スポーティMクラスミニバン 徹底比較(3/4)
- 筆者:
- カメラマン:島村栄二
やはりパノラマオープンが武器
2007年5月のマイナーチェンジにより、インテリアでは、まずメーターおよびステアリングホイールの意匠変更、シート&ドアトリムの表皮変更などが行なわれた。また、一部グレードにパドルシフトが採用された。
装備面では、トヨタ得意のワイドビューフロントモニターをオプションで設定。ルームミラーとは別に後席確認ミラーを設置し、IR(赤外線)カット機能付ウインドシールドガラスとするなど、快適性と利便性を考慮した装備を採用。
また、2Lのプラタナには運転席側パワースライドドア+パワーバックドア&電気式ドアハンドル+プラズマクラスターなどを装備した“Uセレクション”を新設定。今回の取材車両が同グレードである。
アイシスというと、やはり助手席側のBピラーをドアに内蔵させ、ドアを開けた際の大開口を実現するパノラマオープンドアが最大の付加価値だ。これにより、アイシスはかつてない使い勝手を身につけている。ユーザーにとっても、最初は異様な感じもするかもしれないが、やはり購入検討時の際には、視覚的にも魅力を感じられるはずだ。
運転席から見た景色は、慣れれば気にならないのかもしれないが、他車からパッと乗り換えると、ミニバンのフロアに乗用車のインストが載っているかような印象がある。フロアが高く、ダッシュが低く、ハンドルがやや不自然な位置に付いていて、しかもテレスコピックが付かないところが難点だ。
インパネは、カローラとの類似性が感じられる乗用車なデザインを呈する。収納スペースはそれなりに豊富で、1列目から2列目のウォークスルーも、狭いができないことはない。プラタナには、ステアリングにパドルが付く。また今回のマイナーチェンジでステップワゴンのような室内確認用のミラーがルームミラーの上に設定された。
2列目は掘り下げたような感じのフロアとなっており、居住性についてもスペースにはかなり余裕がある。着座点は前席よりも高くなっており、さらに頭上空間にも余裕がある。
座面長も長く、背もたれも含めクッション厚もたっぷりとしており、オシリを低く落とし込める。こちらもアイシスが2列目を重視して設計されたことをうかがわせる部分である。 3列目は、さすがにシートアレンジの確保もあり、フロア下に燃料タンクなどを配するため、座面がかなり高く、シートは平板で水平となっている。背もたれも薄く、常用に適するものではない。
3列目へのウォークイン性はそれなりに配慮されており、子供であれば問題なさそうだ。折り畳めばフロアに格納でき、広いラゲッジスペースが出現する。全体的に非常に合理的に設計されている。
魅力をそのままに不満点を解消
マイナーチェンジにより、インテリアでは、シート形状の変更およびシート地変更、1列目よび2列目シートへの大型ヘッドレストの採用、シルバーの2連リングメーター(ハイウェイスターは専用ブルーメタリックリング)採用 、ドアトリムにクロスを採用するなどの変更を受けた。
さらに装備面では、瞬間燃費、平均燃費、航続可能距離等を表示する液晶オド・ツイントリップメーターを採用した。また、機能・操作性・基本性能を向上させたHDD方式の新開発のカーウイングスナビゲーションシステムがメーカーオプションにて設定された。
これらのように、従来聞かれた不満点を改善すべく、各部に手を加えられた。
ハイウェイスターは、ブラック基調のスポーティな空間となっている。また、見やすく上品なデザインの2連リングメーターの採用やヘッドレストのサイズアップなど変更が行なわれた。
インテリアは直線と円を組み合わせたユニークなデザインとなっている。後席専用のエアコン吹き出し口が設定されている。2列目、3列目のスペースもそこそこ広い。とくに3列目の居住性は、今回の3台の中ではもっとも優れる。多彩なシートアレンジや、収納スペースの充実ぶりも、実用ミニバンとして十分。
パノラミックルーフは、仕方がないことではあるが、スライドドアを成立させるため機構的にどうしても必要となる横方向の長さが制約を受けるところが惜しまれる。縦方向は十分に長く、前席では開口部がほぼ頭上から始まるためあまり恩恵を受けられないが、2~3列目の乗員にとっては、ここから見える景色を楽しみながらドライブできる。
非常用3列目シートを持つスポーツワゴン
低床プラットフォームにより、ワゴンのようなシルエットとなっているが、室内に身を移すと、ミニバンらしからぬデザインながら、ミニバンっぽいユーティリティを持つ空間が構築されている。
インパネのデザインは、シビックなど最近のホンダ車に通じる、スポーティでSFチックな雰囲気を演出したデザイン。ただ、乗用車的でもあり、エアコン吹き出し口が円と四角の両方を設定するなど、やや統一感に欠ける面も見受けられる。
前席はバケットタイプのスポーティなシートが備わる。見た目の印象よりも着座感はソフトでコンフォートであり、快適にドライブを楽しめる。
ゆったりとした大きなアームレストを持ち、センターコンソール部分には固定式の収納スペースが設定されており、利便性は高いが、反面1列目-2列目のウォークスルーはできない。
2列目シートのサイズもたっぷりとしており、1列目のようにややバケット形状となっている。ただし、前述のとおり乗り心地は少々気になる部分がある。3列目シートは、外見からイメージするよりもサイズが大きく、居住スペースもそこそこ確保されている。とはいえ、常用するのは非現実的だろう。ラゲッジスペースも、3列目シートを畳むことを前提に設計されているように思われる。
内装・装備の総評
ミニバンとしての使い勝手を追求するのであれば、アイシスとラフェスタのスペースユーティリティやシートアレンジ性は、このクラスとしては十分。ストリームは、ミニバンというよりもワゴン・プラスアルファである。それよりも、アイシスであればパノラマオープンドア、ラフェスタであればパノラミックルーフなど、それぞれの個性に目を向けるべき。オプションを含み装備類の設定については、アイシスが一歩リードした感あり。
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