【日本にない日本車】北米ホンダ シビッククーペ /桃田健史(1/2)
- 筆者: 桃田 健史
- カメラマン:桃田健史/北米ホンダ
ほぼ新型!? 異例の超大型ビックマイナーチェンジが大成功
青い空のもと、真っ赤なボディがいきいきと見える。米・カリフォルニアで思いっきり、北米「シビッククーペ」に乗った。
ホンダ「シビック」は、日本生まれのCセグメントワールドスタンダードモデルだ。1972年に初代誕生以来、「スーパーシビック」、「ワンダーシビック」、「グランドシビック」、「スポーツシビック」、「ミラクルシビック」、「スマートシビック」との愛称で進化していった。
だが、2010年代に入り、シビックの方向性は日本市場の需要と離れていった。当初、ハイブリッド車は日本国内に残るとみられていたが、フィット販売台数におけるハイブリッド車比率が急激に増加するなか、シビックは日本から姿を消した。
そして2014年現在、シビックは北米市場とアジア市場、及び欧州市場を中心とする2系統のモデルとなっている。
特に北米は、シビックにとって最重要な仕向け地だ。驚くなかれ、2013年の北米販売台数は、33万6180台。これは北米シビック49年の歴史のなかで第二位だ。
ただし、こうした販売好調の裏には、ホンダの大胆な戦略変更がある。現行シビックは初代から数えて9世代目。2011年に北米デビューした。ところが、アメリカの有力自動車雑誌やブロガー、そして全米ホンダディーラーから、デザインについて不満の声が噴出。同時期にデビューした、韓国ヒュンダイ「エラントラ」など、Cセグメントのライバルたちに見劣りする、というのだ。ホンダとして北米シビックはホンダ世界戦略のなかでも大きな柱。現行モデルの開発が始まったのはちょうど、2008年リーマンショック前後であり、北米市場の復活が先読み出来ない段階では、コンサバなデザインを選ばざるを得なかったのかもしれない。
こうした状況で、ホンダ経営陣の判断は素早かった。なんと、発表して1年と少し、2012年11月のロスアンゼルスモーターショーで「ほぼ全面改良」といえる超大型ビックマイナーチェンジを披露した。
そこに現れたのは、まるで「アコード」を思わせるような、上級「シビック」だった。この大英断は見事に成功した。
乗り味は「マンミニマム、メカマキシマム」!?
ホンダの、いや正確に記せば、本田技術研究所が目指すモノ造りでは、ホンダの哲学 「マンマキシマム・メカニミマム」を貫いている。
ところが、今回のカリフォルニア長距離試乗で筆者の心に芽生えた言葉は、その正反対だった。
「マンミニマム・メカメキシマム」だ。
これは、運転の際の操作に対する「入力」と、クルマの動きである「出力」とのバランスをイメージしている。
ステアリングの操舵、アクセルの踏み込み、ブレーキング、さらにはインターネットラジオ操作のタッチパネル操作でも、「人として、ごく小さい操作感で、クルマ側が最大級のパフォーマンスを見せてくる」のだ。
だから、運転していてとにかく楽しい。そして、嬉しい。素直にそう思える。
結局これは、人が主役であり、それをクルマがサポートする。つまり「マンマキシマム・ マシンミニマム」なのだ。
こんな屁理屈を並べたくなるほど、この「シビッククーペ」、出来が良いのだ。
では、試乗した経路に沿って、その味わいを詳しくご紹介していこう。
ロサンゼルス国際空港(通称LAX)。そこでピックアップした時、第一印象は「これが、本当にシビック?」だった。
モデル名は、「EX-L」。クーペでは「LX」、「EX」に従える最上級モデルだ。
ちょうど居合わせた、黒のBMW「5シリーズ」、濃紺のアウディ「A4」に対して、同格の存在感がある。そしてなにより、「かっこいい」のだ。一般的に、セダンを本流とするCセグメントの場合、そのクーペ版はズングリしたスタイリングになりがちだ。それがこの「シビッククーペ」。スッキリとして精悍だ。だから、赤いボディ色がとても似合うのだ。タイヤサイズがかなり大きく見える。「え?まさか18インチ?」と思ってよく見ると、17インチ。ホイールのデザイン効果なのか、ホイールとタイヤが大きく見えて、クルマ全体にズッシリ&ガッシリ感を演出している。
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