トール/ソリオハイブリッド/フリードプラス ~スライドドアを備えた、いま人気の最新コンパクトミニバン3車を徹底比較~(2/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:小林岳夫
床が低めで乗降グリップも工夫され乗り降りがしやすい
背の高いコンパクトカーの中でも、特に設計の新しい車種がダイハツ トールだ。
トヨタにはルーミー&タンク、スバルにはジャスティとして供給され、4姉妹車を構成している。商品企画/開発/生産はダイハツが行うから、トールが中心的な存在だ。グレード構成は標準ボディと上級のカスタムに大別され、それぞれに直列3気筒1リッターのノーマル(自然吸気)エンジンと、ターボが用意される。
JC08モード燃費を前輪駆動の2WDで見ると、ノーマルエンジンが24.6km/Lと優れ、ターボも1.5リッター並みの動力性能を発揮しながら21.8km/Lになる。アイドリングストップは全車に標準装着した。
背の高いコンパクトカーとあって、フロントマスクは上下方向に厚みを持たせた。標準ボディはブラックのグリルがスポーティな印象で、カスタムはメッキを全面に使って存在感を強めている。
ボディサイズは全長が3,700mm(カスタムは3,725mm)、全幅は1,670mmとコンパクト。ウィンドウの下端を低めに抑えたから視界が良く、ボディの四隅も分かりやすい。最小回転半径は14インチタイヤ装着車が4.6m、15インチでも4.7mだから小回り性能も優れている。その一方で全高は1,735mmに達して、室内空間を広げた。
床は低く、後席側に装着されたスライドドア開口部の床面地上高は366mmに収まる。子供でも乗り降りがしやすく、スライドドア開口部の脇には乗降用グリップも装着した。グリップの太さは下側を細くしたから子供も握りやすい。手を横向きにして上からつかめる配慮も見られる。ファミリーカーに求められる細かな気配りが特徴だ。
空間効率の優れた背の高いボディに2種類のハイブリッドを搭載
ソリオの初代モデルは「ワゴンRソリオ」と呼ばれ、軽自動車のワゴンRをベースにするワイド版だった。現行となる4代目ソリオでは、軽量かつ高剛性の新開発プラットフォームを採用。室内空間を大幅に拡大しているほか、背の高いボディにも関わらず全グレードの車重が1トンを下まわっている。
ボディサイズにも特徴があり、全長は3,710mmだからトールとほぼ同じだが、全幅は1,625mmに抑えた。トールよりも45mm狭く、国産の小型車では最小の数値だ。軽自動車のユーザーが代替えすることも想定して、狭い裏道でスレ違いがしやすいように全幅を抑えた。
その一方で全高は1,745mmに達するから、小さなボディでも室内が広い。後席のドアはスライド式だ。
グレードは標準ボディとバンディットの2種類。標準ボディは大型メッキグリルを装着して、ヘッドランプはディスチャージかハロゲンを採用する。上質な印象に仕上げた。バンディットはブラックのグリルにLEDヘッドランプを組み合わせて、精悍でスポーティな雰囲気だ。
エンジンは直列4気筒1.2リッターのノーマルタイプ、マイルドハイブリッド、フルハイブリッドの3種類を用意した。この内、ノーマルタイプは価格が最も安い標準ボディのGのみで、バンディットには搭載されない。
マイルドハイブリッドは、モーター機能付き発電機のISGが減速時を中心とした発電、アイドリングストップ後の再始動、エンジン駆動の支援(連続最長30秒)を行う。ATは無段変速のCVTで、2WDのJC08モード燃費は27.8km/Lだ。フルハイブリッドは、ISGのほかに最高出力が13.6馬力の駆動用モーターも搭載して、エコモードではモーター駆動だけで走ることもある。5速AGS(オートギヤシフト)を採用して駆動方式は2WDのみ。JC08モード燃費は32km/Lとなる。
コンパクトミニバンをベースに2列シートで車内の広さを追求
フリードプラスは、コンパクトミニバンのフリードとボディの基本部分を共通化した2列シート車だ。
3列目のシートが装着されないために荷室が広い。しかも車椅子に座った状態で同乗者が車内に入れる福祉車両(車いす仕様車)をベースに開発したから、荷室の床を深く掘り込んだ。荷室の床面地上高は335mmで、自転車を積む時も前輪を大きく持ち上げる必要がない。トールの床面地上高は527mm、ソリオは665mmだから、フリードプラスは大幅に低い。
ボディはトールやソリオに比べると大柄で、全長は2WDが4,295mm(4WDは4,265mm)、全幅は1,695mm、全高は1,710mm(4WDは1,735mm)になる。トールに比べると595mm長く、25mm広く、25mm低い。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2,740mmだから、フリードプラスが250mm上まわる。ひとまわり大きなサイズだ。そのために最小回転半径も5.2m。トールの4.6m、ソリオの4.8mに比べると大回りになる。
またボディ後端のピラー(柱)はトールやソリオに比べて太く、サイドウインドーの下端も後ろに向けて持ち上げたから、後方視界はあまり良くない。車内の広さや積載性と取りまわし性は、トールやソリオとは異なる。
フリードプラスのエンジンは、直列4気筒1.5リッターのノーマルタイプとハイブリッドを設定した。2WDのJC08モード燃費は、ノーマルタイプが19km/L、ハイブリッドは27.2km/L(ハイブリッドEXは26.6km/L)になる。
デザイン・スペックの総評
今回取り上げた3車種は、すべて5ナンバーサイズに収まるコンパクトカーだが、全高を1,700mm以上に設定して広い室内を備える。運転がしやすく、居住性や積載性も優れている。特にトールとソリオは全長が3,700mm前後に収まり、最小回転半径も5m以下だ。
サイドウインドーの下端を低めに抑えたボディは、前後左右ともに視界が良く、狭い裏道や駐車場でも運転しやすい。
後席側のドアをスライド式にしたことも特徴になる。乗降時にドアパネルが外側に張り出さないから、狭い駐車場でも開閉しやすく、電動機能も装着できる。子供を抱えて荷物も持っているような時は、スイッチ操作だけで開閉できるから便利だ。スライドドアはミニバン、軽自動車、商用車では普及しているが、コンパクトカーでは今回取り上げた3車種とポルテ&スペイドしかない。
運転感覚から乗降性、荷室のアレンジや収納設備まで、さまざまな機能を使いやすく仕上げたことがこの3車種の特徴だ。2列シートのミニバンという見方もできる。
価格の安さも大切な魅力。トールであれば、実用装備を充実させて、緊急自動ブレーキを作動できるスマートアシストIIを備えたX・SAIIが152万8200円に収まる。ソリオのマイルドハイブリッドを搭載したMXは、デュアルカメラブレーキサポート装着車が175万5000円だ。
今はトヨタヴォクシー&ノア、日産セレナなどの2リッターエンジンを搭載したミニバンは、売れ筋グレードの価格帯が240~270万円に達する。200万円以下で機能が幅広く充実する背の高いコンパクトカーは、安全で便利に使えるファミリーカーの大切な選択肢になっている。
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