日本にもビジネスジェットの新時代到来|ホンダとANA、 双日が強力タッグ(2/2)

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航空機のチャーターを「贅沢な一部の人のための選択肢」にはしない

この発表の中でたびたび出たメッセージとしては、「交通機関としての公共性」ということだ。ビジネスジェットのチャーターというと、とかく富裕層向け、とか、贅沢な選択肢というイメージが付きまといがちだ。

しかし、提供したいのはあくまでも時間的な価値。もちろん安価ではないかもしれないが、複数回の出張を一度にまとめられ、機内でもミーティングができれば、今までは滞在を強いられた出張も滞在しなくても済むようになるのかもしれない。空の旅の選択肢としてチャータービジネスを広めていきたいというテーマは今回の発表に関与する三社の共通する思いの様だ。

市場ニーズも、公共性のある移動手段としてであれば利用したいという声が強く、その点で今や国内のみならず、世界各地との航路で運航しているANAのサービスとしてチャーターの選択肢ができることは、すでにターゲットとなる企業や団体からも期待の声が高まっているのだそうだ。

ホンダジェットの普及とチャーター利用の普及は両輪の関係

とは言え、そうそう皆が簡単に利用できるサービスではないだろうという印象も持ちつつ、この日の会見の話を聞いていたのだが、この日出席したホンダエアクラフトカンパニーの藤野社長は「今はまだ高嶺の花と言わねばならないチャーターの料金。しかし性能とバリューとサイズのバランスなどを考えると、いまだかつてないバランスもホンダジェットは有していると思う。

このHonda Jetの普及とチャーター利用の普及はいわば車の両輪のような関係にあり、機体数が増えればサービスの価格も低下し、サービスが一般化すれば機体もさらに普及しやすくなると考えています。」と話してくださった。

確かに、これだけ空の旅が身近なものになると、30年ほど前の常識では考えられなかったのかもしれない。ボーイング747(ジャンボ)の日本国内線向け機体の投入などもあって、羽田千歳線で「世界最大の営業席数」を誇っていた時代なども経て、機体の進化、サービスの普及は確かに同時に進化し広まってきた結果が、この今の身近な空のネットワーク。日本国内で見てもそういう実績はすでにあるのだ。

チャータービジネスを広げようというANAや双日と、いまだかつてない空のはばたき方の可能性を秘めホンダジェット。互いに期待するところが大きいようだ。

すべての人が家族とともに夕食を取れるようになる未来へ

正直、今回の発表で、各社思い描く足並みの差は感じずにはいられなかった。例えばANAや双日としてはまず「海外でのサービスとしてしっかり足場を固めたい」というニュアンスをにじませた一方で、ホンダとしてはその先、日本でもホンダジェットが飛ぶことで、時間的距離の圧縮に大きく貢献できるという意欲をにじませる部分はあった。

もっともこれは、既存のエアライン運航がビジネスの柱であるANAにとっては、その部分との線引きや、シナジーを考えている部分があるだろうし、すでに機材管理やチャーター分野での実績のある双日にとっても、現状とそこからの展望として描く思いもあり、スタートの段階で、完全に足並みがそろうということの方が難しいのかもしれない。

しかし、それでもとても期待したくなる話として受け止めることができたのは、総論として、「空の基幹的価値の向上」を高めるための前進というメッセージを三社から感じたからに他ならない。今までは当日帰宅のできなかったエリアに日帰りできることで、より余裕を持った旅程、労働環境をもたらすということで、公私を両立させての充実した時間にし、迅速でありながら、高度な判断や決定を迅速に行うことができるようになることにきよしようという姿勢を、今回の発表には感じたからである。

10年後の空の旅、一体どんな風になっているのだろうか。ふだんなかなか考えることのないそんなことへ思いを馳せたくなるような会見。どんな成果が結実するのかはとても楽しみだ。

ホンダエアクラフトカンパニーの藤野社長は「シビックが普及した時に起きたこと以上のことをホンダジェットで起こしたい。」と話してくださった。クルマと同じではないし、時代も違う。だから、このコメントは実に精緻で、かつ率直な社長の言葉のように感じた。

創業者本田宗一郎の思いも強かった航空機づくり。そして藤野社長はホンダがつくること自体に意味があり、ほかの会社で航空機をつくるのとは全く異なる意味があるとも言っていた。

しかし、少しでも多くの人が便利になるように。そんなホンダのものづくりの原点にある、テクノロジーの思いやりを今回の発表の根底には感じた。かつて仰いだ空に、逆に乞われたような今回のプロジェクト。大いに期待したいところである。

[Text/Photo:中込 健太郎]

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中込 健太郎
筆者中込 健太郎

自動車ライター。1977年生まれ。神奈川県出身。武蔵工業大学(現東京都市大学)工学部電気電子工学科・水素エネルギー研究センターを卒業。自動車産業向け産業機械メーカーを経て、大手自動車買取販売会社で店舗業務からWEB広告、集客、マーケティングなどに携わる。現場経験に基づくクルマ選びや中古車業界の事情に明るいことから、ユーザーはもとより、自動車販売の現場からの信頼も厚い。幼少期からクルマをはじめとした乗り物好きが高じ、車種を紹介するコンテンツなども手掛ける一方、「そのクルマで何をするか」をモットーに全国をクルマで旅行し、食べ歩き、温泉巡り、車中泊といったカーライフに関する執筆も多数手がける。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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