スペーシア・N BOX・タントを徹底比較 -居住性が優れ、燃費性能も優秀な人気抜群のハイルーフ軽自動車-(2/4)

スペーシア・N BOX・タントを徹底比較 -居住性が優れ、燃費性能も優秀な人気抜群のハイルーフ軽自動車-
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基本的にはパレットのフルモデルチェンジ。広さを追求して燃費性能は30%向上させている

スペーシアは2013年2月に発売された新しい軽自動車だが、実質的にパレットの後継車種。広くて使いやすい室内、スライドドアの装着などを踏襲した上で、室内をさらに拡大している。ボディサイドは上に向けた絞り込みを抑え、「箱型」に近付けて天井部分の幅を60mm広げた。リアゲートも直立させ、天井の後端は40mm後方に寄せている。フロントウインドーも角度を少し立てた。

この工夫によって乗員の肩から頭部にかけての開放感が増し、外観でも車内の広さが明確に表現されている。

一方、全高はパレットと同じ1735mm(2WD)で、N BOXよりは45mm、タントよりは15mm背が低い。重心を抑えて走行安定性を確保し、空気抵抗の低減も図るためだ。

特に燃費性能はスペーシアの重要なテーマ。可愛らしいフロントマスクも空気抵抗の低減に配慮した結果だ。グリルの開口部を抑えて空気の流れを整えている。バンパーの形状にも工夫を凝らした。

さらに現行ワゴンRで実用化された減速時を中心に発電機を作動させる「エネチャージ」、時速13km以下で作動するアイドリングストップなども備わる。ボディからシートまで、さまざまな部分の造りを見直し、90kgに達する軽量化も図った。

その結果、JC08モード燃費は29km/L。前述のようにパレットのアイドリングストップ装着車に比べて30%も燃費数値が向上した。

不思議なのはワゴンRに比べると全高が95mm高く、車両重量も60kg重いのに、JC08モード燃費が0.2km/Lではあるが上まわること。エンジンのバルブを駆動するタイミングチェーンの幅を狭めるなど、低燃費技術をワゴンR以上に進化させ、背の高さと重量増加を補った。

ボンネットを短く抑えた背の高いボディは軽自動車サイズのミニバンという雰囲気

全高が1700mmを超える背の高い軽自動車で、最も販売台数の多い車種がN BOX。2012年度(12年4月から13年3月)までの販売累計では、軽自動車の1位になった。

高い人気を得た背景には、ボディスタイルもあるだろう。全高は1780mmに達し、前輪駆動をベースにした軽乗用車では最も背が高い。プラットフォームとエンジンは新開発。燃料タンクを前席の下に搭載して荷室の床を低く抑え、エンジンは補機類の配置を工夫してボンネットを短くした。フロントウインドーの位置を前進させ、角度も立てたので、箱型のボディに短いボンネットが突き出したような外観となる。

フロントマスクには厚みを持たせ、フロントグリルのデザインはステップワゴンにも似た雰囲気だ。

ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2520mmに達し、コンパクトカーのフィットを20mm上まわる。クルマの室内空間は前後輪の中央に位置するため、ホイールベースを伸ばせば居住性を向上させやすい。車内を広げる工夫を数多く盛り込み、その特徴を外観でも明確に表現した。

ボディの両側にはスライドドアを装着。中央のピラー(天井を支える柱)を少し前に寄せ、スライドドアの開口幅は640mmと広い。これに伴って前側のドアの開口部は少し狭まったが、乗降性に不満はない。

エンジンはライバル2車と同様、ノーマルタイプとターボを用意する。前者にはアイドリングストップが装着され、JC08モード燃費は24.2km/Lだ。背の高いボディと充実装備によって、車両重量は950kgに達し、スペーシアよりも100kg重い。そのために燃費性能はライバル2車に見劣りするが、車内の広さと軽自動車とは思えない外観のボリューム感は、冒頭で述べた人気車のサプライズに通じる。

助手席側にはスライドドア、運転席側は横開き式という変則的なボディを持つ実用指向を強めた軽自動車

全高が1700mmを超える軽乗用車の先駆けは、2003年に登場した初代タント。このモデルが人気を高め、2007年に登場した2代目の現行型は、渾身の開発を行った。注目されるのはドアの配置。右側は前後ともに横開き式で、左側は後部にスライドドアを備える。

このスライドドアには中央のピラーが埋め込まれ、前後の両方を開いた時の開口幅は1480mmと広い。助手席を後方に寄せれば、体を捩らずに乗り降りが可能。助手席を畳んで前に寄せれば、後席の乗降性が大幅に高まる。

ちなみにリア側のスライドドアだけを開いた時の開口幅は580mm。スペーシアと同じ数値で、N BOXと比べれば60mm下まわる。前後とも開いた時に価値が生じるわけだ。

なので実際の使用でどの程度のメリットが生じるかは使い方次第だが、前後ともに開いた時の開放感は目を見張る。人気を高めるサプライズの効果は大きい。

全高は1750mmだから、スペーシアより15mm高く、N BOXよりは30mm低い。ライバル2車と同様、フロントウインドーは角度を立てて前方に位置しており、車内は開放的だ。外観も車内の広さを表現している。

前後左右のピラーやドアも直立させ、ボックス状に仕上げた。カスタムのフロントマスクは鋭角的なデザインだが、標準ボディは柔和な印象。ただし、試乗車のGスペシャルは標準ボディにエアロパーツを装着して、カスタムと標準ボディの中間的な雰囲気を感じさせる。

エンジンは直列3気筒で、ノーマルタイプとターボを設定。ターボを含めてアイドリングストップを備え、ノーマルエンジンのJC08モード燃費は25km/L。車両重量は930kgだから、スペーシアよりは80kg重いが、N BOXに比べると20kg軽い。

3車種ともに全高が1700mmを超えるが、最も背が高いのはN BOXで、タント、スペーシアの順番になる。

N BOXはエンジンルームを短くして室内を広げるため、補機類の配置も工夫した。そのためにボンネットの位置は3車の中で最も高い。ボディに近い部分の死角も広がるので、インパネの左端と左側ドアミラーの背面に鏡を装着。この反射を利用して、左前輪付近の様子が分かるように工夫した。

一方、スペーシアはボンネットが最も低く、ボディの最先端に位置するピラーは細くデザインした。斜め前方を含めて、視界が優れている。

エンジンは全車がノーマルとターボを設定。スペーシア、タントはノーマル/ターボともにアイドリングストップが装着され、N BOXはノーマルのみにアイドリングストップが備わっている。ノーマルエンジンのJC08モード燃費は、スペーシアが29km/L、タントが25km/L、N BOXが24.2km/L。スペーシアは背が低めでボディが軽く、燃費性能も優れる。逆にN BOXは背が高いのでボディも重く、燃費性能は少し下がった。タントの全高/車両重量/燃費性能は、ライバル2車の中間に位置する。

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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