ホンダ 新型ヴェゼル(2018年2月マイナーチェンジ) 試乗|ヴェゼルがデビュー4年経ってもなお売れ続ける理由

マイナーチェンジでさらに精悍に、そしてもっと走りやすく低燃費に

クルマ好きの読者諸兄が愛車を選ぼうとした時、候補車種のひとつにホンダ ヴェゼルを思い浮かべることがあると思う。コンパクトSUVの人気車で、2018年2月にマイナーチェンジを実施した。

変更の内容としては、外観ではフロントバンパーやグリルのデザインが変更され、インラインタイプのLEDヘッドライトも装着している。フロントマスクが精悍な印象になった。

内装ではシートの形状が変わり、iPhoneやAndroidなどのスマートフォンをUSBで接続できる機能も備わる。

メカニズム関連ではハイブリッドシステムのチューニングを変更して、全車にわたりエンジン音などの静粛性を向上させた。1.5リッターのノーマルエンジン車はJC08モード燃費も改善され、2WDは20.6km/Lから21.2km/L、4WDは19.0km/Lから19.6km/Lに向上している。4WDシステムは、駆動力の制御を綿密に行うことで、雪上での発進や旋回性能を高めた。

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ヴェゼルがデビュー4年で31万台以上を国内販売! 根強い人気の理由とは

さて、以前からホンダ ヴェゼルが高い人気を得ている理由についても、ここで改めて触れておきたい。

ヴェゼルはSUVとあって、16~18インチのタイヤ&アルミホイールを装着して、外観に強い存在感が伴う。全高は1605mmだから立体駐車場は使いにくいが、フリードのようなミニバンに比べると背が低く、さほど高重心ではないから走行安定性も満足できる。

ボディはSUVではコンパクトだ。全長は4330mm(ハイブリッドを含むRSホンダセンシングは4340mm)、全幅は1770mm(同1790mm)、最小回転半径は5.3m(同5.5m)に収まる。全幅は1700mmを超えて3ナンバー車になるが、全長が短いので、SUVとしては街中でも運転がしやすい。

ボディ形状は5ドアハッチバックに近く、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2610mmと長い。燃料タンクはフィットのように前席の下に搭載したから、荷室の床が低く抑えられて積載性が優れている。後席の頭上と足元にも十分な空間があって4名乗車も快適だ。

エンジンは直列4気筒1.5リッターの直噴式で、ノーマルタイプとハイブリッドを用意する。駆動方式はハイブリッドを含めて前輪駆動の2WDと4WDを選べる。

以上のような特徴により、ヴェゼルはSUVならではのカッコ良さ、適度なサイズによる運転のしやすさ、少し背の高いボディによる居住性や積載性を高い次元で調和させた。日本の使用環境に合っており、2013年12月の発売以来、堅調に売れていて、デビューから約4年(~2018年1月末)で31.1万台を国内で販売している。

特に2014年/2015年/2016年には、小型/普通車のSUVとしては3年連続して販売ナンバーワンになった。2017年は、2016年12月に発売されたトヨタ C-HRに1位を奪われたが2位にはランクされる。発売から4年を経た割に人気の下降が小さい。

地道な改善の積み重ねが根強い人気を支える要因のひとつ

このようにコンパクトで扱いやすく、ハイブリッドなども選択出来るトータルバランスの良さで人気を集めるホンダ ヴェゼルだが、一部改良を綿密に行っていることも、長く人気を維持する理由のひとつになっている。

ヴェゼルは発売当初のモデルでは乗り心地が硬かったが、2015年4月には足まわりに改善を加えた。振幅感応型ダンパーを2WDの後輪側にも採用している。ノーマルエンジンの売れ筋グレードとなるXには4WDを加えた。

2016年にはミリ波レーダーと単眼カメラを併用した安全装備のホンダセンシングを設定している。

2WDには走行安定性と乗り心地をバランス良く高めるパフォーマンスダンパー、18インチアルミホイールなどを装着するRSを追加した。ハイブリッドZにもチューニングが異なるパフォーマンスダンパーを採用している。

さらに2017年には特別仕様車のブリリアントスタイルエディションを設定。専用色のプレミアムイエローパールIIを用意するなど個性を表現した。

そして冒頭で述べた2018年2月のマイナーチェンジに至る。

ヴェゼルのマイナーチェンジ変更点を詳細に試乗・評価する

それでは変更点を検証しながら試乗していきたい。試乗車は舗装路がハイブリッドRS 2WD、雪道はハイブリッドZ 4WDで行った。

ボディスタイルの変更

マイナーチェンジの変更点としては、見栄えの違いが比較的分かりやすい。特にフロントマスクのグリル(ホンダのエンブレムから左右に広がる部分)が強調され、人目を引く。ただしデザインは当然ながら見た人によって好みが分かれる。

内装の質感向上と快適装備の追加

従来型では、シート、インパネ、ATレバーが収まるセンターコンソール付近のステッチ(縫目)が目立たなかったが、変更後はハッキリさせた。

前席は座り心地が向上している。背もたれは肩まわりのサポート性が良くなり、下側は腰を包むような形状だ。座面のサイズは以前から十分に長かったが、改良後は大腿部の支え方が向上している。感覚的にいえば体がシートにスッポリ収まるような優しい座り心地になった。

ただし前席の座り心地が向上したことで、改善を受けていない後席の不満が従来以上に際立つ。多彩なシートアレンジを可能にしたとはいえ、後席は座面をもう少し柔軟性に仕上げて欲しい。

それでも頭上と足元の空間は従来と同様に広い。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先には握りコブシ2つ半が収まる。頭上も1つ分だから、後席の広さはミドルサイズSUV並みだ。

このほかApple CarPlayの対応など、通信機能の充実が使い勝手を高めた。

ハイブリッドシステムの向上

発進時にアクセルペダルを踏み込んだ時の反応が、以前に比べると正確になり、なおかつ少し機敏で力強くなった。唐突に飛び出す印象はなく、速度の微調節もしやすい。

またアクセルペダルを少し踏んだ状態から、急速に踏み増す操作をすると、以前は自動的にギヤが下がるキックダウンを含めて反応が鈍かった。少しギクシャクしたが、今は相応に改善されている。

ただし低速でアクセルペダルを戻した時などは、何も操作をしていないのに、速度が微妙に増減して車両が前後に揺れるのを今でも感じる。

アクセルペダルを踏んだ時のノイズは以前よりも静かになり、吹き上がりも滑らかだ。運転感覚の質は高められている。ブレーキの操作感も同様で、制動力の微調節がしやすい。

雪道走行における4WDのコントロール性の改良

ヴェゼルの4WDは「リアルタイム4WD」と呼ばれるタイプだ。大雑把にいえばECU(エンジンコントロールユニット)が前後輪の最適な駆動力配分を決定して、モーターが油圧バルブを制御する。これが多板クラッチを操作して、後輪に最適な駆動力を伝える。

改良後は路面の状態などを検知する能力が高まり、駆動力配分が従来以上に綿密に行われる。雪道の登り坂などでも、前輪の空転が生じにくい。

カーブを曲がる時の操作性も良い。ハンドルを切り込みながら、緩やかにアクセルペダルを踏み込んだ時など、前輪が外側へ滑って旋回軌跡を拡大させる状態になりにくい。

雪道は当然ながら滑りやすく、路面が真っ白な時は車道と歩道の区別も付きにくい。真っ白で強い反射も生じると、遠近感まで分かりにくくなってしまう。雪道は夏場の舗装路に比べると気を使い、運転の難易度も高い。

こういう時に車両の動きを把握しにくいと、運転がますます難しくなって注意力が下がってしまう。その点でマイナーチェンジを受けたヴェゼルは、雪上でもドライバーの意図に合った走り方をするから、あまり余計な気を使わずに済む。車両との一体感が得られて運転も楽しく感じるが、それ以上に安全性を高めるメリットが大きい。楽しくても安全を損なったら本末転倒だ。

2WDのヴェゼルRSにも試乗|先進安全装備もより充実

素性の良いヴェゼルだから、舗装路を2WDのRSで走った時も満足できた。

カーブに入る手前でハンドルを切り込んだ時に、ボディが唐突に傾く印象はなく、挙動の変化が穏やかに進む。カーブを曲がっている時でも旋回軌跡を拡大させにくい。カーブが深く回り込む場面でアクセルペダルを戻す操作をした時も、後輪の接地性を損ないにくい。

乗り心地はマイナーチェンジ前に比べると粗さが解消されて快適になったが、今でも少し硬い。コンパクトSUVとしては満足できるが、試乗車で街中を走った時に確認しておきたい。

なおマイナーチェンジ後は、全車にホンダセンシングが標準装着されている。歩行者や車両と衝突する危険を検知すると、警報を発して、衝突不可避の時には緊急自動ブレーキも作動させる。路側帯を歩く歩行者と衝突しそうな時は、ハンドルを制御して回避操作をうながす機能も備わる。

また運転支援としては、車間距離を自動制御できるアダプティブクルーズコントロール、車線の中央を走れるように操舵力を加える機能も備わる。

各グレードとも機能向上でおススメ度アップ|特にヴェゼル ハイブリッドの魅力が向上

新型ヴェゼルの価格は、ノーマルエンジンを搭載したX ホンダセンシングの4WDが238万1000円だ。マイナーチェンジ前に比べて4万5000円の値上げになった。

ハイブリッドZ ホンダセンシング 4WDは292万6000円で4万円の値上げ。ハイブリッドRS ホンダセンシングは281万円で同じく4万円の値上げだが、ラゲージルームハードボードを加えた。

従来のヴェゼルと比べたら少し値上げされたが、各グレードともにハイブリッドシステムや燃費などの機能が向上している。SUVにはクルマ好きが多いので、運転感覚の向上は歓迎されるだろう。従来に比べると、特にハイブリッドを選ぶ価値が高まった。

[レポート:渡辺陽一郎/Photo:Honda]

ホンダ ヴェゼルの主要スペック

ホンダ ヴェゼル ハイブリッドZ ホンダセンシング[4WD]

グレード

VEZEL HYBRID Z

Honda SENSING[4WD]

駆動方式

4WD

トランスミッション

7速デュアルクラッチトランスミッション

価格(消費税込)

2,926,000円

JC08モード燃費

21.6km/L

全長

4,330mm

全幅(車幅)

1,770mm

全高(車高)

1,605mm

ホイールベース

2,610mm

乗車定員

5人

車両重量(車重)

1,390kg

エンジン

水冷直列4気筒 i-VTEC+i-DCD

排気量

1,496cc

エンジン最高出力

97kW(132PS)/6,600rpm

エンジン最大トルク

156N・m(15.9kgf・m)/4,600rpm

モーター最高出力

22kW(29.5PS)/1,313~2,000rpm

モーター最大トルク

160N・m(16.3kgf・m)/0~1,313rpm

燃料

無鉛レギュラーガソリン

ホンダ/ヴェゼル
ホンダ ヴェゼルカタログを見る
新車価格:
239.9万円341.9万円
中古価格:
75万円389万円

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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