輸入車ミドルサイズSUV 徹底比較(2/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:茂呂幸正
モノコック化の恩恵を実感
5020mm×2000mm×1805mmというボディサイズは今回最大で、最低地上高は265mmと下記2モデルよりも高め。
シャシーは従来のラダーフレームを廃し、ユニボディと呼ぶ最新のモノコック構造を採用した点が大きな特徴。これにより大きなボディながら車重は2170kgと比較的軽く収まっている。
4WDシステムについても、FFベースのトルクオンデマンド式のインテリジェント4WDを新たに採用。
最高出力216kW[294ps]、最大トルク345Nm[35.2kgm]の3.5リッターV6エンジンを横置き搭載する。
エクステリアデザインも従来に比べ無骨さは薄れたものの、普遍性の中にエクスプローラーらしさを秘めたものとなった。乗るとボディの大きさと、とくに横幅をそれなりに実感するが、ステアリング切れ角が大きいので小回りは効くし、応答遅れも小さいので、走りの面であまり大きさや重さを過度に意識させられることはない。
乗り心地は快適そのもので、静粛性も高い。4輪がしなやかにストロークして路面を捉え、ハイペースでのコーナリングも可能。
モノコック化の恩恵か、ドライバビリティ面でも多くのメリットがもたらされている。安全装備では、ロール・スタビリティ・コントロール付きアドバンストラック(横滑り防止装置)に加えて、オーバースピードでコーナーに進入した際に、自動的にエンジン出力を絞り、各輪個別にブレーキをかけることでコースアウトを防ぐ「カーブコントロール」という装備が新たに加わった点も特徴だ。
悪路走破性についても、副変速機もデフロック機構も備えていなくとも、路面状況に合わせて4つのモードから選べる「テレインレスポンス」が強い味方となる。
乗用車的なドライブフィール
今回の中ではもっとも短く、車高も低い4800mm×1945mm×1740mmというボディサイズ。フロントノーズの形状や全体のフォルムは乗用車的で、VW車らしく控えめなデザインながら、LEDを多用したマスクはなかなか個性的。
最高出力206kW[280ps]、最大トルク360Nm[36.7kgm]を2900-4000rpmと広範囲で発生する3.6リッターV6直噴エンジンを搭載。車両重量2190kgのボディを不満なく走らせる。
10・15モード燃費は9.5km/Lと今回最良で、2011年秋にはアイドリングストップ機構が搭載された。
ほかに、300万円近く高価ながら、スーパーチャージャー付き3リッターV6直噴エンジンに電気モーターを組み合わせたハイブリッドも選べる。トランスミッションにはいずれも8速ATを搭載する。
SUVとしては車高があまり高くなく、重心が低めであることや、空力的にも各ウインドウの傾斜が比較的大きく、高速巡航を視野に入れたフォルムとなっているせいか、横風安定性も高い。
ドライブフィールは乗用車的で、ロールもあまり気にならず、ステアリングに対する応答遅れももっとも小さく、スムーズな走りを身に着けている。
4WDシステムは、より強力な「4XMOTION」と呼ぶデフロックやローレンジを備えるフルタイム4WDシステムを搭載(ハイブリッドはデフロックや副変速機のない「4MOTION」)。オンロードでは前後50:50が基本だが、路面状況によっては、前後駆動力を最大で0:100から100:0まで無段階に自動調整し配分する。
最低地上高は205mmだが、前後に配された4つの車高センサーにより状況に応じてベストな車高を維持するエアサスペンションもオプションで選ぶことができる(ハイブリッドに標準装備)。
本質はオフローダー
スクエアなフォルムと高級感のあるルックス、左右非対称のリアビューなどが特徴。2012年モデルでは、新デザインのアルミホイールを装備したほか、オプションとしてサテンブラック仕上げの「エクステンテッド・ルーフレール」などが新たに設定された。
ボディサイズは4850mm×1920mm×1890mmと車高がもっとも高く、アイポイントも高め。シャシーはモノコックをフレームに10箇所のラバーマウントで結合した「インテグレーテッドボディフレーム」を採用し、モノコックが得意とするオンロード向けの性能と、オフロードに適性が高いといわれるラダーフレームによりもたらされる優れた強度や耐久性といった両面の性能を併せ持っている。
上記2モデルに比べると重心は高いものの、そのハンデを感じさせないフットワークを身に着けている。
最高出力276kW[375ps]/6500rpm、最大トルク510Nm[52.0kgm]/3500rpmを発生する5リッターV8エンジンは極めてスムーズで、静粛性も高く、車両重量2580kgの重量級ボディをものともせず引っ張る。路面状況に応じて5モードを選べる「テレインレスポンス」搭載。
足まわりには、電子制御のクロスリンクエアサスペンションにより、乗降時に下げたり、オフロード走行時には上げたりといった車高調整を行なうことができる。さらに、電子制御バルブにより擬似的にリジッドアクスルと同様の効果を得ることでスタックの危険性を引き下げることに成功し、バンク走行時にはエアサスが自動的に調整して車体を水平に保つためバンク角40度まで走行可能という。
また、十分に確保された地上高と、ボディを貫通する穴を極力少なくして水の浸入を抑えたことなどにより、水深70cmまで走行可能となっている点も特徴だ。
デザイン・スペックの総評
3台とも大柄なボディサイズは、エクスプローラーが一際大きい。全体のフォルムは、乗用車的で横方向への広がりを感じさせるトゥアレグと、縦方向に伸びたディスカバリーに対し、エクスプローラーは従来が縦長だったところ、横長になった印象。
エンジンについては、エクスプローラーやトゥアレグにも先代までV8の設定があったが、それが廃止されたのは時代を反映してのことだろう。
燃費の公表値はあまり芳しくなく、10・15モード燃費で、エクスプローラーが7.6km/L、トゥアレグのV6が9.5km/L、ディスカバリーが6.0km/Lとなっており、使用燃料がエクスプローラーのみ唯一レギュラー仕様となる。
悪路走破性を高めるため、エンジンマネージメント、ギアボックス、サスペンション、トラクションコントロールなどを状況に応じて統合的に調整を図り駆動力を確保する電子デバイスは全車に装備される。
足まわりのサスペンション形式は、エクスプローラーは前ストラット、後マルチリンクで、タイヤサイズが245/60R18、トゥアレグは前後ダブルウィッシュボーンで同255/55R18、ディスカバリー4は前後ダブルウィッシュボーン、同255/55R19となっている。
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