ドイツ同門ホットハッチ 徹底比較(4/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:茂呂幸正
万能なホットハッチ
かつて名声を得たゴルフGTIが、ゴルフIII~IVにおいては非常に存在感が薄味だったところ、ゴルフVで完全復活を遂げ、実際、販売的にもかなりのウエイトを占めた。
先代もゴルフ全体の約3割がGTIだったというほどで、日本でのGTI人気はかなりのものだ。
ゴルフVIがベースとなり、価格はほとんど上がらず(先代は価格359万円)、隔世の感があるほど変わっているわけではないが、比べると、ゴルフVIのGTIは、さらに味が濃密になっているように思う。その印象こそ、こうしたクルマにとって「正常進化」だと思う。
それでいて、今回の3台の中では、もっとも「無難」なクルマだといえる。使い勝手に優れ、乗りやすく、その上でホットハッチとして期待される性能をも味わうことができるという、実に万能なクルマである。
Cセグ・ホットハッチの頂点
正直、かつては出費の大きさと、その対価として得られる満足感の比重を考えたときに、S3のようにハッチバックの高価な高級・高性能版というクルマを買う心理がよく理解できずにいた。それは、ゴルフGTI程度であればまだわかるのだが、S3レベルになると、ほかの選択肢が目に入ってくるからだ。
しかし、こうして触れると、上には上があるからいいのだと思えてくる。具体的には、535万円という価格は、ゴルフGTIより169万円も高く、アウディの中で考えると、A3スポーツバックの2.0TFSIクワトロに比べると72万円高く、先代まで存在したA3のV6モデルも500万円近い価格設定だった。
A3の上級モデルに対しては、作り分けもちゃんとなされているし、むしろこちらを選ぶほうが賢明ではないかと思えてくるほど。ゴルフGTIに対しても、さすがにそれなりに価格差は大きいが、それ相応のモノの差もあることも事実。
こうしたホットハッチの頂点に位置するクルマに違いなく、上を求める気持ちが強ければ、がんばってこちらを狙う価値は十分あると思う。
どのくらいスタイリングが好きか
シロッコは、ゴルフのスキンチェンジ版にとどまらず、ちゃんと差別化されている。こうしたスポーティなクルマとしては、使い勝手も悪くないほうだろう。
それでも使い勝手を優先するのであれば、ゴルフGTIのほうが上回るのは確実。だから、このスタイリングがとても気に入っているとか、シロッコが本当に好きというのであれば、こちらを選ぶ価値はある。そうでなければ、GTIを選んでおいたほうが無難だろう。つまるところ、どのくらいこのスタイリングが好きかというところにつきると思う。
ゴルフGTIに比べると、見かけ上の価格差はTSIで26万円、2.0TSIだと81万円となる。ただし、いずれもRN510カーナビが標準装備されるし、2.0TSIになると、レザーシートやDCCが標準装備されることを考えると、実質的な価格差は非常に小さいことになる。
シロッコの中で、TSIと2.0TSIのどちらを選ぶかという問題については、ドライブフィールについては、必ずしも2.0TSIが上とはいい切れず、好みによるといえる。むしろ、装備面でのアドバンテージを考慮した結果、2.0TSIに行き着くのではないかと思う。
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