S660の走行性能は軽史上「No.1」!ホンダ S660 詳細解説+試乗記/渡辺陽一郎(4/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
ライバルのコペンとは価格・燃費ともに同等、「ミッドシップレイアウト」か「電動ハードトップ」か
価格は6速MT、CVTともに同額だが、アイドリングストップはCVTのみに装着される。CVTのハンドルにはパドルシフトが備わり、マニュアル操作も可能だ。となれば価格が同じでも、CVTが実質4万円ほど安い。Nシリーズと共通化が難しい6速MTは、価格も高くなる。
JC08モード燃費は、6速MTが「21.2km/L」、CVTはアイドリングストップを併用したこともあって「24.2km/L」だ。ライバル車のダイハツコペンは、5速MTが「22.2km/L」、アイドリングストップを備えたCVTが「25.2km/L」だから、燃費は同程度と考えて良い。
S660のグレード構成はベーシックな「β」と上級の「α」で、それぞれに「6速MT」と「CVT」が設定されている。「α」には、車間距離の制御機能を持たないクルーズコントロール、ステンレス製スポーツペダル、本革巻きのステアリングとシフトノブ(ATレバー)などが加わる。シートの生地は、βがファブリック、αは本革&ラックススェードに上級化した。
価格はβが「198万円」、αは20万円高い「218万円」。αに加わる装備の価格換算額は約15万円だから、βは価格を200万円以下に抑えたこともあってαよりも5万円ほど割安だ。
ライバル車のコペンはローブの価格がCVTで「179万8,200円」、5速MTが「181万9,800円」になる。コペンのプラットフォームはダイハツ車が幅広く採用するタイプだから、電動ハードトップを備えた上で、S660よりも20万円近く安い。この損得勘定は、S660のミッドシップレイアウトと、その運転感覚をどのように判断するかで変わるだろう。
コンパクトスポーツの新しい時代が到来した!
コペンに続いてS660が登場して、軽自動車の世界が一段と楽しくなった。1.5リッターエンジンを搭載するマツダの新型ロードスターも含めれば、コンパクトスポーツの新しい時代が到来したともいえそうだ。
しかしS660やコペンは、軽自動車の本質を突いた商品ではない。軽自動車は公共の交通機関が未発達な地域で、日常的な移動手段として機能しているからだ。
これらの地域は、高齢者の比率も高い。東京都や神奈川県は、軽自動車の10世帯当たりの普及率が1~2台で、65歳以上の人口構成比は20%を少し超える程度にとどまる。一方、鳥取県や山形県では、軽自動車が10世帯に10台以上普及している。そして65歳以上の人口構成比は30%近い。
高齢者が通院や毎日の買い物に軽自動車を使う現実があり、そこで使用されるのは、古いホンダ ライフやスズキ アルトだったりする。2015年4月1日からは、新車で軽乗用車を買うと、税金が1.5倍の年額1万800円になる(平成32年度燃費基準達成車は購入の翌年度のみ減税)。
軽自動車が進化して華やかになるほど、税金が高まり、高齢者の生活を圧迫する心配が増えていく。だからボディやエンジン排気量の拡大も慎重に考えたい。確かに今のサイズには無理が伴うが、全幅や排気量を大きくすれば、増税が必ずセットになるからだ。
そしてホンダ S660、ダイハツ コペン、スズキ アルトターボRSといった車種を試乗すると、軽自動車が今のサイズでも、商品として十分に成り立つことを実感できる。税金に配慮してこのサイズを維持しながら、走行安定性や衝突安全性をさらに高めていくのが現実的だ。
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