欧州コンパクトワゴン 徹底比較(3/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:島村栄二
質感が高く、合理的なつくり
先代のプラットフォームを踏襲しているが、ヴァリアントはもともとそういう進化の仕方をしている。
インテリアでは、オーディオパネルと連動したエアコンコントローラーやレザー3本スポークステアリング、さらにはソフトな触感のダッシュボードなどを採用する。
また、エアコンの吹き出し口やメーターリング、シフトレバー周囲などにクロームを配し質感を高めている。前後ともシートのサイズはかなり大ぶりで、リアシートの着座姿勢についても、もっともしっくりくるのはゴルフだろう。
その反面、フロントシートは、小柄な女性には座面が少々大きすぎるかもしれない。ラゲッジルームも広く、幅も十分だが、とくに奥行きの大きさは特筆できる。フロアも高くなく、さらにその下に仕切られたアンダーボックスを備える。
タイヤハウス後方には小物入れがある。非常に合理的につくられている。
リアシートは左4、右6の分割可倒式で、センタースルーできるようなっているのはゴルフヴァリアントのみ。
おまけに、リアシートはダブルフォールディングが可能で、畳んだ際は、より低い位置でフラットなラゲッジルームを得ることができる。
フレキシブルなシートアレンジ
大きなフロントウィンドウに、低い位置から後ろにいくにつれて切り上げられたサイドウィンドウなど、ガラスに囲まれているような感覚となる。
ウェストラインは低く、フロントもドーンと開けているので、車内の雰囲気はミニバンっぽく、開放感に満ちている。
先代307SWより踏襲する、フレキシビリティに富んだシートアレンジが特徴で、このクラスでこうしたユーティリティを実現したクルマは、ちょっと思い当たらない。
7人分の3列シートを持ち、そして2列目と3列目は取り外すことも可能となっている。2列目は座点が1列目よりもやや高めで、ガラスルーフの恩恵を享受することができる。2列目シートは3人分とも同じものなので、横幅も同じ。そして、2列目よりも3列目シートのほうが横幅は大きい。
こうして6人乗り仕様にも、4キャプテン仕様にもできる。ただし、3列目はさすがに窮屈で、フロアが高いため体育座りのような格好となるのは仕方がないが、いざとなればこうした使い方もできるというのは心強い。
日本の、とくに首都圏の住宅事情では、せっかくアレンジができても、このシートの置く場所に困るという問題はあるものの、「出来る」ところに価値があると思う。シートを付けたままでも荷室をフラットにできるようになっているし、外せば相当な容積のラゲッジスペースを得ることもできるわけだ。
もちろん、全シートのための3点式シートベルトが設定される。ルームミラーの上には、乗員がシートベルトをちゃんと装着しているかどうかがわかるモニターも付く。
「プレミアム」というグレードは従来からあったが、2009年12月、7エアバッグ、オートエアコン、パノラミックガラスルーフなどの装備はそのままに、独立開閉リアハッチ(撮影車両は「グリフ」のため開閉可能)やクルーズコントロール、パフュームディフューザー、盗難防止アラーム、前席ランバーサポート、後席サンシェードなどの装備を簡素化することで低価格化を図った。
また、それなりに高価ではあるが、インテグラルレザー仕様も選べるところも、このクルマの特筆点だ。
巧みに居住スペースを確保
特別仕様車「V50 2.0e パワーシフトプラス」には、デュアルキセノンヘッドライト、本革巻ステアリングホイール、本革巻シフトノブ、フロントフォグランプ、アルミニウムセンタースタック、Ceryx16インチアルミホイールなど、ユーザーに人気の高いアイテムが標準装備されながらも、低価格を実現している。
カーナビについても、後付け感があるのは否めないが、従来よりもずいぶんと改良されている。V50は、非常に巧みなパッケージングの設計により、コンパクトなサイズの中で、巧く居住性を確保している。
とくに2列目の居住スペースは、今回の中ではV50がもっとも上だろう。
V70等のように大ぶりではないシートの着座感は意外と硬質で、それもV70等と異なる印象。後席は、座面が平らであるのに対し、背もたれをリクライニングさせており、頭上の狭さを感じさせないようにしている。
ラゲッジルームの寸法や、直線的なテールゲート開口部の面積も、今回の他2台よりは小さめではあるものの、実用上はまったく問題ない。
ラゲッジルームのフロアはやや高めだが、フロア下のスペアタイヤを廃しており、相当に大きな容量のスペースを得ている。常時積載しておきたいものを積むにはいいだろう。
テールゲート裏側は、ほかの2台は樹脂パネルだが、V50はフェルトが貼られているのも特徴。このほうがキズが付きにくく、ワゴンとして好ましいのではないかと思う。
総評
ベーシックなワゴンとしての使い勝手は、ゴルフヴァリアントもV50も十分に身につけている。そして、プジョー308SWのユニークな使い勝手は、これを求める人にとっては非常に魅力的となるはず。どのような使い方にも対応できるフレキシビリティは、このクラスでは、このクルマ以外にはない。ただし、このクラスでは、右ハンドル化によるドライビングポジションの違和感も気になるところだが、308SWは左足まわりの狭さとフットペダルが左に寄っている点が少々気になる。ゴルフヴァリアントはまずまず。もっとも違和感がないのはV50という印象だ。
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