6年目でも大人気!軽のN-BOX頼みのホンダ、普通車の反撃はいつ始まる?
- 筆者: 桃田 健史
ホンダは今、N-BOXに頼りっぱなしの国内販売
フルモデルチェンジが間近いのに、ホンダN-BOXの人気はまったく衰えていない。
2017年6月の販売台数は1万7654台で、軽自動車部門では二位のダイハツミライースの1万2475台を大きく引き離して堂々の第一位。
2017年1月~6月累計でも、10万6231台(前年同期比110.7%)で軽自動車トップを邁進中だ。一方、乗用車の中核市場であるコンパクトカーのフィット、またミニバンのステップワゴンの売り上げは”いまひとつ”。e-POWERと同一車線自動運転機能という日産の”伏兵”の影響をもろに受けたからだ。
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こうした”偏った”販売状況に陥っているホンダは、これから日本市場をどのように立て直していくのか? その方向性のひとつとして、八郷隆弘社長は2017年6月8日、社長就任2年目のスピーチで、四輪車の『デザイン』と『走り』の刷新を明言している。
それは、今夏の新型フィットと新型ステップワゴンのマイナーチェンジモデルを指しているのではない。2017年10月末の東京モーターショーで、”未来に向けたホンダ”を大々的に提案し、それに沿う形での新しいデザインと走りを量産化するという流れだ。
つまり、フィットとステップワゴンについては、2019年~2020年にかけてのFMC(フルモデルチェンジ)を見据えて、現時点で準備を進めている。
ここでキーワードとなるのが、”Rの再編”だ。
『Rの再編』が目指すこととは?
ホンダという会社は、他の自動車メーカーと大きく違う特徴を持っている。
それが、本田技研工業と本田技術研究所という2つの企業の存在だ。
ホンダの組織全体として見ると、本田技術研究所は本田技研工業が1960年7月1日に設立した子会社で、ホンダの二輪車・四輪車・汎用エンジン、そして航空機やロボットに関する全ての研究開発を行っている。経理上は、本田技研工業が研究開発におけるほぼ全ての仕事を本田技術研究所に”発注”しているかたちだ。
これは、ホンダの創始者・本田宗一郎氏の”モノ造りに対する理念”に基づく発想であるが、時代が変わり、市場が変わり、そしてホンダ全体の組織が拡張するなかで、本田技研工業と本田技術研究所との関係を見直すための波が何度か押し寄せていた。そうした中、2017年4月1日に行われたのが”Rの再編”だ。
ここで言う”R”とは、R&D(リサーチ・アンド・デベロップメント)のRである。
”Rの再編”前には、ホンダの”Rの領域”をカバーするのは、アシモなど先進的な領域をカバーする『基礎技術センター』、『ホンダリサーチインスティテュート』、『四輪開発センター内の開発部隊』という3つの組織だった。それが、4月1日以降は『ホンダリサーチインスティテュート』と、東京の赤坂に昨年オープンした『R&DセンターX』の2つに機能を集約された。
また、もうひとつ面白い動きがある。それが、本田技研工業が2016年4月に発足させた『ビジネス開発統括部』だ。これは、既存のビジネスモデルに拘らない、全く新しい発想でのホンダの在り方を事業化する組織だ。
この『ビジネス開発統括部』と、本田技研研究所の”Rの再編”が同期するのだ。こうした大胆な組織再編を行った理由は、日本のみならず、世界市場における”クルマという商品の在り方”が大きく変わってきたという社会変化への対応だ。
単なるモデルチェンジは、もう無意味
5年から6年に一度、エクステリアとインテリアのデザインのイメージを変え、エンジンや電動機による原動機の燃費や電費を改善し、車体性能の基本であるNVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)のレベルを上げるといった、”旧来型のクルマの進化”の時代はもう終わった。
これは、ホンダに限った話ではなく、世界の自動車産業界全体が直面している巨大な時代変化である。その中でホンダは、ホンダのクルマ造りの”今”を検証し、「ホンダはこれから、どのように変わっていくべきなのか?」を自問自答している。
新型N-BOXへのFMC(フルモデルチェンジ)、そして新型フィットや新型ステップワゴンへのMC(マイナーチェンジ)は、新たなるホンダへの”入口”に過ぎない。大きく変わろうとしているホンダの動きが楽しみだ。
[Text:桃田健史]
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