試乗レポート/渡辺陽一郎(1/2)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:オートックワン編集部
ジープが2WD専用車をラインナップ!? コンパス デビュー!!
ジープの新型車、コンパスの概要を知ってオジサン世代の筆者は驚いた。ジープといえば、第二次世界大戦で活躍した「ミリタリー・ジープ」から生まれたブランド。80年代の中盤以降は、チェロキーが日本でも高い人気を得て都会的な印象を身に付けたが、オフロード4WDであることに変わりはない。
2012年3月5日にこのサイトにアップされた硬派のラングラーシリーズも健在で、2WD専用車と聞けば「ジープの魂はどうなった!?」と驚いたわけだ。背景にあるのは、ジープの母体になるクライスラーとフィアットとの提携を踏まえたブランドの再構築。日本も対象に含まれ、ジープは低価格車を充実させることになった。
クライスラーブランドは、今のところ日本では実質的に販売を行っておらず(300Cは今後復活する予定)、ダッジブランドもナイトロのみ。そこでジープブランドを重視し、拡販を図るべくパトリオットに前輪駆動のスポーツを258万円で用意した。
そして、今回試乗するコンパスはパトリオットと基本部分を共通化した上級車種に位置付けられ、グレードは2Lエンジンを積んだ前輪駆動のリミテッドのみ。車両価格は298万円になる。
エントリーモデルでありながら上級指向のグラチェロを意識したコンパス
フロントマスクは、パトリオットが丸型ヘッドランプを備えたチェロキー風、コンパスが上級指向のグランドチェロキー風だが、内装のデザイン、居住性、前後シートの造りなど中身は同じと考えて良い。ただし装備は異なり、コンパスには本革シートやプレミアムサウンドシステム、18インチアルミホイール(パトリオットは17インチ)などが備わる。
この内容は、パトリオットに2.4リッターエンジンと4WDを与えたリミテッドとほぼ同じ。こちらの車両価格は318万円だ。従って、コンパスリミテッドに20万円を加え、ほぼ同じ装備と2.4リッターエンジン、4WDを備えたパトリオットリミテッドを買うという選択も成り立つ。あるいは、パトリオットリミテッドの充実装備は魅力だが、駆動方式は2WD、エンジンは2リッターで十分なら、コンパスリミテッドを検討すると良い。
この販売戦略は、日本の市場では効果的。ジャンルはまったく違うが、軽自動車はこの方法で成功している。拡販の見込める領域にスズキならワゴンR/MRワゴン/パレット、ダイハツならムーヴ/ムーヴコンテ/タント/タントエグゼを投入し、好みの車種を選びやすくして顧客層を拡大した。
ちなみにコンパス、パトリオットともに、エンジンやプラットフォームは三菱車と共通だ。プラットフォームはSUVならアウトランダーと同じだが、2635mmのホイールベースはギャランフォルティスと等しい。
2リッターエンジンも、内径と行程の数値はアウトランダーやデリカD:5と同じだが、チューニングは異なり、最高出力は156馬力(6300回転)、最大トルクは19.4kg-m(5100回転)になる。
試乗を開始すべくドアを開くと、前輪駆動車とあってジープとしては床がかなり低い。ヨジ登る感覚はなく、乗降性が優れている。
インパネの質感もおおむね満足。メーターの内部にはNW(NorthWest/北西)という具合に方位が示され、コンパスの進行方向が分かる。このあたりは前輪駆動のシティ派SUVでもジープらしいところ。アメリカのドライブでは、「お父さん、南東に向かっているから道は間違っていないね」などと会話をしているのだろうか。
ボリューム感を持たせた座り心地で長距離の移動でも疲れにくい
フロントシートはサイズが十分にあり、ボリューム感を持たせた座り心地だ。本革の張り方も適度で柔軟性がある。体が少し沈んだ部分でしっかりと支え、長距離の移動でも疲れにくい。
リアシートは床と座面の間隔が十分に確保され、適度な着座姿勢が得られる。注意したいのは、座面の前端が斜めにカットされ、奥行が短く感じられること。乗降時に座面が邪魔にならないのは良いが、長身の同乗者のいる世帯が購入する時は、リアシートの座り心地を確認したい。
居住空間は広く、身長170cmの大人4名が乗車して、リアシートに座る同乗者の膝先空間は握りコブシ2つ分、頭上には1つ半の余裕がある。
荷室の容量はSUVの平均水準だが、リアシートのバックレストは水平になるまで前側に倒れ、助手席のバックレストにも同じ機能が備わる。サーフボードのような長尺物を積む時に便利だ。
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