燃費や走りが「いいクルマ」と進化著しいトランスミッションの関係(1/2)
- 筆者: 清水 和夫
- カメラマン:茂呂幸正
メーカーの考え方やエンジンとの相性で選択肢が増える
最近の自動車技術で著しく進化しているのが、トランスミッションではないだろうか。
AT(自動変速機)の定番となっているトルコン(トルクコンバーター式)ATは10段変速ギアまで多段化が進んでいるし、日本では2リッター以下のクルマにはCVT(無段変速機)が普及している。
その一方で、欧州を中心にダイレクト感のあるツインクラッチDCT(デュアルクラッチ)も普及し、そうかと思うと、スズキのようにシングルクラッチの自動MT(マニュアル)で頑張るメーカーもある。
あるいはプリウスのように電気的なCVTも2モーターハイブリッドには必需品だ。もちろんMTだって絶滅していない。最近は7段ギアまで登場しているくらいだ。ということで今回はものすごく多様化してきたトランスミッションを取り上げてみたいと思う。
もうすこし詳しく最近のトランスミッションの動向を見てみると、それぞれのメーカーの考え方や、開発と生産の投資事情、あるいはエンジン(モーター)との相性などに応じて、その選択肢が増えている。
2015年10月に開催されたホンダのジャーナリストミーティングではいろいろなトランスミッションに出合えておもしろかった。
ホンダのアメリカ向け高級車ブランド「アキュラ」で市販されるATは、なんと10段ギアのトルコンATだ。ホンダは1970年代から独自に開発した平行軸式の湿式多板クラッチを持ったATをずっと使い続けてきたが、最近はベルト式のCVTに切り替えている。
しかし、アメリカではトルクが大きいV6エンジンが大型セダンの主力エンジンなので、CVTは使いにくい。そこで重要になってくるのが、アメリカ人の好みにも合致するトルコンATだ。さらに厳しくなる燃費規制も視野に入れ、10段ギアのトルコンATを横置きのV6エンジンに組み合わせたのだ。
しかも、従来の平行軸方式ではなく、ホンダとしては初めてとなる遊星ギアを使ったタイプを採用し、最新の電子制御で緻密に変速タイミングをコントロールする。
栃木研究所のテストコースを走った限りでは、アクセルペダルの踏み方次第で一気に三段のギアをダウンさせることができた。だが、課題は三段ギアを一気にダウンさせることではなく、クルマのコンピューターがドライバーの気持ちを正しく理解できているかどうかだ。
実際の交通環境で走らせてみないと本当の実力は評価できない。
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