国産V8サルーン 徹底比較(4/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:島村栄二
レクサスブランドに期待する人へ
まもなく発売されるLSの登場まで、国内レクサスブランドのトップモデルを務めることになったのがGSだ。というか、レクサスは主役不在で展開されてきたわけで、GSは選択肢のひとつであり、レクサスを代表するモデルではないだろう。
レクサスの中堅機種ではあるが、クルマとしては意外なほどシンプルである。それでいてレクサスブランドに期待されるプレミアム性をしっかり備えている。
価格についても、レクサスというと割高な印象を受けてしまうが、50万円相当のHDDナビが標準で備わり、ISとの価格差も意外と小さいことで、それほど高価ではない。プライスバリューはそこそこ高いといえるだろう。
ハイブリッドを除くと、この4.3L V8エンジンを搭載するGS430のほかに、3.5L V6エンジンを搭載するGS350もあるが、装備類の設定を見ると、レクサスの商品戦略としては、GS430を重視していることが見て取れる。GSの本命は、やはりGS430といえそうだ。
走りについては、トヨタブランドとの差別化のためか、やや無理をしているところが見受けられなくもない。それも徐々に洗練されていくことだろうし、現状でも大きな不満があるわけではないが、クラウンやマジェスタがマイナーチェンジして良くなったように、やがてGSもマイナーチェンジを受けて、さらによくなることに期待したい。
「走りの日産」を感じさせる味付け
日産ではフーガの上にシーマもラインアップしているが、シーマは残念ながら、その存在感が非常に希薄となってしまっている。このフーガが、現在の日産における事実上のフラッグシップモデルとなっている印象だ。
ちなみにフーガも販売的にはやや苦戦気味という。その要因は、メインユーザーとなる高年層が、アメリカナイズされたスタイルに違和感を覚えることもあるが、「フーガ」という名前になじみが薄いことも大きいと伝えられる。それらの多くはゼロ・クラウンに移ったというのだ。
フーガも、クルマとしての実力は相当に高いものがあるので、もっとこのよさが広く認識されるべきだと感じている。
フーガのラインアップは幅広い。GSでは前述のとおりだが、フーガの場合、V6がメインで、V8は特別な存在である。V6にも2.5Lと3.5Lがあり、やはり4.5Lの排気量を持つ450GTの存在は特別だ。実際にドライブしてみても、その違いはあまりにも明確に体感することができる。
3.5Lモデルに比べても、かなり開きのある価格設定となっているが、450GTの刺激的なドライブフィールに魅力を感じるのであれば、その差額を払う価値は十分にあるだろう。
高価とはいえ、今回の3台の中では、内容を考えると割安に感じられなくもない。日産の事実上のフラッグシップサルーンであるフーガの最上級モデルである450GTは、往年の「走りの日産」のイメージを感じさせ、その期待に応えるパフォーマンスを十分にり備えているのだ。
あくまで快適性を重視した純和風高級セダン
トヨタのトップに位置づけられたマジェスタは、ゼロ・クラウンでいうロイヤルシリーズのコンセプトを発展させたとでもいうべきモデルだ。世界的に見ても、これほど快適性の高いクルマは見当たらない。マイナーチェンジを経て、少し硬さの感じられた乗り心地も、ソフトライドを極めたものとなった。
ヨーロッパ各国の同クラスのモデルや、近年パフォーマンス向上の著しいアメリカ車を見ても、その多くはスタビリティを重視して足まわりを硬め、それと引き換えに快適性をダウンさせている。
そんな中、ここまで潔く快適性を重視して開発されたマジェスタは、世界的にも貴重な存在といえる。そして、この乗り味を熱望する潜在的なユーザーも、もっと多いのではないだろうか。
むろんデザインや走行性能において、日本専売モデルとして開発されたことで、マジェスタはここまで極めることができたのだろう。ユーザーターゲットはおのずと絞られるモデルであり、マジェスタはこれでいい、これがベストな姿だと思っている。
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