フラッグシップサルーン 徹底比較(4/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:茂呂幸正
日常と非日常性を併せ持つ
これまでもそうだったが、BMWの場合、たとえセダンのスタイルをしていて、それがFセグメントの7シリーズであろうと、基本はあくまでドライバーズカーである。現行7シリーズは、そのことをあらためて強く感じさせるクルマであった。
Sクラスが高級サルーンの定番だとしたら、7シリーズは、あるところまでは同じベクトル上にあり、あるところではまったく別の方向を向いているように思う。
7シリーズでしか得られないものは、高級セダンらしいくつろぎや快適性だけでなく、どこまでいっても「駆けぬける歓び」なのだろう。日常と非日常を併せ持ち、巧みに使い分けることができる高級サルーンである。
また、近年BMWが提唱している「Efficient Dynamics」においても、直噴エンジンにツインターボを組み合わせることで、少ない燃料の消費で、優れた動力性能を得ることに成功しているという。最新技術を惜しみなく投入した後発モデルの強みが随所に感じられる1台である。
高級サルーンを代表する存在
Sクラスは、やはり高級サルーンの王道をゆくクルマであって、触れるたびにそれを痛感させられ、このクルマしか達していない境地がある。走り、居住性、高級感と、すべてがそつない。高級サルーンに求められるあらゆる要素を、非常に高いレベルで持ち合わせている。これまで培ってきたものは大きく、このクルマが多くの富裕層に受け入れられ、支持されていることが、すべてを物語っていると思う。
V6のS350から、V12ツインターボまで、AMGを含めると、全5種類ものラインアップからパワーソースを選ぶことができる点も強みだ。
当初はいささかやりすぎかと感じたエクテリアデザインも、新しいSクラスのアイデンティティの体現として解釈できる。登場から3年が経過し、すでに本国で伝えられているとおり、まもなく日本仕様もマイナーチェンジを控えているが、そちらも楽しみだ。
充実装備のプライスバリュー
レクサスのブランドイメージが、BMWやメルセデス・ベンツと肩を並べるまでに成長してきた。セルシオに代えてレクサスブランドにLSのネーミングが与えられたことで、日本国内においても、イメージはグッと高まったように思う。
7シリーズやSクラスと比較しても、与えられる装備面では、むしろ勝る面が多々ありながらも、レクサスになってずいぶん価格が上昇した。とはいえ、この車格と質感を身に着けつつも、2台と比べると価格は大幅に安いという現実がある。
安全装備やテレマティックスについても、現時点で考えうる先進技術のすべてを入れている。それは、世界の高級車を相手にしても、LSのアドバンテージといえる。
また、AWD車も存在し、2WD車に対して、なんら制約を受けることなく選ぶことができるところも強みだろう。
惜しまれるのは、走り全般の煮詰めの甘さにある。基本素性は悪くないのだが、こうしてドイツの列強と比べるほどに露呈してしまう部分は確かになくはない。
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