ホンダ アコードハイブリッド・トヨタ SAI・マツダ アテンザを徹底比較 -環境性能と運転の楽しさを追求したセダン-(2/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:和田清志
エンジンとモーターの役割分担を明確にして優れた燃費性能を達成した
アコードは先代型と現行型ではまったく違うクルマになる。先代型は、海外ではホンダの上級ブランド「アキュラ」に属するTSXとして売られた。そのためにスポーティー指向が強く、リアシートは狭かったが、走行安定性と乗り心地のバランスを重視して開発された。エンジンは直列4気筒の2.4リッターながら、高回転域の吹き上がりが優れ、動力性能も高かった。
一方、現行アコードハイブリッドは、北米仕様のアコードとボディを共通化。空間効率の優れた実用セダンになった。北米仕様には2.4リッターや3.5リッターのノーマルエンジンも用意するが、日本仕様は2リッターのハイブリッドに限られる。なお、法人や官公庁を対象としたリース仕様として、充電機能を備えたアコードプラグインハイブリッドも用意されている。
ボディサイズは全長が4915mm、全幅が1850mmだからかなり大柄だ。トヨタ クラウンロイヤル&アスリートを上まわる。フロントマスクはホンダ新型フィットなどにも通じる鋭角的なデザイン。メッシュ状のフロントグリルを装着するなど、北米仕様に比べてスポーティーな雰囲気も漂う。
ハイブリッドシステムは、先の項目でも触れたように2000ccエンジンがベース。駆動を担当するのは、主に最高出力が124kW(169馬力)の駆動用モーターだ。エンジンの力で発電機を回し、その電気を使ってモーターを駆動する。
駆動をモーターに任せるので、エンジンは効率の良い回転をさせることが可能。そこで負荷が小さな走行状態では、エンジン回転を高効率な領域まで高め、余った電力を駆動用リチウムイオン電池に充電する働きもある。その結果、30km/LのJC08モード燃費を達成した。
外観は従来型のユーザーも分からないほど変更された
SAIはトヨタのハイブリッド専用セダン。2009年10月に登場したが、売れ行きは伸び悩んだ。その原因は主にボディスタイルだろう。
SAIはハイブリッド車とあって空気抵抗の低減をねらい、フロントウインドーを大きく寝かせた。フロントシートの開放感を考慮すると、フロントウインドーとピラー(柱)の付け根を前進させざるを得ない。その結果、ボンネットは短くなり、エスティマのようなミニバン風の「ワンモーションフォルム」に近づいた。セダンの定番とされるボンネットの長い「ロングノーズ」とは対称的な外観だ。
従来型のSAIでは、この個性的なセダンスタイルに大人しい雰囲気のフロントマスクを与えた。背景には「上質な商品は見栄えで奇をてらわない」という考え方があったが、大人しいフロントマスクと丸みのあるボディの相性が良いとはいえず、販売が低迷していた。
そこでSAIは2013年8月のマイナーチェンジでフロントマスクを大幅に変更。切れ長のLEDヘッドランプを全車に標準装着して、LEDを使った薄型クリアランスランプは、ほぼ車幅全域をカバーしている。テールランプもワイドなデザインで、外観は見違えるほど変わった。販売店では「従来型のSAIを使うお客様がマイナーチェンジ後の展示車を見て、これは何というクルマか、と尋ねられた」という話も聞いた。
ボディサイズは全長が4695mm、全幅は1770mmだから、少々ワイドだがミドルセダンの範囲に収まる。ただし全高は1485mmに達し、セダンの中では背が高い。
ハイブリッドシステムは、従来型と同じで直列4気筒の2.4リッターがベース。カムリやクラウンのハイブリッドが搭載する設計の新しい2.5リッターではない。それでもJC08モード燃費は、従来型の21km/Lから22.4km/Lに向上している。
中国市場の好みも反映させてセダンは低くて長い外観が特徴
アテンザは海外市場を重視して開発された。現行型は2012年11月に登場し、エンジンからプラットフォーム、サスペンションまで「スカイアクティブ」と呼ばれるマツダの新しい技術シリーズで統一している。
エンジンの選択肢も多彩で、直列4気筒の2リッターと2.5リッター、さらに2.2リッターのクリーンディーゼルターボを用意する。ボディはセダンとワゴンの2種類。今回はセダンのディーゼルを搭載するXDを取り上げる。
セダンのボディサイズは、全長が4860mm、全幅が1840mmだから、ピックアップした3車種の中ではアコードハイブリッドに次いで大きい。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も2830mmと長い。
アテンザで興味深いのは、セダンがワゴンよりも長いこと。全長で60mm、ホイールベースは80mm上まわる。セダンでは居住性が重視され、リアシートの足元空間を広げたこともあるが、中国市場の好みも考慮した。中国では低くて長いスマートなセダンが歓迎されるためだ。
フロントマスクはCX-5やアクセラにも共通するマツダ車らしいデザイン。ラジエターグリルが大きく、左右には切れ長のヘッドランプを配置した。サイドウインドーの下端は後ろに向けて大きく持ち上がり、後方視界の確保では不利だが、外観を躍動的に見せている。
試乗車のXDが搭載するディーゼルは、2.2リッターの排気量ながら、ターボの装着によって最高出力は175馬力(4500回転)、最大トルクは42.8kg-m(2000回転)に達する。最大トルクの数値は4000ccクラスのガソリンエンジン並み。高い駆動力をわずか2000回転で発揮させることが特徴だ。
デザイン・スペックの総評
すべて3ナンバーサイズのセダンだが、ボディはアコードハイブリッドが最も大柄で、アテンザ、SAIの順番になる。アコードハイブリッドとアテンザは、海外市場を視野に入れている。
エンジンにも特徴があり、アコードとSAIはハイブリッド、アテンザはクリーンディーゼルターボだ。走行性能は後述するが、感覚的な動力性能を競えば、ディーゼルのアテンザが1位、僅差でアコードハイブリッド、SAIという順番だ。
ならば燃料代はどうか。実用燃費をJC08モード数値の85%、レギュラーガソリンの価格を1リッター当たり160円、ディーゼルが使う軽油を140円として計算する。
1km当たりの走行単価は、最も安いアコードハイブリッドが6.3円、アテンザが8.2円、SAIは8.4円だ。アテンザの燃費数値は最も悪いが、軽油価格の違いから、走行単価はSAIよりも安い。1万kmを走ったとして、アコードハイブリッドが6万3000円、アテンザは8万2000円だから差額は1万9000円に収まる。優れた動力性能も考えると、ディーゼルは効率が高い。日本では「エコカーといえばハイブリッド」だが、海外にはディーゼル、さらに小排気量のガソリンターボなどいろいろなタイプがある。
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