日本にない日本車 ホンダ CRIDER(凌派)・JADE(傑徳) ~中国・上海モーターショーに見るホンダの世界戦略~/桃田健史(2/2)

  • 筆者: 桃田 健史
  • カメラマン:桃田健史・本田技研工業
日本にない日本車 ホンダ CRIDER(凌派)・JADE(傑徳) ~中国・上海モーターショーに見るホンダの世界戦略~/桃田健史
次期ストリームを想わせる、中国市場をメインターゲットにおいた新型グローバルコンセプトカー「Honda Concept S」[北京モーターショー2012/Photo:Kenji Momota] 2012年の中国・北京モーターショーでプレゼンテーションを行うホンダの伊東 孝紳 代表取締役社長[北京モーターショー2012] 2012年北京モーターショーに出展された2台のコンセプトカー「Honda Concept S」(左)と「Honda Concept C」(右)[北京モーターショー2012] 北京モーターショー2012の模様 Honda Concept Sを囲むホンダ役員[北京モーターショー2012] [北京モーターショー2012出展 コンセプトカー] Honda Concept S[北京モーターショー2012出展 コンセプトカー] Honda Concept S[北京モーターショー2012出展 コンセプトカー] ホンダが中国市場向けに開発したミドルクラスセダンのコンセプトカー「Honda Concept C」[北京モーターショー2012出展 コンセプトカー/Photo:Kenji Momota] Honda Concept C[北京モーターショー2012出展 コンセプトカー] Honda Concept C[北京モーターショー2012出展 コンセプトカー] 画像ギャラリーはこちら

都市部から内陸部へ メーカーが次に狙う中国・巨大マーケット

ホンダが中国市場で狙うひとつ目は、内陸部。

これまでは自動車は、上海、北京/天津、広州など、沿岸部の大都市圏でよく売れてきた。これからは、中国のもっと内陸部の市場掘り起こしが、需要拡大のキーポイントなのだ。

その地域の人々、つまりは、西洋文化への憧れがあるものの、中国本来の「モノの見方」を大切にする人たちが「生まれて初めて買うクルマ」として買いたくなるクルマ。これを日本メーカーが造らなければならない。

一人っ子政策が生んだ「80后(バーリンホー)」を攻略せよ

中国の1980年代生まれ・ひとりっ子世代「80后(バーリンホー)」が集まる北京市街の人気スポット[Photo:Kenji Momota]

もう1点は、「80后(バーリンホー)」だ。これは、1980年代以降に生まれた世代を指す。日本語では「后」を「後」と表現する場合もある。

ザックリ言えば、その昔日本でも存在した「新人類」と呼べるような若い世代だ。この世代は、一人っ子が多い。なぜなら、中央政府の「一人っ子政策」の後に生まれたからだ。元来、中国は三世代、四世代が同居する大家族だった。しかし、経済成長と一人っ子政策によって、核家族化が進んだ。

そのなかで「80后」は、過去の中国国民とは趣向性が変わってきたのだ。兄弟がいないため、友達とのつながりが強くなる。また、コンピューター、インターネット、モバイルへの対応能力は先進国の若者世代とほとんど変わらない。とはいえ、中国人としての「モノの見方」はハッキリと持っている。

こうした状況をホンダが、クルマ作りに目一杯盛り込んだのが、「CRIDER」、「JADE」、そして「コンセプトM」なのだ。

ではこの3車、どこのが中国向け、内陸部向け、そして「80后」向けなのか? その最大公約数が「大気(ダーチ)」だ。

「大気(ダーチ)」~大きいことは良いことだ!~

メインステージにConcept Mを置いたホンダ・上海モーターショー2013ブースの模様広汽ホンダ 新型ミドルセダン「CRIDER(中国名:凌派)」[上海モーターショー2013]

「大気(ダーチ)」。

読んで字のごとし、大きな雰囲気だ。中国人は「大きいことは良いことだ」という基本感覚がある。クルマの場合、外観が大きく見えて、高級そうに見えて、車内が広々としていることが重要になる。

そこで一番の決め手が、「顔の大きさ」。押し出し感が強い顔が必然だ。

そのため、ラジエターグリルは大きく、ヘッドライトがクッキリ&ハッキリ。フロントバンパーは大きく。さらに、フロントマスク全体が、やや立っているような感じを好む。

その観点で、「CRIDER」、「JADE」、「コンセプトM」を改めて見てみると、「大気(ダーチ)」デザインの基本が分かる。

実は「大気(ダーチ)」思想が見え隠れする「N BOX」、そして次期オデッセイ・エリシオン

2012年軽自動車界最大のヒット作、ホンダの超ハイトワゴン「N BOX」Honda Concept M[上海モーターショー2013出展コンセプトカー]

そんなことを考えていて、ふと思った。

「そういえば、日本で流行りのN BOXも、けっこう大気(ダーチ)っぽいなぁ」。

まあ、ホンダが軽自動車「N BOX」そのものを中国で販売することは、まずない。しかし、激戦の日本軽自動車市場で、「スズキ ワゴンR」、「ダイハツ タント」、「ダイハツ ムーヴ」という不動の御三家の強固な壁を崩すためには、強烈な押し出し感が必要だったことは確かだ。

それが結果的に、中国向けデザインとして開発していた各車とつながる「大気(ダーチ)」が応用されたのではないだろうか?

そして、もしも「コンセプトM」が次期「オデッセイ」「エリシオン」ならば、日本でも「大気(ダーチ)」デザインが定着するのかもしれない。

「日本にない日本車」として生まれたはずの、ホンダの「中国専用車」や「中国市場重要視車」たち。だがその影響力はジワジワと、日本市場に及んでくるに違いない。

[レポート:桃田健史]

◎関連記事:

【上海ショー2013】次期エリシオン・オデッセイ!? ホンダ、市販を前提としたミニバンコンセプトモデルなどを出展[2013年4月22日]

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桃田 健史
筆者桃田 健史

日米を拠点に、欧州、BRICs(新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤモンド社)。1962年東京生まれ。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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