復活間近のホンダ新型シビックに販売現場は「売れと言われても…」 、往年の人気車が成功する鍵とは

復活間近のホンダ新型シビックに販売現場は「売れと言われても…」 、往年の人気車が成功する鍵とは
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なぜ今になってシビックを国内で復活させるのか?

ホンダ 新型シビック ハッチバック(左)とセダン(右)

クルマ好きにとって、これから発売される新型車で気になるモデルのひとつが、ホンダの新型シビックだと思う。最近のホンダは、軽自動車/コンパクトカー/ミニバンに力を入れ、以前のスポーツカーを数多くそろえた時代とはラインナップが変わった。燃料タンクを前席の下に搭載して車内後部のスペースを広げるセンタータンクレイアウトなど、ホンダの独創性は軽自動車やコンパクトカーにも生かされるが、力を入れるジャンルが以前とは大幅に異なる。

その意味でシビックは、1970~1990年代まで人気車だった経緯もあり、中高年齢層には思い出深いクルマだ。復活すればそれなりに注目されるだろう。

疑問に思うのは「なぜ今になってシビックを国内で復活させるのか?」だ。一度廃止した車種を改めて発売するのだから、相応の考えがあってのことだろう。

そこで開発者に尋ねると「最初のきっかけは、シビックセダンの製造を埼玉県の寄居完成車工場で行うことになったから」だという。2015年に発売された現行シビックは海外で堅調に売れ、北米の月別販売統計を見ると、日本メーカー車ではSUVを除くとトップクラスになる。トヨタ カムリやトヨタ カローラと争っている超人気モデルだ。

そして北米のシビックには、5ドアハッチバックやクーペも用意されるが、セダンが全体の78%を占める。この売れ行きを補うために「海外生産と併せて、国内の寄居完成車工場でもシビックセダンを生産して輸出することになった」という。これを受けて「日本で生産するなら日本国内でも売ろう」と話が進んだ。

その背景には冒頭で述べた、近年のホンダ車が実用指向の車種に偏っている実情もある。

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シビックのイメージは年齢層で様々、若い人は…

ホンダ 新型シビック ハッチバック(右)とセダン(左)ホンダ 新型シビック タイプR

ホンダらしさを取り戻すべく、スポーツモデルを登場させた。しかし、軽スポーツのS660は楽しいクルマだが実用性が乏しく、新型NSXは生産規模が極端に小さいから、今は実質的に新規契約ができない状態だ。

アコードやレジェンドはスポーティ感覚が乏しく、多くのユーザーが購入しやすい趣味性の感じられるホンダ車はほとんどない。強いて挙げても、ヴェゼルやフィットRS程度になってしまう。これではブランドイメージが下がり、1台当たりの粗利も少ないから、販売会社の利益にも良くない影響を与える。

その点でシビックには高性能なタイプRも用意され、ラインナップの幅を広げる上で効果的と判断された。国内で生産するシビックはセダンだけだが、これだけでは品ぞろえが乏しく、5ドアハッチバックと同じボディを使うタイプRをイギリスから輸入することになった。

ただし、この経緯はかつてのシビックを知っている読者諸兄にとって、少々情けないと感じさせる話だろう。現行シビックを開発する段階では国内で売る計画はなく、セダンの国内生産に乗じた結果的な国内販売になるからだ。

仮に北米でシビックセダンの売れ行きが低調だったり、為替レートが円高に振れていれば、シビックの国内販売もなかった。いくつかの条件が重なり、いわば成り行きで、国内販売に踏み切った印象を受ける。日本のユーザーがシビックにどのような思いを抱き、いかなるシビックが求められているのか、市場調査を綿密に行った上で開発した日本を視野に入れたシビックではない。

開発者は「シビックのイメージは年齢に応じて様々。中高年齢層にとっては、若い頃に親しんだ馴染みやすくてスポーティな小型車だが、世代が少し若くなると、シビックといえばタイプRになる。さらに若い人達はシビックという車名は知らない」という。

新型シビックの価格帯はやはり高い?

ホンダ 新型シビック ハッチバックホンダ 新型シビック ハッチバック

軽快なシビックの3ドアハッチバックは20世紀で終わり、2005年に発売された8代目シビックは、3ナンバーサイズのセダンに統合された。2011年以降の国内廃止も考えると、シビックの印象が世代に応じて異なったり曖昧になるのは当然だ。シビックの国内販売を再開するなら、そこまで踏まえた上での訴求の仕方が求められる。

エンジンは、セダンとハッチバックの1.5リッターターボとタイプRの2リッターターボの2機種。驚くことに、タイプRだけでなく5ドアハッチバックにも6速MTを用意した(セダンは無段変速式のCVTのみ)。

開発者になぜ今回、5ドアハッチバックの1.5リッターターボにも6速MTを用意したのか、理由を尋ねると「1.5リッターターボのエンジンフィーリングと6速MTの相性が良かったから」という。5ドアハッチバックは18インチタイヤを装着するなどスポーティ指向だから、6速MTの設定も理解できるが、シビックのコンセプトに繋がる特別な理由、あるいは世界観があるわけではなさそうだ。

販売会社はすでに、新型シビックの大雑把な価格帯を明らかにしている。セダンは265~270万円。5ドアハッチバックは、18インチタイヤなどの装着によって280~285万円になりそう。タイプRは450万円を超える。

全般的に価格帯が高いので、スマートキーシステム、アルミホイールなどは全車が標準装着する。セダンのホイールは16インチだがオプションで17インチも選べ、本革シートも設定した。5ドアハッチバックも、CVTの組み合わせなら本革シートを選べる。

使用燃料はセダンはレギュラーガソリンだが、5ドアハッチバックとタイプRはプレミアムガソリンのハイオク仕様だ。

注意したいのはホンダセンシングの機能で、先行車に追従するアダプティブクルーズコントロール(ACC)が、渋滞追従機能付きに進化する。その代わり、販売店によると歩行者事故低減ステアリングと、先行車発進お知らせ機能は省かれているという。

歩行者事故低減ステアリングとは、路側帯を歩く歩行者に衝突する危険が生じると、表示と音で警報を発して、回避方向へのハンドル操作も支援する機能だ。日本には独立した歩道のない道路が多いから、緊急自動ブレーキの歩行者対応と併せて、歩行者事故低減ステアリングを採用すると安全性が一層高まる。シビックでこの機能が省かれるのは残念だ。先行車発進お知らせ機能は一種の快適装備で、先行車が発進したのに気付かない時は、ブザーと表示で知らせてくれる。

なお5ドアハッチバックの6速MTでは、クルーズコントロールは省かれるが(速度が下がった時など6速MTとは機能上の組み合わせが悪い)、緊急自動ブレーキは採用される。6速MTの緊急自動ブレーキでは、作動時にドライバーがクラッチを踏まないとエンジンが停止することも考えられるが、それでも安全を優先すべきだ。マツダも6速MTでも対応している。スバルは採用に向けて取り組んでいるが、6速MT車の販売台数が少ないために開発の優先順位は低いのが実情だ。

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発売時期が微妙で新型シビックが埋もれる?

ホンダ 新型シビック セダン

新型シビックの発売までのスケジュールは複雑で、2017年6月上旬から販売店では概要を明らかにしている。7月上旬になると価格も開示して予約受注を開始する。そして7月下旬に「正式発表」するが、納車を伴う「発売」は9月中旬から下旬になるらしい。従って販売店に試乗車が届くのも9月に入ってからだ。

販売支援としては、残価設定ローンに年率1.9%の低金利を実施する。売れ行きの落ち込んだミニバンのような支援策だが、購入したいユーザーにとってはメリットになる。

その一方で、6月29日にはフィットのマイナーチェンジ、8月下旬には次期型となる新型N-BOXが発売されるから、販売店は慌ただしくなるだろう。新型N-BOXや新型フィットは売れ筋車種だから、新型シビックが埋もれる可能性が高い。ホンダはもう少し時期を選んで発売すべきだ。

読者諸兄は、新型シビックの導入をどのように見るだろうか。「かつては基幹車種で人気も高く、今でも歴代タイプRは愛好家が多いから、売るなら周到に準備してキチンと発売して欲しい」と思うだろうか。

確かに一度、国内で廃止した新型シビックが再び失敗すると、日本ではシビックを永久に買えなくなってしまう。往年のシビックを知る人達が「再び乗ってみようか」と思わせるようなプロモーションが必要だ。

あるいは「日本を見限って海外に出て行ったシビックが、今さら成り行き的に日本に戻って来られてもねぇ・・・」という印象だろうか。この気持ちも理解できる。国内の復活には身勝手な印象が伴い、たとえクルマが優れていても、今までの経緯を考えるとあまり愉快ではない。

ホンダに限らず日本の自動車メーカーは、海外で売れ行きを伸ばし、世界有数の企業に成長した。日本にもたらす経済的な恩恵は大きいが、クルマ好きにとっては弊害も小さくはない。新型シビックの発売は、成長した日本メーカーの国内市場におけるあり方と、趣味性の強いクルマの売り方、クルマ好きへの対応を問い直す切っ掛けになるかもしれない。

[Text:渡辺陽一郎]

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筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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