日本＆海外戦略ハッチバック 徹底比較(4/4)

高い目標設定にチャレンジしたことに評価

カローラとは別のモデルとして開発されたオーリスだが、登場時期が重なったこともあり、日本国内でそのイメージを定着させるのはけっこう難しいと思う。さらに、プラットフォームは別のものだが、パワートレインが同じなので、クルマの成り立ちの違いをよけいにわかりにくくしている面がある。

クルマとしては、カローラファミリーに対してどうかというよりもむしろ、ユーザーにとっては、大きくてクオリティの高いヴィッツという認識だと思う。そして、オーリスはこれまでセダンに乗っていた人が乗り換えても満足できるだけのものは備えていると思う。

カローラも大幅な質感の向上をはたしており、オーリスの優位性をわかりにくくしている部分はあるといえるが、はっきりいえるのは、走りについてはやはり別物というこだ。高いボディ剛性をベースに、しっかりとしたステアリングフィールと接地感をもたらす乗り味は、確かにこれまでの国産車にはなかったテイストである。細かいことをいい始めるといろいろ出てくるのだが、高い目標設定にチャレンジして、ある程度は達成できたという点は大いに評価したい。

サーキットでスポーツ走行とまではいかなくても、たとえ日常的に通る道でも、積極的に走りを楽しみたいという人にとって、オーリスはよき相棒となってくれるはずだ。

スポーティテイストを気軽に堪能できる

オーリスのガチンコのライバルとして多くのメディアでも取り上げているアクセラスポーツだが、まさにそのとおり。実はアクセラスポーツは、今回のオーリスのコンセプトをずっと早く先取りしたモデルだと思っている。

アクセラ＝マツダ3は海外で非常に高く評価されているのは事実だ。しかし、実のところ日本においては、アクセラスポーツを選ぶユーザー像が、パッと思い浮かびにくいというのも否めないだろう。スポーティ志向とかハッチバック好きであればわかるのだが、ユーティリティや価格で斬った場合に、あえてアクセラスポーツを選ぶとは？

そのヒントは、今回オーリスが登場したことで、見えやすくなるのではないかと思っている。日本では5ナンバー枠しばりが根強いが、わずかなプラスアルファで大きな付加価値が得られることが周知されると、同じくアクセラスポーツに対する販売面での評価も変わってくることだろう。 いずれにせよアクセラスポーツの実力は高く、ハイクオリティ感とともに気軽にスポーティテイストを堪能することができる数少ないモデルである。その意味では、価格に対するバリューの実に高いモデルである。

上にはさらに2.3Lモデルがあり、そちらはさらに輪をかけた動力性能が堪能できることもお忘れなきように。

価格×バリューの高さは国産車随一

現在の日産車で、「好調に売れている」と認識できるクルマというと、セレナとティーダだろう。マーチやノートよりもはるかにティーダが売れている。

ティーダの価格帯は、冷静に考えると、リッターカー・プラスアルファのヴィッツやマーチ、フィットなどとあまり大差ない。それでいて、見た目は明らかに高級に見えるし、乗っても走っても、その差は歴然としている。価格差のわりに違いは非常に大きいのだ。国産車全体で考えても価格×バリューの高さはトップレベルといえるだろう。

今回持ち込んだオーリスやアクセラスポーツと比べると、カテゴライズ的には同じ部類に属するものの、車格がわずかに下のイメージであり、明らかに見劣りするのではと予想していた。しかし、結果的には逆に、大いに見直すこととなった。

実用性にもっとも優れるし、直感として感じられる高級感は、むしろオーリスやアクセラスポーツをしのぐものすらあるのだ。反面、雰囲気にあまり若々しさが感じられないところは弱みといえそうだ。

よくできたクルマには違いないし、実際そこそこ売れている。しかし、どうやらいまひとつ知名度が低いようで、せっかくの持ち味が伝わりにくくなっているところも惜しまれる。このクルマのよさはもっと見直されてしかるべきではないか？さらにもっと売れてもおかしくないクルマだと思っている。