国産Cセグハッチバック 徹底比較(3/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:島村栄二
エコドライブを視覚的にも楽しみながら
黒を基調に随所にシルバーをあしらい、精悍かつ上質感ある空間のインテリア。 ドライバーを包み込むように、適度にタイト感を演出するとともに、視認性と操作のしやすさに配慮したという「ゾーンレイアウト」コクピットにより、運転に集中できる環境が整えられている。
各種情報をわかりやすく表示するMID(マルチ・インフォメーション・ディスプレイ)も配されており、アイドリングストップをはじめエコドライブを視覚的にも楽しみながら実践できるようになっているところもよい。
ATセレクターのマニュアルモードでは、前がシフトダウン、後ろがシフトアップとなっているのは、おなじみのマツダ流で、20Sグレードではシフトパドルも備わる。
このクラスながら、運転席と助手席で個別に温度を設定できるフルオートエアコンも付く。 安全装備面では、後方から接近する車両の存在を知らせるRVM(リアビークルモニタリングシステム)が特徴。
横滑り防止装置VDCは、2リッターのFF車に標準、またAFS(アダプティブ・フロント・ライティングシステム)も上級グレードに用意されている。
ラゲッジルームの奥行きは3台中でもっとも長く、後席の居住性をある程度確保しながら、ラゲッジ容量を稼ぐことを意識して設計されたことがうかがえる。
また、サイドウィンドウ下端のラインが後ろにいくほど高くなっているので、後席での開放感にはあまり期待できないが、むしろ前記のようにラゲッジが広いことが強み。Cセグ車の一般的な使われ方を考えると、実用車としてもっとも不満がないであろうパッケージングかと思われる。
後席の居住性を重視した空間設計
全体的にいろいろなものが低い位置にある印象で、センターから両サイドにかけて弧を描くデザインとしたインパネが印象的。
2.0i-Sグレードでは、ホワイトルミネセントメーターや、運転席8ウェイパワーシートなどが与えられ、さらに2009年秋の一部改良で、シルバーのステッチをあしらったアルカンターラシートが与えられたが、これの質感がなかなかのものだ。
また、同じく一部改良で5ドア全車において、コンソールボックス上部がソフトパッド化されたほか、後席カップホルダーが設定(1.5iを除く)され、メーカーオプションのカーナビに音声認識機能が追加された。
後席の居住空間や頭上スペースもインプレッサがもっとも広く、ポジションももっとも自然に収まり、座面のカドを丸めたシートにより、座面長がありながらも乗降性にも優れる。後席に人を乗せる頻度の高いユーザーには、インプレッサが適するといえるだろう。
そのぶんラゲッジスペースの奥行きが小さいのは、荷物の積載性をほどほどに、後席乗員の居心地を優先してのことのように思える。フロアは高めだがアンダーボックスも付いてない。 また、インプレッサのみ他の2モデルとは逆で、後席は左4、右6の分割可倒式となっている。
あまり大きな問題ではないが、左側通行の日本ではこちらのほうが使い勝手がよいはずだ。
安全装備面では、アクティブヘッドレストは大半のグレードに標準で付くが、横滑り防止装置がターボモデル以外では設定自体がないところが惜しまれる。
新しさを感じさせる合理的パッケージ
インパネからセンタークラスター、センターコンソールにつながる部分を一体化させ、ボリューム感のあるブリッジ形状とした斬新なインテリアが特徴。トールフォルムにともない、シフトレバーは高めの位置に配されている。
マイナーチェンジで、一部グレードの内装色にグレージュを新設定されたほか、左右独立温度コントロールフルオートエアコン(150Xを除く)などを標準装備とされた。 また、パーキングブレーキレバーの先端の形状が、従来の上半分にボタンを配したタイプから、一般的なものに変更された。
前後ともシートの背もたれや座面のクッションの厚みがたっぷりととられており、シートポジションはアップライト気味に設定されている。高めにヒップポイントにより乗降性にも優れる。
こうすることで、限られた空間を有効に使い、前後の乗員に狭さを感じさせないとともに、十分なラゲッジスペースを稼ぎ出すという、合理的な空間のつくりになっている。テールゲートの角度が3台の中でもっとも起きていることも、その表れだろう。
リアシートは、オーリスのみリクライニングが可能で、2WD車では後席足元のフロアがフラットになる。
最大荷室状態では、リアシートの座面が少し沈み込んで背もたれも沈み込み、完全にフラットにはならないが、より低くなるような仕組みになっている。
こうすることで、シートのクッション厚と使い勝手の両立を図っている。 安全装備面ではVSC&TRCが全車に標準装備され、前席にはWIL[頸部傷害低減]コンセプトシートが装備される。
総評
アクセラとインプレッサは、外から見たフォルムには共通性があるが、車内空間のモノの配置の設定や雰囲気はだいぶ異なり、優先したものが違うように思える。アクセラのラゲッジスペースは、他の2モデルよりもだいぶ広い。 対するオーリスは、いろいろなものをアップライト気味にして空間の有効活用を図っている。安全装備については、サイドやカーテンシールドを含むエアバッグや、ABS・EBDについてはいずれも充実しているが、横滑り防止装置については、インプレッサやアクセラの一部では設定自体がないところが惜しまれる。
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