ホンダ ステップワゴン 試乗レポート

ホンダ ステップワゴン 試乗レポート
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初代、そして2代目モデルの面影を全く残さないそのルックス

初代ステップワゴンがデビューをしたのは、今からちょうど9年前の1996年5月のこと。いわゆる5ナンバーサイズの範囲に留まりながらもとことんボクシーなプロポーションで登場したこのモデルは、そうした見た目から想像出来る通りの室内空間の大きさでたちまち多くの人々の共感を得るヒットモデルとなったのはまだ記憶に新しい。それから5年後。初めてのフルモデルチェンジを行ってリリースとなった2代目モデルも、やや“かど丸”になったとは言え相変わらずボクシーなフォルムを採用。同時に、スライドドアの採用を左側面に留めるなど、初代モデルの多くの特徴を受け継いでの登場となった。

確かに、初代モデルのウイークポイントを徹底的に潰すカタチでモデルチェンジを行った2代目モデルの完成度は高かったもの。しかし、こうして言わば「守りの手法」でのモデルチェンジとなっただけに、代わり映えという点では新鮮度が薄かった感は否めない。

というわけで、再びのフルモデルチェンジを行った3代目モデルは「これまでのモデルをすべて忘れ去りたかった!」とさえ断言する。今やホンダの財産でもある『ステップワゴン』の名前こそ受け継いだものの、初代、そして2代目モデルの面影は全く残さないそのルックスには、そんなホンダの強い意志が込められているわけなのだ。

全幅を“5ナンバーサイズ”の1.7m以下に収めることを死守

この時代、両側にスライドドアを設けるという事にはもはや迷いはなかったが、同時にその全幅を“5ナンバーサイズ”の1.7m以下に収める事は死守しようと考えた――3代目ステップワゴンの開発リーダーである蓮子末大(はっし すえひろ)LPLは、ぼくにそのように説明してくれた。「今度のステップワゴンは、“食洗機”や“無洗米”が主婦の普段の生活を豊かにしてくれたように、より日常シーンでフレンドリーなモデルであって欲しいと考えた」と蓮子氏。そこでまず、これまでのモデルのユーザー(それは特に女性が多かったと言う)の中から聞かれた「背が高くて運転が難しそう」という声に応えるべく、ルーフ高の大幅低減を行う事を考えたと言う。

そうは言っても常識的には、ルーフを下げれば室内高が小さくなるというのが道理というもの。そこでトライをしたのが現行オデッセイが成功させたのと同様、フロアを下げて従来型同様の室内高を確保する作戦だった。実際、ステップワゴンの高さと長さ方向の室内寸法は、従来型のそれと全く同じ数値を実現。室内幅に関してはカタログ上で55mmほど小さくなるが、それは右側にもスライドドアを新設した事による利便性の向上とバーターと考えるべきだろう。

率直なところ、左右幅が限られリア・タイヤの直上に座るカタチとなる3列目シートは、相変わらず「長時間座ってみたい」と思えるポジションとは言えない。が、2列目は2人掛けまでであれば十二分なゆとりが感じられる広さ。ダッシュボードは左右幅一杯への広がり感が特徴の直線基調のデザインが新鮮。高く、遠い位置に置かれたデジタル式のスピードメーターは、視認性抜群だ。

走りのテイストはあくまでも上質な乗用車感覚が溢れるもの

ところで、今度のステップワゴンの開発リーダーである前出の蓮子氏。実は何とこのモデルの前に手掛けたのは現在のシビック・タイプRという兵(つわもの)だ。それゆえに、いかにミニバンといえどもその走りに関して自ら様々な注文を付けてきたというのは容易に想像が出来るところ。実際、新しいステップワゴンの走りのテイストはいわゆるミニバンらしさを見事に脱した、あくまでも上質な乗用車感覚が溢れるものだった。

車両重量が1.5トンを超えるために、2リッターモデルの場合には時にややトルク不足を感じさせられる場面もある。そのためにアクセルの踏み込み量を増してみると、今度はCVTがどんどんと低いギア比を選択してエンジン回転数を高めるために、静粛性の点でも2.4リッターモデルに差を付けられてしまう。

が一方で、そんな2リッターモデルでも実用上で不安なほどの力不足を感じさせられるわけではなかったのも事実。アクセルペダルを深く踏み込めばそれなりに威勢良く回って必要なパワーを叩き出してくれるのは、さすがは“ホンダ・エンジン”の優秀さだ。

フットワークはハンドリング性能と乗り心地とをなかなか上手いところで両立。コーナリングでも不快なロール感が現れないのは、やはり“低重心・低全高”コンセプトの強みだろう。一方で、2列目/3列目シートに移動してみると、「後ろに行くに従って乗り心地は明確に低下して行く」という印象。荷室を拡大すべく3列目シートを跳ね上げようとするとその操作にかなり大きな力を必要とするのは、新型セレナに負けてしまった部分だ。

「負けず嫌い」のホンダらしい志の深い新世代ミニバン

従来型のポジションに多くのライバルが接近してきたので、今一度独自の価値観に基づいた新世代ミニバンを創造したい――ステップワゴンが誕生するきっかけとなったこんなコンセプトは、いかにも「負けず嫌い」のホンダらしいもの。実際、驚天動地の背の低さで世間をアッと言わせた現行オデッセイも、そんな同様の考え方に基づいて誕生をしたモデルであった。

が、そうした一方で従来型に比べると全高が75mmも低く、全長でも45mm短いという今度のモデルの場合、「広々した室内」という印象が外観から連想しにくい事も確かと言えそう。現行オデッセイでは、その登場直後にエリシオンというブランニュー・ミニバンが登場してオデッセイを補完する役割を果たしたが、ステップワゴンにはそうした“補佐役”が見当たらないのはちょっとばかり不安要素ではある。

もっとも、これまで述べてきたようにそうは言っても現実の室内の広さは従来型以上。その上で、利便性を高め、走りのポテンシャルを引き上げた新型というのは、考えてみれば随分と真面目なミニバンでもある。「絶対的に背が低い事と共に、ミニバンとしては珍しくエアロダイナミクスにも本格的に留意をしたので高速走行時の燃費にも優れるのも大きな特徴」と蓮子氏。心機一転!

で誕生のステップワゴンは、なかなか志の深いミニバンでもあるのだ。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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